1:20
ただいまから、外交安全保障に関する調査会を開会いたします。委員の異動についてご報告いたします。昨日までに、山田太郎君及び濱田聡君が委員を辞任され、その補欠として植野美子君及び斉藤健一郎君が遷任されました。
1:44
外交安全保障に関する調査を議題といたします。本日は、21世紀の戦争と平和と解決力、新国際秩序構築のうち、FMCT(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約)の交渉開始への取組と課題について、
2:09
3名の参考人からご意見をお伺いした後、質疑を行います。ご出席いただいております参考人は、
2:20
青山大学大学院法学研究科教授 秋山信政君、青山学院大学国際政治経済学部教授 安倍達也君及びピースボート共同代表 川崎昭良君でございます。この際、参考人の皆様に一言ご挨拶を申し上げます。
2:48
本日はご多忙のところご出席いただき誠にありがとうございます。皆様から忌憚のないご意見を受け止まりまして、今後の調査の参考に致したいと存じますので、よろしくお願いいたします。次に議事の進め方について申し上げます。
3:10
まず、秋山参考人、安倍参考人、川崎参考人の順にお一人、20分程度でご意見を述べいただき、その後午後4時頃までをめどに質疑を行いますので、ご協力よろしくお願いいたします。また、ご発言の際は挙手をしていただき、その都度会長の許可を得ることとなっておりますので、ご承知をおきください。なお、ご発言は着席のままで結構でございます。
3:40
それではまず、秋山参考人からお願いいたします。ただいまご紹介いただきました、一橋大学法学研究科の秋山と申します。本日はこのような機会をいただきまして誠にありがとうございます。
3:58
このFMCTは、総理もご尽力されているということと、あと、井上先生も軍大大使のときに大変にご尽力をされたということで、むしろ先生の前でお話をしなければいけないということで緊張しているところでございます。
4:18
本日、私がお話しさせていただきたいのは、このFMCT、あるいは、より広く核兵器用の核分裂性物質の規制に伴う様々な政治的な環境であるとか、あるいは、そのために日本が何をすべきなのか、この核分裂性物質の削減に向け何をすべきなのかということについてお話をさせていただきたいと思います。
4:43
お手元にレジュメと、それから私の原稿が配布されておりますので、そちらに沿ってお話をさせていただければと思います。まず、核兵器を保有する過程において、最も技術的に重大な課題は、核兵器用の核分裂性物質の獲得であります。もちろん、核物質を格納し、起爆させることが可能な断頭の設計や製造、さらには運搬手段であるミサイルの開発にも高い技術力を必要とすることは言うまでもありません。やはり、核兵器用の核分裂性物質の獲得というのが最大の鍵を握っていると言っても過言ではございません。それでは、この核兵器用の核分裂性物質の取得を、どこでどのように規制したらよいのでしょうか。
5:30
また、そのような規制が導入されることは、どのような意味を持つのでしょうか。核分裂性物質の獲得を禁止する政策を考える上では、いくつかの視点があると思います。第一に、核兵器なき世界を目指すという軍宿の視点です。兵器用の核分裂性物質の取得及び製造を規制することは、核兵器の拡散を防止するという観点から効果的な措置であると言えます。
5:56
また、核軍宿の観点から見れば、少なくとも現状から核兵器を増加させない、すなわち核軍宿のベースラインを確立するという意味で、また、核兵器が削減され、核軍宿に進展が見られた場合、軍宿の負荷逆性を担 保するという視点から有効な措置であると考えます。ただ、国際政治の現実を考えると、この視点だけでは十分とは言えません。
6:22
核兵器を削減していくことに、国際社会のコンセンサスが形成されるために、あるいはコンセンサスが形成されるまでに、どのような取り組みが核分裂性物質の管理において必要か、そしてリスクをどのように管理し削減していくのかを考えていく必要があります。核分裂性物質の獲得とおそれいに応じた規制の措置という様々なアプローチがございます。
6:47
特に核の場合には、これは究極の療養技術でありまして、民生用の物質と兵器用の物質というのを、技術的には厳格に区別して捉えることは不可能でありますので、様々な場合分けを、この2ポツのところでしてございますけれども、本日は時間の都合でここは省略させていただければと思います。ここを飛ばしまして、3ポツのFMCTの交渉における論点というところをお話をさせていただきます。
7:16
FMCTの交渉については、1993年の国連決議48/75において、適切な国際機関において、差別的でなく多国間で国際的かつ効果的に検証可能な兵器用核分裂性物質の削減を交渉するように勧告がなされ、
7:39
1995年にカナダのシャノン大使の下で合意された、いわゆるシャノンマンデートが交渉の在り方について大枠を規定し、多くの国がFMCT交渉の基本方針として位置づけてきました。FMCTの交渉において争点となっているのは、市として規制の対象の範囲、スコープ、それから禁止すべき物質を含め用語の定義、ディフィニッション、それから検証、ベリフィケーションの在り方です。
8:06
そして①のスコープについてはいくつかのポイントがあります。第一に、規制すべき対象は新たな製造に限るべきなのか、あるいは既存の貯蔵分、ストックパイルも含めるのかという点です。既存のストックパイルを含めることに対して、確保有告は積極的ではなく、FMCTの交渉を支持する確保有告でも、将来の生産の みを対象にすべきという意見が有力です。
8:31
しかし、ストックパイルを含めなければ核兵器の削減への明確な方向づけにはならないという議論もあります。他方で、既存のストックパイルを含め削減を方向づけることになれば、生産禁止だけではなく、民生用からの転用などについても、規制の範囲に含まれるべきでしょう。なお、日本政府は、核兵器の製造、使用、研究のための核分裂性物質の生産禁止、生産援助の禁止のほか、
8:59
生産施設の閉鎖や民生用への転換の禁止、閉鎖施設や民生転換された施設の軍事用に再転用することの禁止、余剰と指定された物質のストックを再び核兵器用に戻すことの禁止、非核兵器用の核分裂性物質の軍事転用の禁止、兵器用核分裂性物質の他国からの需要、あるいは他国への移転の禁止なども条約上の義務として想定されると指摘しています。
9:29
次に、条約で使用される用語の定義 についてですが、そもそも、兵器用核分裂性物質とはどのような核分裂性物質を指すのか、どう定義するのか、というのは、この条約のスコープの目的を大きく左右するものであります。核兵器に使用される核分裂性物質は、プルトニウム239、ウラン235、もしくは233が主体のもので、IAEAでは特殊核分裂性物質という用語が使用されています。
9:57
他方で、兵器級という言葉も使われていますが、ウェポングレードとなると、例えば、ウラン235の濃縮度は90%程度あった方が良いと言われておりますし、それからプルトニウム239も純の95%程度とされています。しかし、これよりも濃度が低いからといって、核兵器が製造できないわけではありません。広島に投下されたリトルボーイに使われたウラン235の濃縮度は80%程度と言われています。
10:26
また、現在、核開発の瀬戸際外交を展開しているイランは、濃縮度60%のウランの貯蔵量を増やしています。このレベルまで濃縮されれば、兵器級に濃縮されるまでそれほど遠くありません。ただし、そこから追加的な処理が必要となります。ですから、そのまま核兵器に使用できる直接利用物質と間接利用物質という分類の方法もあります。
10:53
いずれにしても、兵器用核分裂性物質を広く定義すればするほど実効性は上がりますが、今度は交渉で合意を得ること、そして条約の履行を担保する検証の手続きも複雑かつ広範になってしまいます。その他、生産施設を規制すると一言で言っても、核分裂性物質の製造過程は何段階にも分かれており、
11:18
しかもそれらの手順は、民生用核分裂性物質の製造とほぼ同一であり、どの施設を対象にすべきなのか、どのように対象施設を指定するのか、すなわち民生用と軍事用に区別し、その区別の実効性を担保するのかなどが課題になるでしょう。そして、その検証ですが、多くの国は検証付きの条約を支持しますが、何を検証すべきなのかという検証の範囲や検証の正確性と完全性のレベル、その担保についての議論が分かれそうです。さらに、核兵器国に対する検証については、IAEAに規定された保証措置と同様の問題が発生します。核兵器国あるいは核兵器保有国に対しては、ボランタリーオファー型の保証措置協定、ないしはインフサーク66タイプの保証措置協定が適用され、追加規定書においても非核兵器国と同様の内容の保証措置が適用されているわけではありません。
12:16
したがって、FMCTの目的をより高い信頼性をもって達成するためには、条約が発行し、これに加盟した核兵器国及び核兵器保有国に対して、非核兵器国並みの保証措置の実施が必須となりますが、果たしてこれらを核保有国が受け入れるのかという疑問があります。では、なぜこのFMCTの交渉が困難に直面しているのか。これまでFMCTの交渉に当たり考慮すべきテクニカルなイシューについてお話をしてきましたけれども、実際の交渉はどのような状況にあるのでしょうか。現実に見を向けると、ジュネーブ軍宿会議の様子を即分するに、交渉開始の見通しがなかなか立って いないというのが現状のようです。社能マンデートでは、軍宿会議にFMCT交渉のための特別委員会を設立することが含まれていますけれども、
13:11
CDは作業計画に合意することができておらず、機能が長い間停滞しております。こうした状況で、FMCTについても交渉に入れていない状態が続いております。CDで交渉の開始に合意することが困難であれば、国連などコンセンサスでの決定を必要としない他のフォーラムに交渉のアリーナを移すことを検討すべきというのは、いくつかの国が主張しているところで、日本政府もこの立場をとっています。
13:38
しかし、当然のことながら、交渉の進展を望まない国は、CDに特別委員会を設置すべきという社能マンデートを盾にして、このアイデアをブロックしております。FMCTの特別委員会が設置できない原因の一つは、パキスタンの反対にあります。CDでは、議題の設定から文書の採択に至るまで、基本的にコンセンサスによることが習慣となっております。
14:02
パキスタンは、核分裂性物質の生産が禁止されることになれば、現状の核の不均衡が固定化されることになるとの論理で反対をしております。インドとの競争において、核の不均衡が永続する可能性があるとの思惑からです。そして、パキスタンの姿勢の背後には、中国がいるとの声も聞かれます。中国もFMCTの交渉については消極的です。
14:27
また、我が国の安全保障という視点から、核軍種及び核分裂性物質の規制という問題を見た場合、北朝鮮と並び中国の姿勢というのは、極めて重要な要素となっております。中国は、NPT上認められた核兵器国N5の中で、唯一核戦力を増強しており、その核関連の活動は、最も透明性が低く、今後拡大していく可能性は高いと見ております。
14:55
米国の国防総省の見積もりでは、2030年までに1000発、2035年までに1500発程度の核弾頭を保有するとされています。この数字がどの程度 信頼できるものかについては、議論の余地はあります。ただし、中国は現在、CFR-600という形式の高速増殖炉2基の建設プロジェクトを進行させておりまして、
15:19
そのうちの1基は既に完成し、運転が開始されている兆候、建屋の廃棄塔から蒸気が噴出しているといった画像が確認されています。中国は、これらの高速増殖炉は民生用であるとしていますけれども、高速炉が2基とも完成し、フル稼働し、使用済み燃料が再処理されるようになって抽出されたプルトニウムが軍事転移をされると想定すると、
15:46
国防総省の見積もりは、計算が合うということになります。中国の民生用プルトニウムの保有量ですけれども、これは2016年の時点で40.9キロとされていましたが、高速増殖炉の建設が開始された2017年以降、民生用のプルトニウム管理についてIAEAに報告することをやめております。
16:08
IAEAにおけるプルトニウム管理に関する指針という文書、INFSAG549という 文書ですけれども、これは、民生用のプルトニウムを保有する9カ国が、その管理状況をIAEAに報告することを求めています。これは法的な義務はありませんけれども、透明性を担保し、信頼を醸成するために重要な措置であります。
16:30
しかし、中国がIAEAに対して報告をやめていることは、民生用プログラムの軍事典容が疑われても仕方がないという状況、証拠と言えるかもしれません。また、現在FMCTの交渉が開始されない中、中国を除くN5は、兵器用核分裂性物質の生産モラトリアムを宣言しておりますけれども、
16:51
中国は、モラトリアムの宣言は核軍縮に向けて実効性がないと主張しており、実際のところ、米露に対して一定程度までキャッチアップをするまでは、核戦力の規模や今後の核戦力増強の傾向を知られたくない、そして活動を縛られたくないということだと考えております。米露は、新スタートの条約の下で、軍備管理の取決めの中、配備される核弾頭数の上限を1550発と定めています。
17:18
所蔵されたものは、待機解体待ちの弾頭もあり、合わせると米国は約5400、ロシアは約6000発ほど保有しております。中国からすれば、核弾頭をひいては核分裂性物質を大量に保有する米露が、まず削減すべきであるということではないかと思われます。なお、北朝鮮に関しても、従来プルトニウムの製造に使用されてきた5MW級の固形原子束炉に比べ、その近くに新たに軽水路を建設し、最近運転を開始したとの報道もありました。軽水路の使用済み燃料は、再処理をしてプルトニウムを抽出することが可能ですから、北朝鮮でも核兵器用の核分裂性物質の製造能力が向上しているということが言えると思います。では、このような状況を踏まえ、日本としては、兵器用核分裂性物質の規制にどのように取り組んでいけばよいのかという点について、試験を述べさせていただきたいと思います。
18:09
まず、核兵器な規制化を目指す中で、核分裂性物質の生産を停止し、貯蔵量を削減することは必要なことですから、FMCTの推進はありにかなっていると思います。したがって、その交渉開始に向けて積極的に取り組む姿勢は、軍縮へのコミットメントを示すという観点から大いに意義がある と言います。ただし、姿勢を示すというパブリックディプロマシー的な要素だけでは不十分です。
18:34
もし、パキスタンが消極姿勢であり、また中国にも核分裂性物質生産を規制する意欲がないとすれば、当面FMCT交渉が開始され進展する可能性は低いと言わざるを得ませんが、その間に何をすべきかということを考えるべきであると思います。
18:52
まず、兵器用核分裂性物質の生産モラトリアムの普遍化、すなわち中国にもモラトリアムの制限に参加するよう、他の核兵器国のみならず、非同盟諸国などとも協調して働きかけをしていくためのキャンペーンを継続していくべきです。NPTの運用検討プロセスでは、中国はモラトリアムをNPTの合意文書に入れることに反対しています。多くの国は、ここが中国のレッドラインと理解し、合意形成のために妥協してまいりました。
19:21
ただし、NPT運用検討会議では、様々な案件において対立、あるいは分断が深まって、コンセンサスを得ることが次第に難しくなってきて います。こうした分断の深まりに隠れる形で、中国は核戦力の透明性の問題と並び、核分裂性物質の生産モラトリアムについても、焦点が当てられるのを避けることに成功してきました。
19:43
これに対しても、兵器用核分裂性物質の貯蔵量をこれ以上増やさないという国際規範の情勢のために、非同盟諸国、あるいは核兵器禁止条約締約国との対話を強化し、モラトリアムが国際規範として確立され、それを受け入れない国に対し、ピアプレッシャーを与えられるようにしていくべきではないかと思います。第2に、透明性の向上への取り組みです。
20:06
こちらもN5の中で最も透明性が低いとされている中国がターゲットになってしまう感じもありますけれども、核弾頭、運搬手段の保有量、兵器用核分裂性物質の貯蔵量、核ドクトリンなどについて、国際社会に対して核保有国が積極的に情報を開示するよう求めていく必要があります。
20:25
日本はNPDIを通じてこのテーマに取り組んでいると理解しておりますけれども、核兵器使用の懸念が高まり、また核軍核の再来が懸念される中で、信頼情勢措置として、あるいは核軍縮のベースラインを確立する取り組みとして、透明性の確保は一層重要になってきていると思います。第3に、核兵器国の責任ある行動のあり方についての議論を高めていくのも一案だと思います。
20:53
核兵器国が国際の平和と安全に対して持つ特殊な責任に対して、可視化された形でその責任を果たすことを明確に示すことを求めるということです。
21:03
例えば、核兵器や核分裂性物質を安全に管理していることを、あるいは国際社会に見える形で証明することや、あるいは核ドクトリンが国際人道法に照らして整合的かどうかを説明する責任、あるいはもし核兵器が使用された場合の環境破壊、人的社会的な二次被害などに対する責任などについて議論を深めていくことです。
21:26
最後に、中国との対話です。安全保障の論理では、関係国のどちらか一方が何かを主張し、あるいは行動することでは安定した関係を望むことは困難です。日本がどんなに一方的に主張しても、それが中国の受け入れるところとならなければ意味がありません。
21:42
中国には中国の懸念があります。我々はそれに共感する必要はありませんが、理解し、お互いにとって何が懸念か、そしてそれを相互に解消していくためには、何をすべきかについて率直に議論する戦略対話が必要であると思います。対立を抱えていても、対話を通じてリスク管理を行い、脅威削減を行っていくことは万が一に備えることと並行して進めていくべきだと思います。
22:07
これについて、私は今後、日本の国際会議を開催することについて、国際関係の関連について、日本の国際関係としての関係を考えていきたいと考えております。
22:19
では次に安倍参考人にお願いいたします。ご出席の皆様、こんにちは。ただいまご紹介に預かりました青山学院大学国際政治経済学部の安倍達也と申します。本日はこのような場で意見を述べさせていただく機会をいただき、今ことにありがとうございます。早速、レジュメに沿って進めさせて いただきます。
22:47
スライド2枚目に目次を入れました。始めにあたる次のスライドでは、まず問題の主題を明らかにします。続く本論は2つに分けて、前半でFMCT構想の意義について、後半ではFMCT構想の課題について、それぞれ議論していきます。最後の30枚目のスライドでは、地道な努力が必要なことを強調して終わりに変えることといたしたいと思います。
23:14
スライド3枚目。FMCTに関する問題は、端的には条約の早期締結の必要性が国際社会において広く共有されているものの、依然として交渉さえ開始されていないという点に尽きると思います。交渉の開始を妨げている要因は何か。その要因を克服するためにどのような取り組みが考えられるのか。
23:38
短期的に克服できない場合にはどのような代替的措置が考えられるのか。これらの論点を念頭におきまして本論に入りたいと思います。スライド4枚目。FMCTは平たく申しますと、核兵器の原料となる物質の生産を禁止する 条約です。核廃絶に向けた次の論理的なステップという表現が、FMCT構想の意義をよく表していると思います。
24:05
核兵器を作るためには原料が必要ですので、その原料の生産を止めて核兵器の増加を断ち切ろうという発想です。このステップが実現すれば、さらに核兵器を減らしていくという道筋が見えてくるでしょう。現時点で核兵器を保有しているか、または保有していると考えられている国は、このスライドの下に示した9カ国でございます。これらがFMCTの直接利害関係国ということになります。
24:35
スライド5枚目。FMCTは核廃絶に向けた様々な措置の中でも、条約という法的拘束力のある措置と位置づけられます。特に核軍核の制限という文脈では、質的な制限を目的とする包括的核実験禁止条約との対比において、量的な制限を目的とするものと捉えることができます。スライド6枚目。
25:04
FMCTの目的が核兵器の量的増加を止めるという点については、各国の間で認識が共有されているものと思います。しかしながら、それでは条約が何をどこまで規制するのかという問題については、従来から2つの立場は対立してきました。そしてこの対立が交渉の開始を阻む大きな要因の1つとなっています。
25:30
端的に申しますと、左側のように条約の対象を生産の禁止だけでなく、これまでに核兵器用に生産された在庫、ストックの規制も含めるという抗議論と、右側のように条約の対象を生産の禁止のみに限定する協議論の2つの立場があります。この2つの立場は、1950年代から主張されてきたもので、時代によって主張する国は変わってきました。
25:59
スライド7枚目。1950年代の核兵器用核分裂性物質の規制に関する議論の中で、抗議論を展開していたのは西側諸国でした。この主張は国連総会決議に反映されたのですが、東側諸国からは反対票が投じられました。スライド8枚目。1960年代前半に米、荘両国は協議論 の立場で足並みを揃えます。
26:26
他方で日本は、当時のジュネーブの交渉枠組みである18カ国軍宿委員会の場で、抗議論の立場を取っています。そして1978年に開催された国連軍宿特別総会が最終文書の中で言及したのは協議論でした。最終文書はコンセンサスで採択されていますので、3カ国の受入れ可能な最低ラインが協議論だったということになると思います。スライド9枚目。
26:54
FMCTの今日的な議論は、1993年9月のクリントン大統領国連総会演説を起源としています。FMCTの交渉開始を提案するもので、3カ月後の国連総会決議につながり、当該決議はジュネーブの交渉枠組みである軍宿会議に対して交渉開始を勧告しました。
27:16
ここで留意すべきは、クリントン大統領提案も国連総会決議も、生産の禁止のみに言及していたということです。議論の場はジュネーブの軍宿会議に移ります。当時のシャノン・ カナダ大使が特別調査官として調整にあたり、1995年3月にまとめられたのがシャノン報告書です。
27:42
この報告書では、条約交渉のために新たに設置される特別委員会のマンデートとして生産の禁止に言及し、さらにいかなる問題を提起することも排除しないことに合意したという補足の一文が加わりました。
27:58
議論の対象は、マンデートそれ自体に着目すれば生産の禁止に限定されるのですが、補足の一文を含む報告書全体から見れば、生産の禁止に限定されないという解釈が成り立ちます。このいわゆるシャノンマンデート、またはシャノン報告書は、その後の多数国間の場で引用され、ある種の駆け引きが展開されることになります。
28:24
具体例を示したのがスライド10枚目と11枚目でございますが、時間の関係で省略させていただきます。スライド12枚目。ここまで、抗議論と協議論が1950年代から存在している考え方であることを確認し、1993年以降の抗日的な議論においても、この2つの立場が引き続き存在していることを明らかにしてきました。
28:50
現在は核兵器を保有する国の中で、パキスタン一家国が孤立を恐れることなく、強硬に抗議論を唱え、これを中東圏、イスラム圏、中南米諸国が支持する一方で、パキスタン以外の核兵器保有国が、協議論に執着しているという対立の構造になっています。スライド13枚目。
29:14
ここから本論の後半として、FMCT構想の課題について考察していきたいと思います。すでに言及のとおり、FMCTの実質的な対象国は9カ国です。FMCTによって生産が禁止されることになるであろう、鋼の宿卵とプルトニウムの各国の推定保有量を表にまとめてみました。
29:37
NPTで核兵器の保有が認められた核兵器国5カ国は、すべて自発的な生産停止、いわゆる生産モルトリウムの状況にあるとみられています。特に、B、ロ、A、フ、ツの4カ国は、自ら生産モルトリウムを宣言しています。これに対して、それ以外の4カ国は、生産 モルトリウムとは無縁です。
30:04
FMCTでは、理想的には、これら9カ国すべての合意をやって成立させたいところです。スライド14枚目。それでは、核群粛不拡散をめぐる現状は、そのような合意を可能なものとするのでしょうか。ターニングポイントを1995年のNPT無期限延長決定におき、冷戦終結後の核群粛不拡散について、簡単に振り返ってみたいと思います。スライド15枚目。
30:34
客観的に見れば、1990年代前半は、群粛全般について様々な肯定的な進展がありました。冷戦終結直後だったからこそ、政治的に可能だったという側面は否定できません。他方で、法的にはNPTの延長問題が大きく影響していたと考えます。
30:57
1995年のNPT延長運用検討会議において、無期限延長を確保するために、様々な措置が繰り出される状況だったのです。1993年に国連総会でFMCTの交渉開始が勧 告されたことは、この文脈において理解されるべきと思われます。スライド16枚目。
31:22
1995年以降、核軍縮伏拡散は若干の進展を見られつつも、全体的に見れば安定したし、さらに近年ではむしろ後退しているという状況です。多数国間条約であれ、米露の二国間条約であれ、様々な条約が機能不全を起こしており、FMCTを含む新たな条約の作成はより困難になっています。
31:47
ご承知のとおり、NPT運用検討会議は2010年を最後に2回続けて最終文書を採択できず、包括的核実験禁止条約の発行は全く見通せていません。中距離核戦力全廃条約は執行し、新スタート条約は運用停止に陥っています。
32:06
スライド17枚目は、核軍縮交渉を義務づける条文を持つNPTに拘束されていてもいなくても核兵器保有量が増えている状況の表示を示すデータです。スライド18枚目は、具体的な上限を設定した米露二国間条約が運用停止に追い込まれると、核兵器の現状が一気に不透明になってしまう ことを示すグラフです。
32:33
このように現状は、少なくとも政治的に見れば新しい条約の作成という雰囲気ではなく、また1990年代前半のように核軍縮不格差の進展を促す法的な要因も存在していないのです。スライド19枚目。ここからは法的な文脈に焦点を当てて、FMCT構想に内在する課題を挙げてみたいと思います。
32:59
FMCTは法的拘束のある条約です。それゆえ、条約法という条約に関するルールを記述する国際法の分野の一般的な、または特別な規則が適用されることになります。条約とは、特に多数国間条約とは、多数国間の交渉によって成立し、発行要件を満たして初めて効力を発生し、拘束されることに同意した国のみを拘束するものです。
33:27
その意味では、交渉の段階で何を優先させるのかが重要になると考えます。スライド20枚目。FMCTの交渉開始を妨げている要因として必ず指摘されるのが、ジュネイブの交渉枠組みである軍縮 会議におけるパキスタンの反対です。
33:47
パキスタンは、FMCTが核分裂性物質の在庫量の不均衡を固定化させるものであるとして、軍縮会議での交渉開始に反対してきました。孤立を全く恐れないその姿勢は従来から一貫しています。パキスタンの戦略が成功している背景には、交渉の場を軍縮会議とすることに幅広い支持があることと、軍縮会議の意思決定が手続事項を含めてコンセンサスにより行われることが挙げられます。一般論として、コンセンサスで条約が成立すれば、多数の参加が得られて条約の普遍性が高まると思います。もっとも事実上、どの国も拒否権を持つことになりますので、成立に至るまでに時間がかかるでしょう。これに対して、多数決による意思決定を求める場合は、成立は相対的に容易になりますが、条約の普遍性を得るのは難しくなります。
34:44
これまで成立した軍縮に関係する条約を分類すると、スライドのようになります。現状を打開する案があるとすれば、それは軍縮会議の手続規則を変更するか、交渉の場を軍縮会議以外に移すかのどちらかです。どちらも得るものと失うものがありますので、判断は非常に難しいものとなるでしょう。
35:09
スライド21枚目。実際に条約の交渉が開始された場合、既に取り上げた規制の対象にとどまらず、義務や検証制度など様々な論点について合意に至る必要があります。
35:26
実際には、軍縮会議に提出された各国の作業文書、条約案、軍縮会議の非公式な会合における意見交換、2010年代に取りまとめられた政府専門家グループとハイレベル専門家準備グループの報告書などを通じて、FMCTに盛り込むべき要素はほぼ出し尽くされているという状況でもあります。
35:52
スライド22枚目は、条約の発行要件が厳しすぎると、条約それ自体が発行しない可能性のあることを示したものです。時間の関係で詳細は割愛させていただきます。スライド23枚目は、条約が成立したとしても、条約への参加は必ずしも保証されないことを示したものです。
36:14
スライド24枚目は、以上のようにFMCTには、FMCTが条約であることに題材する様々な課題があることをお分かりいただけたかと思います。これらの課題を克服することは容易なことではありません。それでもやはり、条約方式を追求する必要は認められると考えます。
36:37
その理由として、第一に、無差別、多数国間、国際的実行的に検証可能な条約という、社能マンデートに明示されたコンセプトが広く受け入れられているということ。第二に、条約が法的拘束力を持つことの意味が各国の間でよく理解されているということ。第三に、複雑な対立点は、交渉を通じて解決されていくものだということを挙げたいと思います。したがいまして、あくまでも条約方式を追求するのであれば、条約に石本国の懸念を解消させるための努力が重要になると考えます。スライド25枚目。残念ながら、現状においては、少なくとも短期的には、条約方式の追求は難しいと言わざるを得ません。
37:33
このような状況にあっては、暫定的に、代替的なアプローチとして、非拘束的な措置に活動を見出すべきではないでしょうか。スライド26枚目。非拘束的な措置は、その柔軟性に大きな特徴があります。法的義務を課すものではございませんので、核兵器を保有している国に受け入れられやすいだろうという希望的観測が働きます。
38:02
実際にNPT運用検討会議や国連総会決議によって、履行の求められている措置は、すべて非拘束的措置です。措置の履行を通じた、国家間の信頼情勢の向上や、条約に後ろ向きな国の懸念の解消が期待されます。スライド27枚目。
38:23
具体的には、核兵器用核分裂性物質の生産モノトリウムに関して、既に宣言している国にはその継続を求め、まだ宣言していない国には宣言を求めます。また、核兵器用核分裂性物質の生産施設の廃棄や転換を奨励します。さらに、核兵器用核分裂性物質の在庫に関する情報提供を要請します。
38:51
これらの措置は、NPT運用検討会議の最終文書と国連総会決議のいずれか、または両方で既に設定されているものです。スライド28枚目。問題は、これらの措置の履行を監視するメカニズムが精度化されていないことです。このようなメカニズムが導入されれば、さっきのスライドに挙げたような措置の意義は、より高まることでしょう。スライド29枚目。非拘束的措置の留意点として、2点を挙げておきたいと思います。1点目は、拘束力がないので、履行に対する動機づけを欠くことです。特に、措置の導入に反対した国からは、完全に無視される可能性があります。
39:42
例えば、中国は従来からモルトリウム宣言に否定的で、NPT運用検討会議では、最終文書にこの要素を含める提案に常に反対してきました。最も非拘束的措置は、そもそもそういうものだと思います。むしろ、未履行の状況が公になることで、履行していない国に政治的な圧力が かかる、そのことに異議を生み出すべきではないでしょうか。
40:12
2つ目は、措置の暫定的な性格が高級化する可能性のあることです。条約が成立しないのであれば、それもやむを得ません。それでも、措置が履行され、核兵器用核分裂性物質の生産が停止されている限り、条約に拘束されている場合と同じような状況が出現することになりますので、ここに肯定的な要素を見出すべきと考えます。
40:41
最後のスライド30枚目です。最後のスライドでは、地道な努力が必要なことを強調して、終わりに変えたいと思います。FMCTは条約です。条約方式には大きな異議が見取られますが、同時に乗り越えなければならないハードルが多いことも事実です。
41:04
あくまでも条約の成立を目標に掲げるのであれば、交渉のための環境づくりを粘り強く進めていく必要があります。これに関連して、軍縮会議における交渉を 追求し続けて、何の成果も得られなかった、何の進展もなかった空白の30年、これをどのように捉えるべきか。
41:27
交渉の別の場を選ぶ政治的な決断に踏み出すべきなのか。これはFMCTの内容を大きく左右し得る論点であるだけに、非常に難しい判断が迫られることになるかと思います。
41:42
このような状況の中で、少しでも何らかの進展を見出そうとすれば、暫定的な代替アプローチを真剣に模索すべきであり、既にその段階を迎えているのではないかと考えるところでございます。以上で意見の陳述を終わらせていただきます。御清聴誠にありがとうございました。
42:06
ありがとうございました。では次に川崎参考人にお願いいたします。川崎参考人。
42:14
井野口会長、委員の皆様、本日このような機会をいただきましてありがとうございます。私も資料を用意してまいりましたので、この閉じてある資料に沿ってお 話をしていきたいというふうに思います。
42:29
さっきの秋山安部亮参考人のお話と重なるところもたくさんありますけれども、ご容赦いただければというふうに思います。私は核兵器廃絶国際キャンペーン「アイキャン」に集う世界中の仲間たちと、また広島や長崎の被爆者の皆さんと協力をしながら、核兵器廃絶のための活動を続けてまいりました。
42:53
2017年7月に、核兵器を非人道兵器と断じ、その開発、保有、使用を全面的に禁止する核兵器禁止条約が採択されました。同条約が2021年1月に発行してから3年がたち、定約国または署名国として加わっている国の数の総数は97カ国に上っております。
43:20
しかしこちら表1、世界の核弾頭数にありますように、いまだに世界では9カ国が合計12,000発以上の核兵器を保有しており、冷戦終結以降、核兵器の総数自体は減少し続けてきましたけれども、近年、現役の核弾頭数はむしろ増加の傾向を見せております。
43:46
提案されているFMCTは、核兵器の材料物質の生産を禁止し、核軍核を止めるということがその最大の意義であります。FMCTをめぐる課題について、私自身がその成立に関わってきた核兵器禁止条約との関係に触れながら、意見を述べてまいりたいと思います。まず、FMCTとは何のための条約かということであります。めくって表2をご覧いただきたいと思いますけれども、
44:14
FMCTは核兵器を規制禁止する様々な国際的な取り組みの中の1つに位置づけられます。今日、全世界的な規範を作るための多国間条約としては、NPT(核兵器不拡散条約)、CTBT(包括的核実験禁止条約)、そしてTPNWとも称される核兵器禁止条約が存在します。
44:38
このうち、NPTは新たな核保有国の出現を防ぐ核不拡散については厳しく規定しておりますけれども、核保有国による核軍縮については、一般的な甘い規定にとどまっております。そこで、NPTが1995年に無期限 延長される際に、具体的な核軍縮措置として核実験を禁止するCTBTと、
45:03
核兵器の材料物質の生産を禁止するFMCTの2つが優先課題として合意をされました。そのうち、CTBTはジュネーブ軍縮会議で交渉され、1996年に採択されました。一方のFMCTは、未だ交渉開始に至っておらず、その見通しも立っておりません。その一方で、核兵器禁止条約は、1997年にNGOによるモデル案が示され、
45:32
2010年以降、機運が高まり、2017年に交渉の上採択され、今日では世界の約半数の国が参加するに至っています。表参をご覧いただきたいと思いますけれども、これらの多国間条約の基本的な対比をここで示しております。めぐっていただきまして、FMCTが規制しようとしておりますのは、
45:59
核兵器の材料物質、すなわち、コーノスクランとプルトニウムであります。これらの核分裂性物質を核 兵器目的で生産することを禁止しようというものであります。1995年にジュネーブ軍縮会議で、差別的でなく、多国間の検証可能なFMCTを交渉するという基本的な構想が示されました。
46:23
これに対して、これら核分裂性物質の将来の生産のみを禁止するのか、それとも既存の核分裂性物質も規制の対象に含めるのかという論争が続いてきました。将来の生産だけ禁止し、既存の物質を対象にしなければ、当然、これまで多くの核分裂性物質を生産し、貯蔵してきた核保有国に有利に働くことになります。
46:49
こうしたことから、南アフリカなど非同盟諸国を中心に多くの国が既存の貯蔵分も対象に含めることが、核軍縮にとっては不可欠であると主張しています。実はCTBTにも同じように、先に核保有国となった国と、更新の核保有国の核差という問題があります。
47:11
同時、米国のように既に多くの核実験を行った国が、他の国々が新たに核実験を行うことを止めるという性格があるわけです。つまりCTBTやFMCTは核軍縮のための措置と言われますが、同時に新たな核保有国の出現の防止という核不拡散の側面や、更新の核保有国の活動を制限するという垂直拡散の防止という側面があるのです。
47:40
日本政府は、なざしこそをしないものの、中国の核軍核を封じるという観点を中心において、FMCTを促進しているように見えます。広島アクションプランにおいても、昨年のG7広島サミットにおいても、中国を念頭に核戦力の透明性の必要性を強調し、その文脈の中でFMCTの交渉開始を呼びかけています。
48:06
しかし、NPTが世界を5つの核兵器国とそれ以外の国に分けたように、FMCTが新たな差別構造を持ち込むような形で作られるならば、それは国際的な幅広い支持を得られません。ジュネーブ軍縮会議においては、パキスタンが既存の貯蔵分を含めないFMCTは差別的だと主張して、ほぼ1カ国のみで議論をブロックし続けてきました。
48:35
そのパキスタンは核保有国であり、年々核兵器を増産し続けています。皮肉なことに、不平等なFMCTには反対だというパキスタンの主張は、その不平等を埋めんとばかりの同国の核軍核を許す結果につながってきたのです。中国も、最大の核保有国である米ロがまず核軍縮をして始めて、他の核保有国も核軍縮プロセスに参加できるようになると主張しています。中国の核軍備増強は懸念されるところでありますけれども、それでも総数においては米ロとは一桁異なります。米ロにおける核軍縮の停滞は、結果的に中国の核軍核を許すことにもつながっています。
49:22
したがって、FMCTを目指すのであれば、それが核保有国間の核差を固定するためではなく、核不拡散のためだけでもなく、あくまでその目的が核兵器のない世界を目指した核軍縮にあるということを明確にしなければなりません。そして全ての国に対して、普遍的に規制をかけるものにしなければなりません。さもなくば信頼を得られず、結局実効性も持ち得ないでしょう。
49:51
さて次に核兵器禁止条約とFMCTの関係についてです。2017年の核兵器禁止条約によって、核兵器の開発や生産は全面的に禁止されました。核兵器の材料物質の生産は同条約の下で既に禁止されているというふうに解釈することができます。
50:14
そうしながら、核兵器禁止条約の定約国は、FMCTに入るまでもなく、核兵器の材料物質の生産を禁止されているということになります。それゆえ日本はまずもって核兵器禁止条約に加わり、他国に対してもそのことを促せばよいと考えられますけれども、政府はそのようにはしておりません。このことの妥当性については、国会議員の皆様にはよく考えて審議をしていただきたいと思います。
50:41
しかしそれはさておき、核兵器禁止条約が既に存在する上で、さらにFMCTを作るとしたらどのような意義があるかということについて考えたいと思います。一つは核分裂性物質に焦点を当てて、技術的な検証を含む、精緻な禁止と規制を行うというところに意義があります。もう一つは核保有国が加わる可能性があるということです。
51:08
核兵器禁 止条約には現在、核保有国は一カ国も加わっておらず、近い将来加わる見通しも残念ながらありません。これに対して新たにFMCTを作り、そこに核保有国が一定程度加わる見通しが立つのであれば、それには意義があると言えるでしょう。ここで核分裂性物質の禁止や規制のあり方について考えたいと思います。
51:36
FMCTについて、将来の生産禁止だけではなく既存の貯蔵分も規制対象に含めるかという論点があるということは、先の参考人の皆様、また私も述べたとおりであります。
51:52
真に核軍縮に資するFMCTにするためには、核保有国が既存の貯蔵分を核兵器の維持や近代化に使うことに対しても規制をかけることが必要であります。それに加えて、明示的に核兵器目的とされていなかったとしても、核兵器に利用可能な物質であるならば、規制対象にすべきではないかという論点があります。
52:21
例えば、今日、中国が民生用として開発をしている再処理施設等が核兵器目的に使われる可能性が指摘をされてい ます。こうした懸念を背景に、G7サミットでの核軍縮広島ビジョンには、民生用プログラムを装った軍事用プログラムのためのプルトニウムの生産、または生産支援のいかなる試みにも反対すると記されました。
52:48
民生用とされていても、高濃縮ウランやプルトニウムは本質的に核兵器に利用可能です。したがって、それらの生産や保有を適切に規制しない限り、抜け穴となってしまいます。
53:02
過去を遡れば、1991年の朝鮮半島非核化共同宣言は、南北両国が核兵器を持たないと歌うにあたり、両国とも再処理施設とウラン濃縮施設を持たないと定めました。そうすることで、非核化に実効性を持たせようとしたのです。
53:23
また、2014年にHAAGで開かれた核セキュリティサミットでは、高濃縮ウランの保有量を最小化し、分離プルトニウムの保有量を最小限のレベルに維持することが歌われました。核分裂性物質に関する国際パネルやカーネギー国際平和財団といった専門家グル ープからは、プルトニウムの分離は利用目的にかかわらず、中止または禁止する。
53:51
また、高濃縮ウランについては、使用を全面的にやめて低濃縮ウランに転換するといった提言も出されております。
54:01
今、世界には約1万2千発の核兵器がありますが、核兵器の材料として使われる恐れのある高濃縮ウランやプルトニウムの量は、資料の最後のページに付けてある別紙にありますように、表と表後にありますように、核兵器11万発以上分にも上ります。これらに対する総合的な管理の視点が必要になります。
54:30
プルトニウムについては、国際原子力機関IAEAの下で管理指針「インフサーク549」が策定されていますが、こうした透明性措置の強化が必要です。表後にありますように、中でも日本は今日約45トンのプルトニウムを保有しており、その量は核兵器7600発分にも相当します。
54:58
非核保有国としては突出した量であります。もちろんこれはIAEAの保証措置下にありますので、即座に核兵器に転用できるというわけではありません。それでも、計算誤差の問題は発生します。何と言っても、日本の場合には量が格段に多いわけです。2018年に政府は、当時の保有量約47トンを上限とし、保有プルトニウムを減らしていくと公約しました。
55:27
確実に削減し、国際的疑念を持たれないようにするためには、青森県6カ所村の再処理工場の本格稼働を中止することで、これ以上プルトニウムを増やさないようにすることが必要です。このように、国際的に核分裂性物質への管理を強化する中では、日本が民生用として進めている核燃料政策も再検討を迫られていくことは必至です。
55:54
自国の分は民生用だから大丈夫。しかし他国の分は民生用と言われても怪しいといった態度は通らないと思います。次に、FMCTを条約として制定させるプロセスと、そこへの核保有国の関与について考えたいと思います。どのような場で条約を 交渉するかという問題であります。
56:18
これまでジュネーブ軍宿会議での交渉が呼びかけられてきましたけれども、軍宿会議は全会一斉をとっているので、すべての国が拒否権を持つのと同じことであります。今後軍宿会議で条約交渉が開始できるとは思えません。1997年の対人自来禁止条約や2008年のクラスター団禁止条約は、国連の枠組みを飛び越えて有志国の外交会議を重ねて成立へとこぎつけました。
56:45
核兵器禁止条約の場合は、第一段階として有志国が核兵器の非人道性に関する議論を重ね、第二段階として核兵器禁止を目指す有志国の制約を集め、第三段階として国連総会決議を通じ国連の下で交渉会議を行い、条約を成立させました。
57:10
この過程では対人自来やクラスター団と同様に完全に有志国会議で進めるべきとの意見もありました。その方がスピードが早いからです。しかし将来的に核保有国を巻き込むためには国連という枠組みの下で作るべきだという意見がそれに勝りました。私はこれが正しい選択だったというふうに考えております。
57:32
今後FMCTを作る場合にどのような制定過程をとるかという問題は核保有国をどのように巻き込んでいくかということと関係します。核兵器禁止条約の場合には核保有国はすぐには参加しない条約でも早く成立させて強い禁止規範を作ることを優先すべきだという考え方のもとで今日の条約が作られました。
57:57
その結果確かに核保有国は未だ入っておりませんけれども核兵器の非人道性に関する認識は国際社会にあまねく広がりました。FMCTの場合に保有国の参加を重視するのかそれとも規範形成を優先するのかということは重要な論点となります。これは条約の発行要件とも関係します。
58:20
改めて表参をご覧いただきますとそこに主たる条約の発行要件発行状況現在の定額国数そして核保有国9カ国のうちどこまでをカバーできているかということがまとまっています。このうちCTBTは原子力活動を行っている44カ国が批准して初めて発行するという厳格な定めを しました。その結果今日に至っても未発行です。
58:47
こうした状況を踏まえて核兵器禁止予約の場合には単純に50カ国が批准すれば発行すると定めました。一方CTBTも未発行だから効力がないということではありません。すでに圧倒的多数の国が定額国となっていることそして全世界に核実験の監視システムを張り巡らせていることから実質的に核実験を抑制する効果を発揮しております。
59:14
現実問題としては核を保有9カ国全てが最初から参加する条約というものを作ることはほぼ不可能ですから、FMCTにおいて何を優先させるかを慎重に検討する必要があります。条約の交渉が始まっても既存の貯蔵分を対象に含めるかどうかといった点で交渉が難航することは予想されます。どこまでの内容の条約にするかによってどの国の参加が期待できるかということも変わっていきます。
59:43
まとめに入りたいと思います。核軍縮の世界では標2や標3に記した様々な条約や制度が組み合わ さってアーキテクチャ、すなわち建造物が作られているという言い方がよくなされます。NPT、CTBT、そして核兵器禁止条約は相互補完的な関係にあり、そこにFMCTをどう組み合わせるのかが最も効果的であるかということを考える必要があります。FMCTを通じて核分裂性物質に対する国際的な管理を強化し、その検証制度を作っていくことはNPTに対しても核兵器禁止条約に対しても実効性を高めるために有益です。いずれにせよ大前提として核兵器がいかなる国にとっても許されない非人道兵器であるという基本認識を確認することが絶えず求められます。
1:00:38
そのためにも日本は核兵器禁止条約に加わるという政治的意思を示しつつ、同条約の定約国会議には積極的に参加して核分裂性物質の生産禁止、管理強化、そしてその検証に向けた実質的な議論を牽引すべきであると考えます。
1:00:59
最後に一言申し上げます。本日私は他の参考人の先生方がどなたであるかということを知らされることのない状態でこの役割を引き受けいたしましたが、その後になって3人とも男性であるということを知り残念に思っております。
1:01:18
近年核軍縮の世界においてもジェンダーの議論は盛んです。核兵器は女性に偏った被害をもたらす一方で、核兵器をめぐる議論や意思決定の場が男性に依然支配されているということは大きな問題であります。
1:01:32
2022年のNPT再検討会議において日本は67カ国によるジェンダーと多様性、法説に関する共同声明に連盟をしております。井上会長及び委員の皆様におかれましては今後の調査会での参考人の選定に当たりまして、ジェンダーの多様性を重視していただけますようお願いを申し上げまして、私の意見陳述を終えたいと思います。ご静聴ありがとうございました。
1:02:00
ありがとうございました。以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。これより参考人に対する質疑を行います。本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。まず、大会派順に各会派1名ずつ指名させていただき、その後は会派にかかわらずご発言いただけるよう整理してまいりたいと存じます。なお、質疑及び答 弁は着席のままで結構でございます。また、質疑者にはその都度答弁者を明示していただくとともに、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られるように、答弁を含めた時間がお一人10分以内となるようご協力をお願いいたします。質疑のある方はご発言をお願いします。
1:02:52
お三方の参考人の先生方、本当に素晴らしいご講義をありがとうございました。自由民主党の松川麗です。私、実は20年前ですか、2004年からまさにジュネーブの軍縮代表部に勤めておりまして、当時、井野口大使の下でご指導もいただきましたし、その際、2005年のNPT運用検討会議では秋山先生ともご一緒させていただき、大変懐かしい思いでございます。当時も既に10年デッドロックだったのが、いまだに全くコーズと論点も変わらないまま30年経っていることに私は正直驚愕をしつつも、そうなんだろうなと思っているところであります。今日、私、当時自分が軍縮会議もFMCTも担当していたので、率直に先生方にお伺いしたいと思うんですが 、当時も全然進まないことをずっと取り組んでいることにかなり虚しい思いを若干はしたのですけれども、しかし軍縮というのはおよそ、米荘がそうだったようにパリティができないと、軍縮しようというインセンティブというのは核兵器国にとっては起きないものなので、例えば中国についても、米ロに並ぶ1,500発ならないと削減しようというインセンティブというのは、リアルポリティックの観点からすると起きないんだろうと思うんですね。今日先生方のお話にもございましたが、まず私が質問したいと思いますのが、このFMCTということに関して言うと、今の私の考えでいくと、核砂が固定される形では多分進まないんだろうと思うんです。なので、抗議のストックパイルも含めないと実は、乗ってこない国が多いのだろうなという気はしていますが、その点についてどう思われるのか。特に中国の核に対しては、FMCTの文脈では何を求めていくことが最も有効なのか。安倍先生はすでにピアプレッシャーを与えるということが大事なんじゃないかというような非拘束方式で申し上げておられましたが、特にやはり日本にとっては中国の中距離核が非常に脅威でありますので、それを考えたときに一体FMCTの文脈で中国に対して何を求めることが適切だと思われるか教えていただきたいと存じます。お三方だとちょっと多すぎるでしょうか。よろしくお願いいたします。
1:05:09
ありがとうございます。ご質問はまさに非常に難しいところだと思います。特にもしFMCTという文脈に限って言うということであるならば、条約そのものというよりも、先ほどの私の話を繰り返しになりますけれども、やはり普遍的な核群粛の原則という意味で言うところの透明性の確保であったりとか、あるいはこの核群粛へのコミットメントを目に見えた形で示すという意味でのフィッシャルマテリアルの生産モラトリアムといったものについては、中国に促していくことができる、すべきことなんじゃないかと。とりわけモラトリアムに関しては、中国以外のN5の国々は全て専業をしているということもありますので、それ以外のNPTに入っていない国々にも合わせて、これは核兵器を保有している国々に全てに対して働きかけをしていくということかと思っております。もう一つ、今の中国が1500発までキャッチアップしなければということですけれども、実は1500発になったところで、アメリカ、ロシアは配備されていないものを含めると約5000~6000発ということなので、まださらにもしかしたら増やしていく余地もある可能性もリスクもあるということは、我々念頭に置いておくべきかと思いますが、あとはやはり中国がなぜこれを増やそうとしているのかというところについて、アメリカと中国がしっかりと議論をしていく。それを日本は支援しながら、やはり日本にとっての懸念というものをちゃんとアメリカと中国に対して伝えていくということを、今の段階ではやっていくことが必要なのかと思っております。では安倍さん、今人。どうぞ。私はどちらかというと学問の世界で、やや政策の皆さんとはちょっと離れた立場にいる、少し距離を置いた感じで物事を見ておりますので、どちらかというと中国を全面的に出すというよりは、結果的に中国に対して、先ほど秋山先生も言及されましたけれども、ユニバーサルの中で結果的に中国も態度が変わっていくというような、まさに取り組みができれば日本ではないのかなというふうに思うところです。まさに日本にとって中国がということは、それはその通りではござい ますけれども、やはり中国以外の核兵器を保有している国であり、なおかつ貰う取りもしていない国というのがございますので、その意味では私のプレゼンテーションの中で言及させていただいたのは、NPTの枠組みはNPTの枠組みで、他方で国連総会というのはまさにユニバーサルな、NPTの核兵器国もいれば核兵器国もいない国もあり、なおかつ国連総会決議というのは、多数決で採択できますので、むしろ反対をしてもらって採択して、でもこれは皆さん合意しているわけですよね、こういう措置をやっていきましょうねと。今の段階ではまだ国連総会決議は、単にcall the phoneとか要するに求めるとか要請するとか、勧告するとかいうことだけしか言っていなくて、それをどうやってフォローアップするのかというメカニズムはほとんどないと思うんです。そこのところを少しずつ担保していけば、さらにやっていない国がやっていないことがよくわかると、国際社会の場でよくわかると、そのようなちょっとソフトな感じで、条約を追求することはやはり難しいということであれば、条約だとガチガチですので、ちょっと考え方を変えてということが必要なのかな というふうに思うところです。以上です。川崎さん、後に。お二人の話とも重なるわけですけれども、中国が問題だからそこを何とかしようというようなアプローチでいうと、いや不平等だと、米国がやってないじゃないかと、あるいはパキスタンのようにですね、他がやってないじゃないか、インドがやってないじゃないかと、こういう話を生んで、そしていつできるかもわからない、その条約の話を延々と続けていく間に、どんどんと文革が進んでいってしまうという現状があるんだろうというふうに思いますので、そもそもですね、核兵器を増やすこと自体が問題なんだという規範形成をどうしていくかということなんだろうと思います。その規範形成をするために、この条約の議論をするということが重要であり、あるいは多条約、これは核兵器禁止条約も含めてでありますけれども、そこで形成されている、そもそも核兵器はいけないものだという考え方を国際的に強調していく。そのためにもですね、やはり米ロに対するしっかりと核削減をしていけということの声は強めていかないとですね、それがないと他の核保有国に口実を与えるだけということになってしまうと思います。時間が迫ってますので、あと一点だけ秋山先生にお伺いしたいんですけど、先ほどのように、軍縮会議というのは結局コンセンサスベースなのでほとんど何も動かないんですけど、その軍縮会議というのはあのままでいいのか、その意義についてどう思われますか。秋山さんから。ありがとうございます。私は軍縮会議、今動かないですけれども、存在価値はあると思います。つまり会議そのものは動きませんけれども、そこにフォーラムがあって、さまざまなフォーマル、インフォーマルな形で、国がさまざまな議論を交わしていく。そしてその中でいくつかのアジェンダができていったりとか、それから議論が深まっていくという、そういう装置であると思うんですから、会議だけではないという点で存在意義があるというふうに考えております。あと一問なので安倍先生にもお伺いしたいんですけど、核禁条約ですね、核兵器禁止条約についてはオブザーバー参加したらいいじゃないかというご意見があると思うんですけど、これについてはどのように思われますか。安倍さん、コーニング。いろいろな意見があると思います。どちらの意見が正しいか間違っているかという話では多分ないと思うんです。その意味で私は必ずしもどちらの立場がいいということを述べることはちょっと控えたいということです。ただですね、核兵器禁止条約の第1回定国会議、第2回定国会議、出席いただいた方も隣にいらっしゃいますけれども、参加者リストを見てみました。参加者リストを見てみて、第1回は特にそうだったんですけれども、名前を見たら日本人の名前が非常に多かったです。おそらく日本政府としては参加していませんので、NGOの立場として参加されている方が日本人非常に多かったと。数えたわけではないですけれども、おそらく会議に出席された方の国籍で一番多かったのは日本人じゃないかと思います。もう一つ資料を見たのが、会議のための分担金の支払いというか割合状況です。ダントツに一番大きかったのはドイツです。もし日本がオブザーバー参加をすれば、お金の会議の開催の面ではとても感謝されるだろうなということ自体は思いました。ただ、それが参加するための条件化なのかどうなのかという話ではないと思いますけれども、と りあえずその2つのドキュメントから受けた印象を紹介させていただいたということです。以上です。ありがとうございました。時間が来ましたので、唯一の被曝国なので、核軍縮取り組みも大事ですし、同時にやっぱり核抑止は現実的に考えざるを得ないと私は思っているところでございます。今日はありがとうございました。
1:13:08
立憲書民の高木麻里です。3人の先生方、本当にどうもありがとうございました。大変分かりやすく幅広い議論を教えていただきました。被曝の実装という言葉は、G7サミットの際に総理からも多く聞かれたんですけれども、戦後78年経って、戦争を知る世代は少なくなっているとは言っても、日本以上に核兵器の悲惨さの実装を知っている国民の多い国はいないんだというふうに思います。それでもその実装を最も知る国、日本が核の過剰を手放せないという現実に安全保障を めぐる難しさ、なかなかこのFMCTが交渉開始すらされない疑心暗鬼の真理もあるのではないかというふうに考えるところです。最初に安倍先生に伺いたいんですけれども、暫定的大体アプローチ、大変興味深く伺わせていただきました。このFMCTを進めていくには、核兵器用、核分裂性物質を生産禁止とする以前に、現状把握だったり、情報公開のためのシステム、特に中国に牽連されるところかと思うんですが、こういったものが必要ではないかというふうに考えるんですが、またこれを実効性あるものにするいろんな難しさがあると思いますが、この点をどうお考えでしょうか。お願いします。
1:14:39
私のプレゼンテーションの中で、すでに言及させていただいたところではあるかと思うんですけれども、条約ができればいろいろと各国を法的に縛って、義務を付けてしまえば、義務を持っていければ制裁を生むとかという話になるわけですけれども、そういう状況ではないということで、何もできないのか、何もしたいのかというわけではないということで、法的な拘束力をかけるのが嫌がっているのであれば、法的な拘束をかけなければいいじゃないかということです。様々な措置については、NPTの運用検討会議、国連総会決議、すでに案と出して出されていて、それが合意されているのもいくつかというか、いくつもあるわけです。むしろ合意されていることが、履行されているのかどうなのかという監視メカニズムが、今のところきちんと整っていない。例えばNPTですと、まさに報告制度については、それこそ2010年のNPTのレビューカンファレンスで合意されていて、各国に対してこういうことを報告しなさいと、報告した文書も出てきているんです。それをどういう場で検討するのかというようなメカニズムが整っている。単に報告書が出たら出っ放しと。例えばそれをNHKの方が一生懸命批判的に検討して、こことこことここと比べてみたらどうだとかということは、いくらでもできますけれども、やはり政府の代表の方に出てきてもらって、例えばフォーマルな枠組みで言うと、人権分野では国連人権理事会とか、制度化されたものがありますし、その場ではNGOの代表も参加することができるわけですから、もちろんNGOというのは人権だけの専門分野ではなくて、もう本当に各軍宿、ずっと昔からNGOの方が活躍されているわけですので、少なくともそういう場を設けることにまず合意をして、そこから合意しないといけないというところがちょっとつまずくところであるんですけれども、主権国家並立共存ですので、やはり合意を積み重ねていくというところは一番大事で、目指すところは割とクリアになっていると、メカニズムを設けると。メカニズムを設けるための合意について交渉して合意をするということに多分つけるのかと思います。以上です。
1:17:13
ありがとうございました。それでは次は秋山先生と川崎先生に伺いたいと思いますけれども、日本政府が一貫してFMCT交渉開始に向けて尽力し、特に岸田総理が前向きであることは私も評価をしたいというふうに思います。ただし30年にわたって交渉開始ができないでいるFMCTに焦点を当てて推進に向けて頑張っているよという姿を見せるということは、ちょっと正面から見た見方ではないんですけれども、木馬口出身の総理なのになぜ核兵器禁止条約に前向きではないのかという問いを交わすためのポーズというふうに見る向きもあるのではないかというふうに思います。本気で進めるなら、いろいろ反対するパキスタンへの個別的な働きかけであったり、あるいは軍縮会議の議論に起源を付すなど、秋山先生からは他にもいろんなアプローチの言及もあったんですけれども、取り組みがあると思うんですが、今回G7サミットの前、FMCTハイレベル記念行事というものを開かれて、そこに総理が出席するということに留まっています。FMCT推進に向けての日本政府の姿勢をどう評価するか伺いたいと思います。
1:18:41
ありがとうございます。先生がおっしゃられた通り、記念行事というふうにおっしゃられましたけれども、まさにこのような名前の付け方が、いかにこのアジェンダを国際社会においてコンセンサスをもって推進するのが難しいかということを示唆しているように思います。つまり、表向き、この目標核兵器用の核分裂性物質の生産禁止というものは表面的には非常に重要なことであるということについて、誰も否定するわけではないわけですけれども、安全保障上の現状を考えると、おそらく核兵器を保有する国は、なるべくであれば自分たちの手足は縛られたくないというふうに考えている。となると、例えばパキスタンも、先ほど私が申し上げましたのは、やはりインドとの関係において、今、現状不利な状況を固定化されることが嫌である。中国も同時に、アメリカ、それからロシアとの関係を見ているということであるとするならば、これは単にFMCTというスコープを狭めた形での議論をするというよりは、先ほど安倍先生や川崎先生からもお話がありましたけれども、いろいろな措置と組み合わせて、どのようなアーキテクチャを組んでいくか。そこにはフォーマルな条約もあるでしょうし、インフォーマルなさまざまな取組も合わせて考えていくということだということで、私は報告の中では、インフォーマルな取組というものをまずは進めるべきというお話をさせてい ただいたところであります。ですから、これは日本政府としては、これをポーズとしてやっているというふうに評価するのは、多少、政府には濃くな感じかなと思っております。ただ、それが速攻性のある軍縮の措置であるかというと、なかなかそうはいかない。いずれにしても、これはいろんな措置、例えば米、ロの間の軍備管理のレジームというのは、単にシンスタートがあるだけではなくて、そのもとに数百のアフォーマルな、あるいは法的拘束力のある政治的な合意がぶら下がっているわけですね。ですから、これは多国間の軍縮のアーキテクチャというのも、まさにさまざまな条約にもっとより多くのいろんな合意を追求していくと、そういう本当に大きなパッケージの取り組みであるというふうに見るべきかなと思っております。
1:21:14
何か、核兵器禁止予約ではなくてFMCTというような見方をするというのは、いろんな意味で誤りだと思います。政府がそういうふうに言っているということではありませんけれども、そういうふうな議論の仕方を周りでするのは、よくないと。今、明山参考人のお話にもありましたけれども、今日私がプレゼンテーションした重要なメッセージは、既存の条約というのがたくさんあって、それの組み合わせをどういうふうに最大限で力を出していくかと、そういうことでありました。ですので、核兵器禁止予約が核兵器がなくさなければいけないという大きな方向性を出すと、そしてNPTにおいて、それは核兵器保有国もきちっと約束をすると、その上の核論部分で、じゃあ核分裂性物質どうするのかということで、FMCTがあり、FMCTがすぐに条約という形にならないのであれば、その条約の手前の部分のモラトリアムであるとか、政治宣言で対応すると、そういう全体パッケージで我々議論していく必要があるし、政府にもそういう全体パッケージで議論していただく必要がある、そういうことだろうと思います。もう時間がないので、質問は以上とさせていただきますけれども、ジェンダーについての言及があって、被曝すると、本当に女性など弱いものに被害が出るという視点、大切だと思いました。この委員会が国会としては大変珍しく男女同数の委員会になってまして、こういう場で先生たちの意見を聞けたことは大変有意義だった と思っています。どうもありがとうございました。
1:23:07
はい、公明党の新妻英樹です。3人の参考人の先生方、大変にありがとうございました。松川先生、高木先生の質問とは随分重なってしまうところだろうかと思いますが、まず秋山参考人と川崎参考人にお伺いしたいと思います。先ほど川崎参考人のお話で、この課金条約、様々な国連以外の場での議論を積み重ねて、そしてフォーラムを国連に移して、いよいよこの条約が決まっていたという経緯をお伺いしました。そうしたときに、やはりこのFMCTをめぐる議論というのも、いろんなフォーラムがあって、30年動かなかったというご指摘もありましたが、動かしていくのは相当な非公式な場での議論で必要なんだろうと思います。昨年のG7の広島サミットの総試合では、先進諸国の首脳が被爆の事実を目の当たりにするということで、非常に大きな意義が あっただろうと思うんです。本当に心を潔ぶような体験だっただろうと想像に語らないところです。また秋山先生におかれましては、県人会議としても活躍されていらっしゃいます。また川崎さん公認からは、民生用のプルトリウムの量も日本が断トツに多いというお話もありました。やはり日本の被爆国であり、G7の一員でもあり、そしてこの権利会議をリードして、保有国と非保有国の橋渡しをするということを自認している我々が発達すべき役割で非常に大きなものがあるんだろうと思うんです。そこで、いろんな日本側で参加しているフォーラムの中で、非公式のフォーラムの中で、このFMCTを日本らしく議論を進めていくために、どんなような工夫が考えられるのか、また秋山先生には、県人会議がFMCTの議論を進めていくために果たせる役割についてお伺いしたいと思います。まず秋山さん公認からお伺いしたいと思います。ありがとうございます。今ご紹介いただきました県人会議ですけれども、これは日本から3名、それから世界の各国から12名で、前回NPTの要検討会議で議長を務められたアルゼンチンのスラーミナ大使も含まれて、メンバーの構成も多国間の軍縮をやっておられた方と、それから核戦略を中心として安全保障を見られていた方、それからP5全ての国から参加を得ているということで、実は非常に裏を返すと議論をまとめるのが難しいという状況にはございます。他方で、やはりこれが世界の現実でありますから、まず県人会議の中では、とにかく率直にお互いに自分たちの国の斜方は脱いで、持っていることをしっかりとメンバーで共有して信頼情勢をしていこうと、その中で国際社会全体にとって有効なことは何なんだろうかということを考えていく、議論していくということを、まず最初にやらなければいけなかったという状況であります。その中で、やはりFMCT、条約そのものというよりは、核分裂性物質をどうやって削減していくんだろうかと、軍縮のベースラインと申し上げましたけれども、やはり一番基盤となっている、基礎の部分をしっかりと固める必要があるという意味でいうと、この核分裂性物質の生産をどう管理していくかというのは、一つ当然ながらアジェンダになっていくであろうなというふうに、現在議論が進行形なので、ここに特化したということではございませんけれども、重要なエレメントだというふうに、私自身は少なくとも考えておるところで、それは、例えば透明性の向上も含めた信頼情勢、お互いの戦略的に対立している者同士の間で、どのような信頼を確保して、そこからリスクであるとか脅威を削減していくか、そこにはやはりできることは何なのかということを考えていく。そこに、やはり核分裂性物質の問題というのは当然のことながら入っていくのかなと。まだ議論の途中ですので、予断をすることはできませんので、詳細については申し上げることはできませんけれども、そのような形で取り組んでおります。どういう場で議論を進めていくか、日本はどういう場を作っていくべきかということについてでありますけれども、私は何か新しい場所を無理やりですね、FMCTということだけのために作る必要は必ずしもないように思っておりまして、もちろんジュネイブ軍宿会議という場がなかなか機能しないということははっきりしておるわけですけれども、やはり核軍宿ということでいえば、一つはNPTの再建とプロセスがあって、毎年のように準備委員会が開かれていくと、一つはこのNPTのプロセスの中ですよね。もう一つは、核金条約の定額国会議の中でも議論できることだと思います。核金条約の定額国会議、次回は来年の3月に行われますけれども、NPTの文脈で言いますと、もちろんFMCTを作っていくということ自体がNPTの中の合意事項でありますが、同時に透明性を高めるということで、核保有国が自分たちがどういう核戦力を持っていて、核分子質を持っていて、どうそれを削減しているかということを説明するということになっておるわけですけれども、そこをどういうふうに議論していくかという議論の土台がありますから、この議論をそこに重ねていくということがあると思います。軍事用あるいは民生用のプルトニウムやこのシュクランの問題ですよね。そして核金条約の関係で言いますと、核兵器、核金条約は核兵器は許されないという基本原則が決めたわけですけれども、どうやってそれを不可逆的に核兵器の廃棄を担保していくかということについては、これから検証制度を議論するということで、ワーキンググループも設けられて議論が進んでいるわけですから、そういうところにもぜひ日本も参加をしていって、この核分裂性物質の生産禁止や管理強化の議論、検証の議論をしていけばいいだろうというふうに思います。
1:29:16
笠木先生、この非軍事用の民生のプルトニウムについて、例えば日本がかなり自らの手を縛るような提案をすることによって、各国の信頼を得るようなアプローチと考えられますでしょうか。
1:29:33
日本は確かにこのIAEAの保障措置をある種優等性的に受けているということはありますけれども、問題は非常に大量のプルトニウムを保有しているということでありますから、これを大きく削減するためのイニシアシブを取ることが、他国に対してもある種言い訳を許さずにきちんとこの問題に取り組まなければいけないというメッセージになると、日本はイニシアシブをこの分野で取れるというふうに思います。
1:30:03
安倍参考人をお伺いします。安倍参考人の資料で言いますと、19ページからFMCKの構想に内立する課題ということで、私の理解では本当に条約を目指すのか、それとも大切な措置でいくのかという根本的な問いなんだろうという理解をしております。そこでこの資料で言いますと、小さいページの24のところに、条約方式を追及するのであれば、条約に後ろ向きな国の懸念を解消される努力が必要だとありまして、じゃあ具体的にどのようにしていけばいいのか。また、次のページに行きますと、この代替的なアプローチということで、あまり高速でかつ強くないアプローチについても言及されております。私が結構ライフワークとして、宇宙の分野におきましては、宇宙の分野も戦略、軍事そのものの領域ですので、やはりカッチリした条約の策定が難しいので、ベストプラクティスを積み重ねて いくようなソフトロー的なものが、やはり今積み重ねられている状況であります。そうしたことを考えると、宇宙に関する取り組みのようなことも、一つの結論として考えられるのではないかと思うのですが、この後ろ向きな人をどういうふうに前に向かせるのか、もしくはこの代替的なアプローチはどのように進めていくのか、安倍参考人のご見解をお伺いしたいと思います。ご質問ありがとうございます。スライド24枚目の懸念を解消させる努力。私もこのスライドを書いていて、質問が来るだろうなと思っていて、答えを用意していたかというと、答えを用意できていないというのは現状だと思います。残念ながらというか、あいにくというか、それをまさに各国で知恵を出して考えていけないのかなというところだと思います。ただパキスタンをちょっと挙げるとすると、パキスタンはなぜ自国がFMCT条約の交渉入りに反対しているのか、ということは極めて明確に述べているわけでございますし、FMCTという条約それ自体を否定しているわけではなく、