1:19
ただいまから、資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会を開会いたします。委員の異動について、ご報告いたします。昨日、鬼木誠君が委員を辞任され、その補欠として、小川千景君が占任されました。参考人の出席要求に関する件について、お諮りいたします。原子力等エネルギー・資源・持続可能社会に関する調査のため、今期国会中、必要に応じ参考人の出席を求め、その意見を聴取することに、ご異議ございませんか。ご異議ないと認めます。なお、その日時及び人選等につきましては、これを会長にご一人願いたいと存じますが、ご異議ございませんか。ご異議ないと認め、左要を決定いたします。政府参考人の出席要求に関する件について、お諮りいたします。原子力等エネルギー・資源・持続可能社会に関する調査のため、今期国会中、必要に応じ政府参考人の出席を求めることとし、その手続きについては、これを会長にご一人願いたいと存じますが、ご異議ございませんか。ご異議ないと認め、左要を取り計らいます。原子力等エネルギー・資源・持続可能社会に関する調査を議題といたします。本日は、資源エネルギーの安定供給確保と持続可能社会の調和のうち、資源エネルギーと持続可能社会をめぐる情勢に関し、ロシアのウクライナ侵攻による新たな局面と資源エネルギー情勢についての3名の参考人からご意見をお伺いした後、質疑を行います。ご指摘いただいております参考人は、公立大学法人熊本県立大学理事長白石隆君、合同会社ポスト石油戦略研究所代表大葉紀明君、及び慶応技術大学総合政策学部教授広瀬陽子君でございます。この際、参考人の皆様に一言ご挨拶を申し上げます。本日はご多忙のところご出席いただき誠にありがとうございます。皆様から忌憚のないご意見を賜りまして、今後の調査の参考に致したいと存じますので、よろしくお願いいたします。次に議事の進め方について申し上げます。まず白石参考人、大葉参考人、広瀬参考人の順に、お一人20分程度でご意見を述べいただき、その後午後4時頃までを目途に質疑を行いますので、ご協力をよろしくお願いいたします。また、ご発言の際は挙手をしていただき、その都度会長の許可を得ることとなっておりますので、ご承知おきください。なお、ご発言は着席のままで結構でございます。それでは、まず白石参考人からお願いいたします。
4:54
どうも、今日はお招きいただきましてありがとうございます。ロシアのウクライナ侵略による新しい局面と資源エネルギー情勢について提出しておりますメモに沿ってお話したいと思います。まず最初に、ごく基礎的なデータによって、日本の現状、この場合の現状というのは、ロシアのウクライナ侵略以前、直前のデータで確認したいと思います。もう皆様ご存知だと思いますけれども、まず最初に、日本の一時エネルギー自給率というのは、2021年で11%でございます。これはドイツの35%、フランスの55%、ましてイギリスの76%、アメリカの106%に比べると非常に低い数字でございますし、日本の食料自給率、2019年の場合、日本の食料自給率というのは非常に低いということはよく知られておりますけれども、それでも38%、エネルギーの自給率というのは極めて低いんだというのが重要な点でございます。しかもこの一時エネルギー供給の構成は、これは2019年度でございますけれども、石油が37%、石炭25%、天然ガス22%、原子力3%、再エネ12%でございまして、電源構成から申しますと、石油が7、石炭が32、天然ガスが37、LNGが37、原子力が6、再エネが18%ということでございます。脱炭素電源比率ということで申しますと、2010年、つまり3.11の前の年には、原子力が25%、再エネが9%でございましたが、2021年には原子力が6.9%、再エネが20.3%ということで、脱炭素の電源比率というのは、この12年で下がっております。エネルギー基本計画では、2030年度に原子力を20から22%、再エネを36から38%とい うふうにターゲットを示しております。それから最後に化石エネルギー調達のロシア依存度というのは、これは原油は3.6%、LNGが8.8%、石炭が11%で、既に御承知のとおり、原油と石炭については輸入を止めております。それからその結果、2022年、昨年には石油調達の中等依存度というのは、98%になっているのではないかというふうに推定されております。これが現状でございます。ロシアのウクライナ侵略前の状況でございます。では、エネルギー危機が何が起こっているのかと。一つは当然のことながら、ロシアのウクライナ侵略でございますが、同時にEU、特にドイツのエネルギー政策が転換しまして、その結果、エネルギー危機が起こり、エネルギー価格が高騰しまして、このエネルギー価格というのは高止まりするというふうに想定していた方がいいだろうというのが第一点でございます。だから二つ目は、これは特にG7を中心とするアメリカ、日本、あるいはアメリカの同盟国の体操経済制裁の結果でもございますけれども、世界はロシアのエネルギー資源を買う国、あるいは買える国と、それから買わない国、買えない国に二分されていっていると。それから三番目に化石、 同時にですね、特にヨーロッパ諸国は化石エネルギーから脱炭素エネルギー、ここではもうCエンド、カーボンニュートラルという言葉でCエンドエネルギーというふうに書いておりますけれども、化石エネルギーから脱炭素エネルギーへの世界的なエネルギー転換というのが同時に起こっているんだという、これが私の考える非常に重要な三つのポイントでございます。ただしちょっと付け加えますと、これは特に途上国、進行国のエネルギー政策なんかを見ておりますと、こういう国の多くでは50年後も、つまり2050年になっても60年になっても石炭を使っていると、石炭に依存しているだろうということもかなりの角度で言えることだろうとは思います。ではそういう中で、日本のエネルギー政策というのはどういう問題があったのかと申しますと、一言で申しますと、エネルギー機器に迅速に対応できる体制ができてなかったというのが一言で言えることだろうと思います。いくつか理由がございますが、一つは電力自由化の下で事業環境整備が遅れたと、その結果これが供給力の問題として顕在化したと、二つ目に再エネ、大量導入のための系統の整備というのも遅れていたと、三つ目に原子力発電所の再稼働に ついても遅れていたと、その結果現在の、ここが一番私としては皆様に考えていただきたい点でございますけれども、現在日本のエネルギー政策というのは、二つの非常に大きな課題に直面していると、その一つはエネルギーの安全、安定供給、つまりいわゆるエネルギー安全保障というのをどうするかという問題でございます。もう一つは、もっと長期のエネルギー転換にどう対応して、脱炭素のエネルギー効率の良い社会をどう構築し、競争力のある産業構造をつくっていくのかと、この二つが今私どもが直面している非常に大きな課題あるいはチャレンジだろうと思います。それではそれについてどういう対応をしているんだろうかと。まず短期的な対応から申しますと、ここでぜひ頭に置いておいていただきたいことは、この冬だけではなくて、おそらく来年の冬はこのエネルギーの供給というのはもっと厳しくなるだろうということを想定して、短期的な対応をしなければいけないということでございまして、いくつかございますが、その一つは当然のことながら、節電あるいは省エネの促進によって需給を緩和するということでございます。2枚目に移りますけれども、2つ目は原子力発電所の再稼働を促進すると。3つ目は給紙火力も含めた電源の追加交互、それから稼働の加速でありまして、4つ目に資源の確保、特にアジアの国々との連携によってLNGの調達を行うという、こういうタイプの資源確保でございます。こういう短期的な対応、この場合の短期というのは3年とか5年ぐらいの時間の幅で考えていただければいいのではないかと思いますが、もっと短期的にやるべきこともございます。だからもう少し長期、中長期の対応としましては、やはり一言で申しますと、エネルギー調達における持久力の向上と、サプライチェーンの強靭化、この2つが非常に重要だろうと考えております。それは具体的に申しますと、ここでは5点くらいポイントを挙げておりますけれども、1つはやはり再エネを主力電源化して、その中で蓄電池の導入を促進し、系統整備を促進していくと、これが1つ目です。2つ目は原子力発電所の再稼働を促進し、中長期的には核進路の新設、さらに再処理、廃炉、再収処分も加速化していくと。3つ目に電力システムそのものの私は再点検が要ると、特に供給力の確保のために電力システムそのものを再点検する必要があるだろうと。4つ目にサプライチェーンの強靭化、これは特にLNG、それから上、中流の開発というのが重要だろうと思います。5つ目にグリーン水素の大規模生産と安定供給を促進し、促進するということでございます。ここでぜひ注意していただきたいことは、エネルギー調達におきましては、これがすぐに知性学的な意味を帯びるんだと。先ほど現在日本の化石エネルギーに対する中等依存度というのは、おそらく98%ぐらいになっているというふうに申しましたけれども、これは決して望ましいことではございません。そうではなくて、それではどうするかと申しますと、私は再エネのコスト、コスト効率というのは必ずしも日本はいいわけではございませんので、むしろ再エネコストの効率の良い、しかも信頼できるパートナー国で、水素を安定的に大量に生産調達していくと。同時にそれをCO2の回収、利用、貯留技術、いわゆるCCUSですけれども、これと組み合わせることによって知性学的にも、日本の知性学的な安全保障の確保にエネルギー政策を同時に使っていくという、そういう考え方が非常に重要だろうと思います。一つだけ例を挙げますと、グリーン水素とCCUSでカーボンキャプチャーで回収したCO2で合成燃料を作りますと、これは差し引きしますと、カーボンニュートラルでございます。これがおそらく航空機燃料の場合には鍵になると思いますし、ドイツの場合にはペルー等で大規模にこの実証実験をやっておりまして、そのときにドイツ政府が言っていることは、私の理解では、来年期間が悪いのではないんだと、来年期間は使えるんだと、要するに合成燃料をいかに効率的に、コスト効率のいい形で作るかということなんだと。私はそういう考え方は極めて納得できる考え方だろうと思っております。同時に先ほども申しましたけれども、多くの途上国、進行国ではこれからもずっと石炭を使うと思いますので、石炭とアンモニアあるいは水素の混焼によってCO2を削減するというようなことも十分考えるべきことだろうと思います。こういうことを全てまとめますと、日本のエネルギー政策の基本にはS+3Eという考え方がございます。ここでSというのは、セーフティーのつまり安全のSでございまして、3Eの方のEというのは、エンバイラメント、環境、それからエナジーセキュリティ、そのエネルギー安全保障、あるいは安定供給、それからエフィシェンシー、効率、この3つのEでございますが、もう少しすぐにお気づきになると思いますけれども、このSと3つのEの間にはトレードオフの関係がございまして、このバランスをどうとるか、例えばセーフティーとエンバイラメント、あるいはエンバイラメントとエナジーセキュリティ、あるいはセーフティーとエフィシェンシー、こういうものの間のトレードオフにどういうバランスのいい答えを出すか、これ一つの正解なんていうのはございません。ですからこのバランスをどうとるかというのは、これは実は政治のまさに一番重要なポイントだろうと私は思っておりますし、実際にこのバランスのとり方は時期によってかなり変わってきております。例えば2011年以降、つまり3.11以降はまさにS+3Eでセーフティーというのを非常に重視しましたけれども、日本が2050年にカーボンニュートラルを達成するというふうに政府が決めた以降は、エンバイ ラメント、環境というのが非常に重要な要素として出てきて、少し書き方を変えますと、実際にはE+S+2Eになったのではないかというふうに言ってもいい。今度のロシアのウクライナ侵略とエネルギー危機によって、エナジーセキュリティも非常に重要になってきて、その意味ではE+E+SEに今変化しつつあるというふうに考えてもいいだろうと思います。第二番目に、こういう中での鍵はやはり再エネの資力電源化と、それから原子力発電だと私は考えておりますが、同時に先ほど申しましたように、グリーン水素と、それからカーボンキャプチャーで回収したCO2を結びつけたメタネーションも非常に重要である。だから三つ目に、エネルギー転換というのは、同時に日本の知性学的な連携を変える、もっと信頼できる国との連携をつくっていく、非常に重要なチャンスである。だから最後に、もうこれは皆様よくご存知だと思いますけれども、エネルギーというのは国力の源泉でございます。これがぐらつきますと、日本の力そのものが揺らぎます。しかもウクライナ危機のような事態は、これからも少なくとも10年に1回ぐらいは起 こると考えた上で、対応策、あるいは戦略的に対応できる体制をつくっておく必要があるだろうと思います。ですからエネルギー政策は、この調査会がまさに考えておられるように、日本の国際情勢というのを冷徹に見つめて、方針を決めて、その方針をぶれることなく、10年、20年続けていくということが非常に重要だろうと考えております。これで私の申し上げたいことは終わりましたので、どうもありがとうございました。ありがとうございました。次に大葉参考人にお願いいたします。
22:23
ご紹介ありがとうございます。ポスト石油戦略研究所の大葉です。よろしくお願いします。本日はウクライナ戦争とエネルギー情勢に関係について説明したいと思います。日本の電力価格高騰が注目されておりますけれども、その意味では石炭価格の上昇というものが非常に大きいのですが、国際政治に関しますと、主に天 然ガスと石油というものが非常に重要になっておりますので、その2点について先にお話しした後に、日本へのエンプリエッケーションについてお話ししたいと思います。土壌化の石油とガスといいますのは、エネルギーとしてひとまとめにされることが非常に多いのですけれども、使い道も当然違いますけれども、特に国際政治を語る上では、全くその意味合いというものが変わってきますので、ガスと石油というものをしっかり分けて考えることが非常に重要だということをまず申し上げたいと思います。まず天然ガスについてお話しします。1年のようにロシアからEUに向けてのパイプラインによる天然ガスの輸出というものが急激に減少しまして、現在、戦争を始まる前の15%程度まで低下しております。現在は激しい戦闘が続くウクライナを経由する分と、また先日の地震で大変な被害が発生しているトルコを経由するこの2つの系統を通じて、ロシアの天然ガスがEUに輸出されているという状態になっています。この減少分の大半を占めますのが、このグラフの青いところと黒いところに相当する、いわゆるノルドストリームと呼ばれるバルト海を通じて、ロシアからドイツに直接接続されているパイプラインになります。こちらは昨年の9月26日に何者かによって爆破、破壊されまして、それで使えなくなったということがありました。これほどまで地域のエネルギー供給にとって非常に重要な社会インフラが一夜にして破壊されて、しかもその犯人が誰かわからない状態で今今日に至るというような事例は過去に他に例がないと思いますが、そのような大きな事件があったということです。ただその時、幸いといいますか、既に供給が止まっていたということで、この爆破による大きな混乱ということはなかったのですが、それは良かったと言えるかもしれませんが、よくロシアがガスのバルブを閉めたとか、エネルギーを武器に使っているという風な言い方をされることが多いのですが、この爆破も誰がやったかわかりませんし、これはバルブを閉めたというか、事故ということもあります。また、純粋にエネルギービジネスの観点からだけで考えますと、この下に止めたのは誰かと書いていますが、必ずしもロシアがガスを止めたと一言で言い切れ ない部分があるということです。と言いますのも、EU側も戦争が始まった直後から、ロシアからガスは買わないという風にずっと言ってきましたので、通常の商売で考えても、買わないという相手に売るのを止めたら怒られる、そんなことが起きているわけで、どちらが悪いというような話も言い切れないところがあります。例えば、戦争直後、ポーランドなどがまず供給を自分から止めています。また、その後、5月、6月ぐらいにかけまして、ルーブル決済の切り替えと図に書いてございますけれども、ロシア側がアメリカのドル金融制裁を嫌って、ルーブルでの支払いを要求したところ、国によってそれを受け入れる国と受け入れなかった国が分かれて、受け入れなかった国は契約が終了して輸出が止まったというようなこともありました。また、メンテナンス停止とあるところも、これ例年より少し長いんですけれども、メンテナンスに使っていた機材の制裁によって停まっていたということも一つ理由にしていたりとかして、必ずしもロシアにも全く言い分がないわけでもない、もちろん戦争していますので、それを言ってしまえば関係ないかもしれないですけれども、さらに言えば、戦争が始まる前に、ノルドストリームにはノルドストリーム2というほぼ同じ容量のパイプラインが1年前にも完成していたんですけれども、戦争が始まる数日前に、ドイツ政府がノルドストリーム2は使わないというふうに宣言しました。また、9月26日のノルドストリームの破壊の事故ですけれども、実はノルドストリーム2というのは一部この爆破を免れておりまして、使おうと思えば使える状態なんですけれども、それを政治的に止めているのはある意味ドイツ側という意味も含めて、100%ガス供給を止めているのが必ずしもロシアだけの判断ではないということも言えるかなと思います。続いて、こういったロシアからの結果的にガス供給が止まったことによって、ヨーロッパのガス価格というものが非常に高くなりました。2年ぐらい前から比べますと、一番高いときは15倍から20倍ぐらいまでガス価格が上昇していまして、そ れに連れてアジアのエレネジースポット価格も上昇しています。日本はアジアのエレネジースポットからも調達していますけれども、大半は長期契約ですので、日本が購入している天然ガスの価格というのは、相対的にEUよりは相当マシな状態でありまして、電力価格高いと言われていますけれども、EUに比べれば相当マシな水準に落ち着いているということです。アジアには日本のように長期契約ではなくて、スポットを中心に買っている国というものもありますけれども、例えばパキスタンやフィリピンなどといった国は高すぎて買えないということで、アジアで買えなかった国も続出したということです。中国は一昨年電力危機が発生しまして、その際に国内の石炭生産量を増やす量も日本の消費量に匹敵するぐらいの量を増やす決定をして、石炭の量を増やしていたことで、エレネジースポットの輸入量がめちゃくちゃ減りました。中国は20年ぶりに天然ガスの消費量が去年減ったということがあります。そういうことで、アジア向けに輸出されるはずだったエレネジーがヨーロッパに向かったことで、結果的にヨーロッパのガス供給が足りたということが言えると思います。その後、一番高かったのは8月末で、その後は相当下落しまして、現在は日本の調達価格と同じぐらいの水準まで戻っているということです。今、エレネジーの輸入でヨーロッパのガスが大丈夫だったというふうにお話ししたんですけれども、実はヨーロッパのガス供給が供給危機にならなかった最大の原因は、ヨーロッパのガスの消費量が減ったということが一番大きいです。こちらの図は、昨年の8月から11月にかけて、ヨーロッパのガスの消費量がおよそ20%程度減ったということを示しているものです。昨年破壊して止まったノルドストリームのガスの供給量というのは、ヨーロッパのガス需要の15%程度だということを考えますと、実はノルドストリームの停止分というのは、ガスの消費量が減った分よりも少ないんですね。なので、ノルドストリームの停止分というのは、ガス需要の消費の低下でほとんど説明できるということになります。この消費量の低下分というものの内訳を見てみますと、一番多いのがドイツの産業用になります。その次がイタリアの家庭用。その続いてスペインやフランスやオランダなどのガス消費の減少分があるということになります。というわけで、ガス需要の減少をほとんどがドイツの産業用とイタリアの家庭がある種、負担というか犠牲になって、ガスの供給が賄われているということになります。まとめますと、これは昨年の11月分だけを取り出した分なんですけれども、11月単月ですと前年比で27%ガスの消費量を減っているんですけれども、その減少分を、ロシアのパイプラインからの輸入を減った分というのがほとんど消費の減少で説明できるということになります。イタリアの特に低所得者層の家庭で暖房をつけられないというところが増える影響で、ヒートショックで亡くなる方の数の方が、ウクライナ戦争で亡くなる数よりも多いと言われるぐらい、結構大きな影響があるのではないかなというふうに思うんですが、いずれにしろ、昨年は今年の冬が越せるかというふうによく懸念されていたんですけれども、それは例年のガスの消費量を前提に置くと足りないということだったんですけれども、今の消費水準であれば大丈夫ということになります。ですので、これからが逆に問題で、ヨーロッパの経済が正常に戻ると足りなくなるというのがこれから待ち受ける現実ということになります。すでにガスの価格が下がってきていますので、ドイツの産業用の消費量というのが1月から増え始めているというデータもありまして、今年の夏から次の冬に向けてですね、欧州経済が立ち上がってくると再びガス不足の懸念というものが出てくるということで、依然として供給の中長期的な見通しは厳しいということが言えると思います。供給を代替したものの中心というのは基本的にLNGになるわけですけれども、ほとんどはアメリカのものでした。実は戦争が始まる前からアメリカのLNG輸出というのは増えていまして、現在の輸出量というのは実は戦争前の水準とあまり変わりません。つまりロシアのガスが止まったからアメリカのLNG輸出が増えたというのは実は統計上は間違えて、戦争前からずっと増えていたということがあります。もう一点は実はパイプラインのロシア産ガスは止まっているんですけれども、ロシア産のLNGガスというのは今もずっと輸入されておりまして、過去最高水準で継続しているという点も一つ申し述べておきます。これから石油の話をするんですけれども、実はロシアにとって天然ガスの輸出額というのはそれほど大きくありません。一番大きいのは石油になっておりまして、およそ半分近くですね。一般的にEUはロシアに対して厳しいエネルギー制裁をしているというふうにイメージがあるわけですけれども、実は本格的なエネルギー制裁が始まったのは昨年の12月5日からでして、石油を対象にした制裁がそこから始まっています。石油というのはロシアの輸出額の大半を占めておりますので、これは最大にしてある意味最後の経済制裁ということが言えるかもしれません。この12月から始まった制裁の中身というのが、主にEUによるものとG7と共同して行っているこの2つに分かれています。EUによる制裁というのは、EUがロシアから輸入する原油の90%程度の分を停止するというものが12月から始まりました。そして3日前ですか、2月5日から今度は石油製品の輸入の停止が始まりました。石油製品も実は先ほどの図にありますように、原油よりも輸入額としては大きいですので、石油製品の輸入というものがある意味最大の金融産品ということが言えると思います。それがまさに3日前に始まったという状態です。G7と共同して行っておりますのは、この12月からロシア産の石油を搭載したタンカーへの海上保険を禁止するという制裁があります。これによってEU以外に輸出される石油を止めようということなんですけれども、この石油タンカーの保険といいますのが、主にイギリスやノルウェーなど、西側の企業が95%くらいのシェアを持っているということから、この保険サービスを止めますと、事実上、ロシア産の石油を積んで保険をかけて運ぶということが非常に難しくなる、非常に厳しい制裁です。ところがですね、話がややこしいのは、ただしこの価格上限、この60ドルパーバレルという価格を下回っていれば、その限りではありませんという面上高がついておりまして、現在のロシア産の原油というのは50ドル程度ですので、つまりこの保険制裁というのはほぼ発動していないということになります。結果何が起きたかということなんですけれども、EU向けのロシアの石油が輸出できなくなった分ですね、ほとんどがアジア向けに輸出されるということがすでに起きています。この図はあるシンクタンクが制裁前に予想として作ったものなんですけれども、1月の統計を見る限り、おおむねそういったことになっています。その輸出先というのは主にインド、特にEU向けに輸出されていた原油の7割程度がインドに輸出されているというふうに言われています。またこの図では少し輸出量が減っているように表示されているんですけれども、1月の下旬の統計を見ますと、ロシアの原油輸出量は昨年の6月以来最高値となっていまして、必ずしも輸出量自体が減ったというわけではないということがわかります。先ほど申し上げたようにインドを中心に輸出量が増えていて、よく中国も増えていると言われるんですが、もともと高かったということもあって、中国はそれほど輸入量が増えていないと言われています。ただ最近は行き先不明のタンカーというものが非常に増えていまして、推測ではマレーシアなどを通じてマレーシア産として中国に輸入されている量が非常に多いというふうに考えられています。なぜならばマレーシアの石油生産量の倍以上の石油が中国に輸出されているという統計値になっているからです。従ってどこからか調達していなければ辻褄が合わないということがわかっています。もう一つはロシア産の原油価格の低下です。ご覧のように一般的な国際ベンチマーク価格よりもロシア産の原油価格がおよそ4割から5割ぐらい安く取引されています。ただし先ほどこれから少しご説明しますようにこの制裁を逃れる穴というものがたくさんございまして、一部当然この原油価格が下がった分ロシア経済に一定の打撃はあるというふうに思いますけれども、いろいろなルートで輸出する影のルートのようなものが最近横行しているというふうに言われまして、どこまで制裁の効果があるのかということは少し分かりにくいというのが現状です。こちらは戦争前の国際的な石油流通ルートを非常に単純化して示したもので、主に中東やロシアから世界中に輸出されているという図なんですけれども、この制裁が始まった後はロシアからヨーロッパ向けの輸出というものがなくなって、その分アジアや中東に原油が輸出される。アジアや中東に輸出されたものを処理して石油 製品にしたものが、そこからまたヨーロッパやアメリカに再輸出されるというような構図になっています。また石油製品は中南米やアフリカに輸出されているということで、これまでは北米から中南米に輸出されていたものが、今度はロシア産に変わるということで、中南米はロシアから石油製品を買うような、そんな時代になっていくというふうに考えられます。結果的に何が起きたかというと、比較的安い石油を中東やアジアや中南米の国々が購入し、相対的に高い石油をヨーロッパや日本も含めてですけれども、買うという形になっています。全体ですね、世界のエネルギーはロシアなしでは成立しないというふうに書いてますけれども、こちらは世界を5つの地域に分けて、中東、ロシア、ヨーロッパ、中国、その他、その他の中には日本とアメリカが含まれています。その地域間のエネルギーの輸出による量を表したもので、これの図で見ますと、世界というのは中東とロシアのエネルギーをヨーロッパと中国が輸入して、そしてその他に含まれる日本やアメリカも含めて石油以外は大体おおむね自給自足しているという構図がわかります。つまりロシア 抜きで世界のエネルギー供給というのは成り立ちません。したがって今やっていることというのは、ロシアからエネルギーを買っていい国とダメな国にリシャッフルしているということに過ぎないということが言えると思います。そして日本においては、中東は世界最大の石油生産地域ですけれども、国によって中東の位置づけというのは大きく変わります。アメリカやヨーロッパにとっては一部の調達先でしかなく、アシアは比較的多いですけれども、日本のように中東依存度が9割超えているような国というのは他に韓国と台湾ぐらいしかありません。石油危機後、日本のエネルギー政策にとって中東依存度の低減というのは最大の課題だったわけですけれども、石油危機後は中国やインドネシアなどの輸入を増やしていたんですけれども、両方の国は経済成長で輸入国になってしまったので、その後はロシアが最後の中東依存度を下げる調達先でした。クリミア侵攻後はロシアの輸入量を減らして、先ほどお話しあったように今おそらく98%程度まで依存度が高くなっているというふうに考えられます。今日述べたことを簡単にまとめたのがこちらになるわけですけれども、結果何が言えるかというとですね、ウクライナ戦争によってヨーロッパの経済とアジアのエ ネルギー消費国に非常に重い負担があって、その結果今のヨーロッパのガス供給が成り立っているということが言えます。2点目はロシア産の石油の輸入を継続する多くの国があり、その国々とロシアとの間で緩い結束が生まれつつあるということです。そして日本はロシア産のエネルギーという選択肢を失ったということが言えると思います。この失ったということは将来の東アジアの安全保障を鑑みますと、大陸制裁に積極的に参加するということは必然だったというふうに考えますが、そうだとしてもそれによって負う日本のエネルギー安全保障上の代償というものは非常に大きいというふうに考えられます。また、今今日は詳しく述べませんでしたけれども、これから中東情勢の混乱というものも十分考えられるということを考えますと、石油依存度そのものを下げる可能な限り、電化や石油代替物への切り替えを加速していくということが中長期的に必要だろうというふうに考えます。本日のお話は以上になります。ありがとうございました。
44:57
ありがとうございました。次に広瀬参考人にお願いいたします。
45:03
はい、広瀬でございます。本日お招きいただきまして誠にありがとうございます。私は主に旧ソ連の研究をしているという立場から、本日発言をさせていただきたいと思っております。皆さまご案内のとおり、既にロシアの戦争が始まって早い1年が経とうとしておりますけれども、長期化の要素を示しているところでございます。そういう中でヨーロッパなどで非常に議論されているのが、そもそもこのエネルギーが戦争の原因ではなかったのかという内容となっております。ロシアはここのところハイブリッド戦争というものを展開しておりまして、ハイブリッド戦争といいますのは、政治的目的を達成するために軍事的目標とそれ以外の様々な手段を組み合わせることによって、つまり正規戦と正規戦を組み合わせることによって、効果的に相手にダメージを与えるような戦略となりまして、2014年のロシアによるクリミア併合から注目されてきた戦法になってきますけれども、この議論というのは実はロシアでは90年代からなされておりまして、プーチン大統領のブ レンとも言われるアレキサンドル・ドゥーギンなどは、この90年代の段階からエネルギーを外交に利用すべきだということを強く信念していたということがございます。そういう中で、このハイブリッド戦争は非常に注目されているわけですが、今回はハイブリッド戦争の手段の中にこのエネルギーも入ってきたのではないかということが言われているわけです。このヨーロッパで展開されている議論をご紹介しますと、そもそもヨーロッパでは日本よりも先んじて脱炭素の傾向というのがございました。そのような状況の中で、ヨーロッパは一番の顧客としてエネルギーを売って、それによって経済的に売ろうっていたわけですけれども、ヨーロッパにエネルギーが売れなくなることを見据えて、それでクライナーの侵攻したのではないかというのがヨーロッパの研究者の主張となります。というのは、そもそも2018年ぐらいからロシアは今後エネルギーが売れなくなるという可能性を見据えて、水素、アンモニアなどへの転換を図ろうとしていたわけなんですけれども、うまくいっていないというような実情がございました。そして実はウクライナにはシェールガスがあると言われておりまして、これがまさに今激戦地となっているウクライナ東部の周辺であるわけです。この時に、あっという間に2014年のクリミア併合が起きた時にこの話がかなり出まして、ウクライナ のシェールガスによる発展を妨害したかったというのは、実はアメリカのシェルなどがこのウクライナのシェールガスに目をつけていて、2014年よりちょっと前に開発をするという可能性が非常に高まっていたんですけれども、ロシアが2014年にクリミアを併合し、また東部の混乱を起こしてからシェルが撤退しているという事実があるわけです。ですので、そういうウクライナがガスで成功することを妨害するために、2014年の混乱も起こしたのではないかというような議論もあります。しかし、今回の戦争でロシアがエネルギーを既に武器に使っているというのは、ご案内のとおりではございますけれども、実はそれは初めてのことでありまして、今まではロシアはエネルギーを輸出する上では非常に有料な国であるというふうに認識されておりました。ただちょっと誤解されるのが、2006年、2008年から2009年にかけてと2014年にかけてのロシアウクライナガス戦争というものなんですけれども、ウクライナロシアガス戦争というのは、そもそもウクライナを経由してロシアがヨーロッパに輸出するというのが一番メジャーなルートだったわけです。しかし、今申しました3回の契機にですね、ウクライナがロシアにエネルギーの未払いをしていたということがございました。というのは、ロシアからヨーロッパにエネルギーを輸出する際に、ウクライナを経由するわけですけれども、ウクライナがまず自分の取り分を取って、そこからヨーロッパに流すというようなことをやるわけなんですが、ウクライナが未払いだったために、ロシアはウクライナ分を差し引いた分量を輸出したんですけれども、ウクライナがその分を、自国分を取ってしまったために、ヨーロッパに輸出される分量というのがものすごく減ってしまったということがございまして、それを機にロシアもヨーロッパも共にウクライナを迂回するルートを作ろうということで、できたのがこのバルカンストリームというもの、そしてトルコストリーム、そしてノルドストリーム1,2ということで、2が稼働しなかったのは、もうすでに大童先生からお話があったところでございますけれども、そのような形でそもそも混乱はあったわけですが、ただその際はロシアはエネルギーを武器にということは一応なかったわけです。しかし結果的にエネルギーの価格が非常に高騰しまして、特にヨーロッパの電気代の高騰は非常に高いものがございます。エストニアノルドでは電気代が以前の10倍にもなってしまっているということがありまして、そのような電気代の高さがヨーロッパのウクライナ図下礼というものを加速しているということもございます。こちらを見ていただけると分かりますように、特にドイツ、イタリアあたりがロシアへの依存度が非常に高かったということがございます。ロシアへの依存というのは、石油、天然ガスだけではなく、実は原子力についてもかなりロシアに対して依存がありました。こちらの地図で書かれておりますのが、ロシアに原子力発電を依存している国となっておりますけれども、実はこの振興が起きてから多くの国がこのロシアの原発をやめているということがございまして、現在引き続き使っているのがハンガリーとトルコだけということになります。このハンガリーもトルコもですね、実は制裁には非常に及び腰な国で、ハンガリーはEUなどの中でもちょっと混乱分子となっていて、制裁の足並みを非常に乱している国となりますし、トルコも今回の戦争においては非常に特殊なパフォーマンスを示している国ではございますけれども、他の国はロシアからの撤退ということをやっております。ちなみに10月にフィンランドに行きました際に、この原発担当者に話を聞きましたけれども、非有効国に特に原子力という恐ろしいものを頼ることは全くできないんだという説明を受けております。そしてウクライナ進行開始後の動きについて若干確認をしておきたいんですけれども、今回の進行後、欧米の大露精査はエネルギー部門にも及びまして、最初は石炭、石油というところから天然ガスにまで入ってまいりました。特にロシアにとって天然ガスの制裁はいたでなはずですけれども、ロシアは自らガス供給を夏場から減らし、9月にはノルドスリム1、2を爆破するという展開になりました。確かに先ほど大葉参考人がおっしゃったように、犯人についてはまだはっきりとした答えは出ていないんですけれども、地域研究者の間では、状況、証拠的にロシアに間違いないだろうというような見解が一応強く持たれてはおります。そして、そういう中でエネルギー価格が高騰しまして、ロシアはヨーロッパへのエネルギーを売らなくなった分、中国、インド、トルコなどに安くエネルギーを売るというような展開になってきました。中国は2割増し、インドについては5倍となっておりまして、それらの国が他の国に転売するということも起きていますし、また、背取りによってヨーロッパに売られるということも実際に起きているようです。そのために、ロシアのエネルギ ー収入というのは、実際、改善前よりも上昇しているということがございますけれども、昨年12月に原油の価格上限設定が行われ、また、船舶戦争保険の停止や値上げということが行われまして、ロシアのエネルギーによる利益というのも、先防する可能性が非常に高いのではないかということが言われております。ヨーロッパは今回のことを受けまして、一時、脱炭素政策では逆行をししまして、石炭発電が今すごく増えておりますけれども、これは一時的な措置だということで、再生可能エネルギーへのシフトを早める傾向が見られるだろうということが予測されています。そういう中で、ロシアの制裁が効いているのかどうかという問題が非常に頻繁になされるわけですけれども、確かにロシアのエネルギー収入というのは、戦争前より多くなっているんですけれども、先ほど申しましたように、今後先、細ってくる可能性はあると。また、ロシアは制裁によって、いろいろな自分の通商のスタイルを変えることによって、なんとか生き延びようとしています。もちろん、自国で今まで輸入してきたものを賄うという方向転換というのはあるんですけれども、