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ただいまから、外交安全保障に関する調査会を開会します。委員の異動についてご報告いたします。昨日までに、後省春智君が委員を辞任され、その補欠として山下雄平君が占任されました。外交安全保障に関する調査を議題といたします。本日は、21世紀の戦争と平和と解決力、新国際秩序構築のうち、「軍縮不拡散①」「NPT、CTBT、FMCT、INF、新スタート」について、3名の参考人からご意見をお伺いした後、質疑を行います。ご出席いただいております参考人は、内閣府原子力委員会委員長代理、元軍縮会議日本政府代表部特命全権大使佐野俊夫君、工益財団法人日本国際問題研究所軍縮科学技術センター所長戸崎弘文君、及び、長崎大学核兵器排泄研究センター副センター長教授鈴木達次郎君でございます。この際、参考人の皆様に一言ご挨拶申し上げます。本日はご多忙のところご出席いただき誠にありがとうございます。
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皆様から忌憚のないご意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。次に、議事の進め方について申し上げます。まず佐野参考人、戸崎参考人、鈴木参考人の順にお一人20分程度でご意見をお述べいただき、その後、午後4時頃までをめどに質疑を行いますので、ご協力をよろしくお願いいたします。また発言の際は挙手をしていただき、その都度会長の許可を得ることとなっておりますので、ご承知をお聞きください。なお発言は着席のままで結構でございます。それではまず、佐野参考人からお願いいたします。紹介していただきました佐野でございます。本日いただきましたお題目は、NPT、CTVT、FMCT、INF、新スタートなど2国間、多国間をはじめ、多様な枠組 みで進められている核軍縮、核不拡散の現状、成果、課題及び核軍縮不拡散の推進に向けた意見提言ということで、先生方には釈迦に説法になってしまうかもわかりませんが、一応確認でいいもんを含めてお話しさせていただきたいと思います。なお本日の意見の陳述は、私の今の副職である内閣府原子力委員、あるいはいかなる組織の意見を代表したものでございます。私の個人の見解でございます。ご承知をお聞きください。まず、多様な枠組みの現状で、このレジュメを用意いたしましたけれども、これを丁寧に説明していただきますと、40分かかるということがわかっていますので、若干省略しながら、要点のみをお話ししたいと思います。NPT、核不拡散条約でございますけれども、70年に発行して、今年52年、3年ですか、191か国が加盟している、戦後の核秩序の根幹をなすものであって、国際安全保障の組織であるという認識でございます。5か国のみに核保有を認めている、いわば不平等条約です。これは1967年1月以前に核実験をした5か国ですね。これに核保有を認めて。当時、1960年代の課題は、核兵器をいかに拡散しないかということであったわけで、この拡散を望まない米蘇により指導された、主権平等を犠牲にした条約であって、当時の知恵であったというふうに私は考えております。その後、西独、そして日本が入ることによって、当時の国際政治における、敗戦国の主な国ですね、西独、日本が入ることによって、一定の目的を達成した条約であると思います。ただ、不平等なんですが、その条約の中にグランドバーゲン、大きな取引と書きましたけれども、つまり将来にわたってこの不平等性を解消していこうと、つまり核兵器国が核を排列していく方向のベクトルを明記しており、これは6条、有名な6条でございますけれども、同時に非核兵器国の原子力の平和利用、この権利を認めていこうと、こういう条約でございました。25年経った95年、これが重要な年なんですけれども、無期限の延長に国際社会が合意しました。つまり不平等性が断されたわけですね。ただ、その見返りに非核兵器国が得たものがある。それは、その下の太字で書いてありますが、CTBT、放火素的核実験禁止条約、これの早期採択、これはもう交渉がうちうち続いていたわけですが、2番目にFMCT、兵器用核分裂性物質の生産禁止条約、3番目に、一番最後の行、中東の非大量破壊兵器地帯の実現。次のページの一番上ですが、消極的安全保障。大体この4つぐらいが、非核兵器国が無期限延長の代わりに勝ち取ったといいますか、そういう項目でございます。まずCTBTからいきますと、これは端的に申し上げますと、地下核実験を禁止したものです。地下核実験を禁止することによって、以前からあった部分的核実験禁止条約、つまり海中、大気圏、宇宙も入れて、全ての場所における核実験を禁止しております。ただ問題は、発行要件が資金が高かったわけですね。そこに書いてあります8カ国が現在も締結しておりません。米中、インド、パキスタン、エジプト、イスラエリア、イラン、北朝鮮、これ8カ国です。署名数は185と非常に多いんですけれども、遺伝数は発行していないと。現状がこういうことですが、問題としては、やはり国際政治の現実から見て、この8カ国が批准してくるのは非常に難しい。つまり米はご存知のように共和党と民主党の立場が違います。上院で3分の1を取らなければ批准できません。中国はアメリカを見ている。インドは中国を見ている。パキスタンはインドを見ている。それからエジプト、イスラエリアは相互に見合っているわけですね。イランもイスラエリアを見ている。北朝鮮はご存知のような開発をしてしまっている。この8カ国が批准して、CDPTが発行するというのは非常に難しいと思います。ただ、2カ国を除いて、今 この国際社会の中に核実験ができるか、国際的な世論に向してできるか。私はできないと、2カ国というのはロシアと北朝鮮のことを言っているんですが、この国以外に核実験ができないという規範が各国の指導者の中にあると思います。そういう意味では、CDPTの8割方の条約の精神というものは尊重されていると言えると思います。これを発行するために、例えばもう一度外交関与を招集するとか、あるいは条約の暫定適用という手はあるかもわかりませんけれども、どうしても同じです。この8カ国が入ってこないわけですから、つまり国際政治の問題であって、条約を発行させる云々というのは二次的な問題ではないかと考えております。FMCT、これは平均用核分裂裂物質生産禁止条約です。端的に申し上げますと、核兵器の原料となる高濃縮ウランとプルトニウムの生産を禁止しておこうという、ある意味では画期的な条約ですね。これができましたら、ある意味では核軍縮核廃絶の道が大きく開かれるという条約ですけれども、これが残念ながらジュネーブの軍縮簡易において、20数年にわたって交渉がなされてきませんでした。その理由は、本でベースで言うと、このFMCTを望まない国があるということだと思いますが、表面的には他のイ シューにプライオリティがあるということで、例えば宇宙の問題とか、と言うわけですが、たまたまこのジュネーブの軍縮簡易はコンセンサスがルールですから、一攫でも反対すると交渉が始まりません。そういう状況がずるずると、今日まで及んでおります。ですから成果が出ていないということです。課題は3隻です。ただ、条約の草案を作っている国もあるし、それから条約が始まった場合に即交渉が開始できるように、さまざまな準備がなされてきている日本政府も、相当努力をしてきております。この軍縮簡易のルールを、コンセンサスルールを変えるのはどうかというのは、よく議論されますけれども、それも一つの方法かと思われます。中東の非大量破壊地帯。大量破壊兵器といっても特に非核地帯を作ろうと。その心はイスラエルの核を放棄させようということですね。当時、アラブ諸国が無期限調に合意したのは、もしイスラエルの核が放棄されれば非常に望ましい状況ができるという、いわば冷戦後のユーフォーリアの中にいたんだと思いますけれども、ただこれも全く進展しておりません。いろんな会議を開いておりますけれども、まさに会議は踊るで、実際は全く進展しておりません。現実世界に目をやりますと、かなり難しいですよね。今の中東和平の状況を見て、イスラエルが核を手放すか。つまりイスラエルは、自分たちは中東における最初の核兵器国になりませんという形で曖昧政策を取っているわけですが、ほとんどのアラブ諸国は持っていると思っているわけですから、この実現は見通しは困難である。4番目に消極的安全保障ですけれども、これは実はNPTが無事件延長される前のアンポリノ984によって合核兵器国が共有したもの。つまり核兵器国は非核兵器国に対して核の使用及び核の威嚇をしないという約束をしたものですが、これは皆さんすでにご存知のように、クリミア併合、あるいは今回のイクライナ侵略時におけるロシアの態度を見ても明らかに違反されている。したがってこれは宣言なんですね。条約でもなければ、公的公正力のある文書ではありません。これを条約にするかという動きはあります。ただ、核兵器国がどれだけ条をするかということだと思います。この4項目を今から見ると必ずしも現実的とは考えられないような約束の見返りとして、無期限の延長をしたというのが現実であります。それ以降のNPTの動きを見てみますと、注目されるのは2000年の運用検討会議ですが、これで全面的核廃絶の明確な約束というのを核兵国がしております。そのための、実現するための13の具体的な措置についても約束しております。これは2010年の最終文書でも引き継がれ、これが最後のNPTの合意になっているわけです。昨年行われました2020年、22年の最終文書は、ロシア一カ国の反対によって保護にされました。現代の状況ですが、やっぱりNPTの運用検討会議で合意文書ができないという状況で、NPTに対する求信力が弱まっているということが言えると思います。対立が表面化している、つまり非核兵国対核兵国、ロシア対加盟国、米英仏対ロチュ、核兵器禁止条約派と核兵国、あるいは同盟国、こういった対立が明確になってきております。特に核兵国間の対立、米中の対立が今後のNPTのマネジメントに深刻な影響を与えると思います。今までは、四式に次ぎ八式に次ぎ、5カ国が固まって合意形成に参加していたわけですが、今後、身のある合意は困難だと言わざるを得ない。しかしながら、NPT運用検討会議の失敗、NPTの求信力が失われているということに過度に悲観的になる必要はないと私は考えております。なぜならば、実際の核兵器の削減というのは、米ソあるいは米ロの二国間、そしてAF2の一方的な宣言で行われてきていたわけで、NPTの合意によって削減されてきたわけではないんですね。したがって、今後何よりも重要なのは国際安全保障環境の改善ですけれども、大国間競争の中でも、同時並行的に米ロのスタートに加えて中国を交渉に参加させる。あるいは米中でもいいと思うんですけれども、そういった軍備管理交渉を始めることが重要だと思います。次に、INFですけれども、これは皆様ご存知のように、79年の核戦争の危機の後、NATOが二重決定をした、つまり当時のソ連が中距離核戦力、SS-20が主ですが、配備するのに対してNATO側は、同時にPASSING-2という中距離を配備する決定をして、同時に交渉をしましょうと、つまり抑止と同時に交渉をしましょうと、そういう 結果できた条約です。発行が遅れるわけですけれども、これはA-2のミサイルを入れるかどうかということで遅れてきたんですが、結局発行して米ロともこれを全敗します。それを2019年にトランプ政権が破棄したわけですね。これは後に述べますけれども、この30年の間に米ロが手を縛られている間に、その他の国、特に中国がミサイル開発に乗り出してきたというのに対して取った、私は有断だと思いますが、現在は破棄の状態にあります。次に新スタートですけれども、米ロ、先ほど申し上げましたように、米ソウ米ロはこのスタート条約を中心に核兵器を削減してきたわけですね。オージは7万発ありました。現在はだいたい1万2000から1万3000発、総数がなっていますが、このスタートで合意しているのは、展開されている戦略核のみなんですね。1550発。これはおおむね両方とも約束を守っています。というのは、しっかりした検証機能を持っている、衛星あるいは現地査察、それによって約束は守られている。他方、最近の動きとして、ウクライナ戦争の影響を受けて、ロシアが二国間の査察を拒否しているとか、あるいは、ラプコフの発言とか、いろいろございますけれども、いずれに せよ条約は生きております。これ、2026年までです。この問題は、この2026年に期限が来るわけですが、これをどうするかという問題ですね。一番いいのは、新スタート条約に中国を加えて、かつ交渉対象を戦略核のみならず、戦術核も含めた全ての核兵器、これはアメリカが提案していたのですが、そういう土俵ができればよろしいわけですけれども、ヨーロッパ正面において圧倒的に戦術核に優位立っているロシアが、戦術核を交渉のまな板に乗せるというのは、なかなか考えにくい。そうすると、少なくとも、私が思うに、単純延長でもいいから、2026年から、もちろん5年間延長してほしい。そのための交渉をアメリカは始めるべきだというふうに思っております。その次の核兵器禁止条約と核セキュリティについては、ここでは省略しておきます。後ほどの議論で出てくると思います。次に核運輸区、核不拡散の推進に向けた意見提言ですけれども、国際情勢は、冷戦後の国際協調の時代は遥か遠くに遠のいてしまって、現在は大国間競争の時代、抑止の時代に入っている、軍閣の時代に入っていると思います。しかし、少なくともこのスタート条約の単純延長でもいいから、やってほしいというふうに考えております。合意できなかったNPTの最終文書の実はパラグラフ17というのがあって、ここでは両国とも後継条約に実質的に合意しているわけですね。そういう実施はあった。それから、何よりも重要なのは、中国を軍備管理交渉に参加させることが重要である。当時、NATOが79年に二重決定しましたけれども、それと同じように抑止力を強化すると、同時並行的に軍備管理交渉の、準備交渉でもいいから始めていくと。交渉を始めて同じテーブルに着く限り、相互の共有認識を把握せざるを得ないし、遮蔽心の解消にもなるし、信頼情勢機能を持つわけですね。じゃあ、中国が果たして乗ってくるかという大きな疑問があるわけですが、私は中国が関心を持つ分野、主にソフトな分野だと思います。NASAにあるアルテミス合意というのがありますけれども、宇宙の平和利用とか、宇宙の資源の利用とか、あるいはスペースデブリーの対策。現代、18カ国ぐらいが参加して、ウクライナも実は入っているんですが、そういった宇宙の平和利用、ソフトの面から始めていくことも一方じゃないか。