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ただいまから、外交安全保障に関する調査会を開会いたします。外交安全保障に関する調査を議題といたします。本日は、21世紀の戦争と平和と解決力、新国際秩序構築のうち、持続的な防衛基盤整備の在り方について、3名の参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。御出席いただいております参考人は、前内閣官房国家安全保障局国家安全保障参与、元マレーシア駐冊特命全権大使宮川真紀夫君、卓色大学顧問森本聡君、公益財団法人未来工学研究所研究参与西山淳一君でございます。この際、参考人の皆様に一言御挨拶申し上げます。本日は、御多忙のところ御出席いただき誠にありがとうございます。皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考に致したいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。次に議事の進め方について申し上げます。まず宮川参考人、森本参考人、西山参考人の順にお一人、20分程度で御意見をお述べいただき、その後2時間程度質疑を行いますので、御協力よろしくお願いいたします。また御発言の際は、挙手をしていただき、その都度会長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。なお御発言は着席のままで結構でございます。それではまず宮川参考人からお願いいたします。
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どうもありがとうございます。21世紀の戦争と平和と解決力、大変大きな重いテーマの下で、本日は「持続的な防衛基盤整備の在り方について」というテーマでお話申し上げます。そもそもなぜ外交官が防衛基盤だとか防衛装備だとかというテーマについて加わることになったのか、そんな議論に加わることになったのかというあたりのところから、少し御説明申し上げたいと思いますが、世界は今、新しい時代に入りつつある。新しい戦略的な環境の中で日本の防衛基盤の整備が非常に重要だというところ、ここからお話申し上げたいと思います。3ページのところからお話申し上げますが、世界は今、戦後第3の時代に入りました。第1の時代はご存知のとおり米荘冷戦の時代。第2の時代はそれが終わった後、ベルリンの壁が崩壊してそれが終わった後、グローバル協力の時代。この時代には企業の方々もどこに行ってもいい。世界は自由だ。そういう資源のあるところ、人件費の安いところへ行って大いに活動された。しかし新しい時代はまた難しい時代、対立の時代に向かっているということだと思います。アメリカの戦略的な方向転換は、そこに書きましたように、2016年あるいは17年の頃から、中国の危険性を認識したアメリカ政府、戦略的な基本方針を転換して、米中の貿易戦争が最初の一歩となりました。しかし世界の対中国、中国に対する経済的な依然度は依然として高いので、米荘冷戦の深刻な対立のような時代にはならないのではないかという観測もありましたが、しかし昨年のロシアのウクライナ侵略があり、中国がロシアを支援し、新しい対立の時代、これは決定付けられた。ご存知のとおり、もはやグローバル協力の時代に戻ることはないだろう。4ページに、新たな対立の時代の特徴は何かというところなんですが、冷戦で終わるのか、あるいは熱戦に発展するのか、まだ予想がつかないということが第一。第二は対立の主軸は米荘じゃない米中で、アメリカにとってアフガンの戦争もウクライナの戦争でさえ、二次的な意味しかない中国のことが第一。第三に米荘の冷戦期の対立のメインシアターは欧州でありましたけれども、新しい対立のフロントラインは欧州じゃなくここです。東アジアであり、極東であり、西太平洋。その米荘の対立の時代、第四に、東西の貿易はもともと規剥でありましたけれども、新しい対立の時代、中国も含めて、随分経済的な総合依存度は高まってきていますけれども、経済制裁がどんど ん長期化するにしたがって、おそらく分断が進化して進んでいって、経済対立も深まっていくんだろうと思われます。戦略空間はすでに陸海空だけではなく、宇宙に広がっているし、この電子空間の中に忍び込んでいる。防衛装備も軍事技術もデュアルユースが主流で、そういう意味で軍事と商業を分けることができなくなってきている。安全保障にそれだけに官民の連携が必要な時代が来ている。無人の兵器が前線で対峙すると、人と人が対峙すれば、その戦闘に入るかどうかに躊躇しますけれど、機械は躊躇しないので、戦時と兵時の仕切りがすぐに曖昧になる。防衛と攻撃の区別も不明瞭になる。戦首防衛という言葉もそのうち意味をなさなくなる時代が来るだろうと思います。ハイブリッド戦争という言葉がよく言われますが、あらゆる国家の活動や資産、それが経済であれ技術であれ法律であれ何であれ、攻撃や防御の道具になって、輸送網や電力網、土地、データ、こんなものすべてが、戦争の対象になってくる。こういう時代が今来ているということです。次の5ページにウクライナの戦争の教訓ですけれど、これは前回のこちらの調査会でもお話になっておられたと聞きますが、アンポリの常任理事国が重大な国際法違反を行って平和を破壊している。国連を含めた国際機関にはこれを制止する制度的な能力がない。そういうことが実証された。中国とロシア、双方アンポリ常任理事国ですが、この両国が天井のない協力をする。中国は一方的に現状変更の意図を隠さなくなっている。我が国はそういう意味で、安全保障の力量を拡大強化する必要に迫られているということだと思います。自衛の能力を拡大するためには、先ほど言いましたようにハイブリッド戦争が起こる可能性があることを想定すると、さまざまな国力、経済であれ技術であれサイバーであれの強化が必要で、同時に国際機関が機能しないとなれば、個別的あるいは集団的な自衛の能力を強化する必要がある。同時国との連携が必要だ。自ら戦う意志と能力を実践してこそ、これがウクライナ戦争の非常に重い教訓ですけれど、ウクライナはあのようにして自ら戦っている。その戦いをしているからこそUFOはさまざまな支援をしてくれる。経済であれ軍事であれ外交であれ。自ら戦わない国や国民の面倒などなかなか見てくれない。これがウクライナ戦争の重い教訓だと思います。次のページの6ページにバランスオブパワーの話をちょっと書きました。これは19世紀のこの欧州で広まった平和構築のシステムですが、諸国が総意として合意した安全保障の体制ではありません。平和構築というよりも、相手を凌駕しようとして合掌連行して、各々の行動の結果から得られた、いわば偶然の平和といいますか、結構は連的な平和なんですけれど、しかしこのモデル、第一次大戦で欠陥が露呈した結果、国際連盟を含めた集団安全保障体制に発展していくわけです。しかしその期待に反して、多くの人々の期待に反して、集団的安全保障体制は機能不全になっていて、特に昨今そのように思われる。そこでまたバランスオブパワーの雇用が改めて考えられている。このバランスオブパワーをつくっていくためには、自らの努力が必要である。おぼつかない原則に依存するより、これは現実的で実践的で一定の力学の作用がある。こういう意味で、これもまた一つの平和を守るための、つまりシステムとして認識していく必要があるのではないかと思われます。高坂正隆先生という方がいらっしゃいましたが、1990年代の最初の頃、よく議論をさせていただきました。「冷戦後の世界についてどうですか」というよりは、宮川さん決して落下してはいけないぞと言っておられたのを懐かしく回答します。もう一つここに書きましたX論文というのはご存知のとおり、ジョージ・ケナンというアメリカの外交官であり、学者さんが最初の米ソの冷戦が始まった年に、フォーリン・アフェアーズに匿名で書いた論文です。この論文で彼はソ連との冷戦に対して、何をしないといけないのか3つだと。一つは相手の意図を楽観してはいかん。意図というのはよく言われます。脅威は意図とそれから実力との関である。意図はなかなか見えない。だけどその見えない意 図を楽観してはいけないぞと。第一に。第二に。焦らずに腰を据えて対峙をし続ける必要がある。長期戦だと。これからの新しい対立の時代もおそらく長期戦でしょう。そしてデモクラシーの強みをちゃんと明かし続ける必要がある。共産主義は特に、資本主義は必ず腐敗すると言いますけど、そうじゃないんだということをよく認識していく必要がある。こういうことを言った。これがおそらくこれからの新しい対立の時代に向けての我々の決意なり、確信であるべきだろうと思います。その7ページに、実は昨年の末に防衛3文書というのが出ました。この出ました防衛3原則に非常にきちっといろんなことが書かれています。特に国家安全保障戦略には、戦略環境に関する評価、それから我が国の政策目標はどうであるべきかというのが書いてあります。戦略環境は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境であるという認識。我が国の周辺では軍備増強が急速に進展しているという認識。これらのことが書いてある。そ してそれに対する我が国の政策目標ですけど、ここはなかなか厳しいことが書いてありまして、主権と独立、それから外交や国内の政策を実施的に決定できる国であり続ける。さらには有事の発生を抑止、脅威が及ぶ場合にこれを排除する。さらにもう一つ経済が成長できる国際環境を主体的に確保する。こういうことがこの文書に書かれていて、これがこれからの我が国の政策になっていくということなんです。ただこれをどうやって実現するかということがおそらく問題でしょう。もう一つ、3文書の2つ目の国家防衛戦略には、ここに書きましたとおり、様々な評価と政策目標をさらに具体的に明記されています。全部読むと時間がないので、例えば3番目のところ、我が国に対する振興には、我が国が主たる責任を持って対処する。我が国自身の防衛力を抜本的に強化する。第4のところに、自国での装備品の開発、生産、調達を安定的に確保する。新しい戦いに必要な力強く持続可能な防衛産業の構築をする。先端技術の防衛装備品への取り組みをする。販路の拡大もする。さらに防衛装備移転産原則とその運用指針をはじめとする諸制度を見直す。装備品の移転の促進のための基金も創設する。こういうことが書いてあります。こういうことが本当に実現するかどうか、これはこれからの政府のおそらく役割だろうと思います。次のページに行きますと、ハイブリッド戦争についてちょっと書いておきました。ハイブリッド戦争というのは、先ほど申しましたように、国家の様々な活動をすべて平気化していこうという、そういう試みです。20年ほど前に中国の軍人が朝鮮戦という言葉で提唱したものと同じでありますが、中国は特にゲリラ戦、毛沢東のゲリラ戦もそうでした。民間人と軍人との間に差別をつけないようにして、分からないようにして攻撃をしたりしてくる。これがおそらく強いんだろうということ、それをこの新しい時代においても実行しようとしているんだろうと思います。そういう意味では経済も技術も法律だって、宣伝だって、真理だって、あらゆるものをこの攻撃防御の道具にしてこようとしている。これがハイブリッド戦。次のページに行っていただきますと、そういう意味でこの経済技術戦と言いますか、経済力そのものも国家の安全保障の大きな力になる。この様々な活動、経済活動、市場を使うこと、戦略的な重要産業を起こすこと、基幹インフラを強靭化すること、これら全部防衛基盤です。防衛基盤の中にカテゴライズされるべきものだと思います。投資であれ技術者に対する支援であれ、あるいはまた情報を管理することであれ、その一番最後に防衛装備及び技術開発を強化すること、これらを潤沢な予算におかくをしてこれを強化すること、これもいわば経済安全保障と言いますか、ハイブリッド戦の一部、そういう意味で今日の本題であります防衛装備を強化することも、このハイブリッド戦に備えることの一つだという、そういうことだと思います。次のページに行きますと、防衛装備の国産化というのがなぜ重要であるかということについて言及しておきました。2つ私はここで挙げております。第一に防衛装備品の技術を国内で開発生産するというこの能力を喪失すると、他国 から干渉や制約を受ける、自衛力が危うくなる、そういう意味で国家安全保障の根幹だ、これはもう皆さんご承知のとおりだと思います。第二に日本には国営の武器製造工場がありませんので、そういう日本では装備品の生産は民間企業に全面的に依存している。そういう意味で大手の企業が縮小撤退すれば、中小の企業はもう生死の問題が起こって、熟練工や技術者は離散していって問題国に引き抜かれている。こういう状況があるので、これをぜひ直していかないといけないということだと思います。コロナの時にサプライチェーンが断絶して、えらい困ったということがありました。装備品の問題でサプライチェーンが断絶すると、それは国家の防衛に危険を生じさせる。戦略物資や防衛装備の生産基盤を国内に確保し、ものづくりができるような中小企業群を国内に確保することが大事。第4に、装備品の開発生産というのは、やはり研究開発基盤が大事。生産ラインの確保にしても、技術者の要請にしても、危機が迫ってからでは遅い、早急な体制づくりが必要だと思います。次のページに5つ目書きましたが、先ほどもちょっと申しましたが、軍民の協会が規剥になっているということなので、防衛のために官民の連携が不可欠な時代が来ている。6つ目に、これからは一国で防衛するだけではなく、UFOと協力して防衛しないといけないという、そういう環境の中では、同盟国やUFOへの装備品の提供、これは防衛協力の非常に有効な手段でありまして、信頼される防衛協力の相手とみなせてもらうためにも重要な能力だろうと思います。外交上も有効なカードであります。我々もそういう意味で、外務省もこの問題に非常に強い関心を持っています。次の12のページに、10年前に、先ほど3文書のお話ししましたが、10年前も同じような政府の3文書ができているわけです。しかし、その中で国家安全保障戦略もあり、防衛計画の対抗もあり、さらには防衛生産の技術基盤戦略もあったんですけれど、そこにもたくさん書いてあります。書いてあるんですけれど、しかし実際には過去10年、むしろ状況は悪化していて、政府は防衛装備の国産化の方針を放棄したし、調達に一般競争入札を導入したし、コープレットガバナンスコードは、ますます防衛装備を生産する企業にとっては首を絞めているし、予算は決して増えていなかった。これが過去10年であります。こういうところから、どのようにすればこれから防衛装備の生産活動を活発化していくことができるのか、これがテーマであります。次の13ページから7つの項目を挙げて、防衛装備技術の国産開発が進展しない理由とその対策について述べています。あと2分しかないので、ちょっと急いでまいりますが、第1に、装備品に対する研究開発費が非常に低い。韓国の1/4であります。言うまでもなく、技術開発が遅れると装備品のレベルも低くなる。中国やロシアや北朝鮮の動きを考えると、我が国はできるだけ早くこれに対処しないと水をあけられてしまう。今年度の予算増で3割増しにしていただきましたが、しかしなお低いです。研究開発費2000億円強。韓国はすでに5000億円のレベルです。第2に、この技術のレベル、これは装備品の問題、生産の技術を高めることができないだけではなくて、民間の装備品以外でも技術レベルが下がってきている。開発力が低下しているという問題があります。先端技術はもう世界競争の時代に入っていて、日本の民生技術開発速度は落ちて、世界の技術上にずんどん下げていて、電子通信産業はハードウェア技術を放棄している。材料や電子デバイスの技術も低下している。こういったことになっている。しかし、政府が防衛生産技術基盤を強化すれば、成果は民生技術に転用されていく、デュアルユースですから、産業技術力を牽引して、それが産業全般への波及効果もある。企業の支援をすれば、研究開発が改善して加速する産業政策、そういう意味で、産業政策を加速する必要があるのではないか。アメリカの国防総省のDARPAのことは、皆さんもご存じのとおりですから申し上げませんが、我が国にも類似の組織が有用で、大学の工学部系の研究を国家安全保障に活用できるように、総合科学技術イノベーション会議に安全保障分野を拡大するとか、産科学の協力活動を可能にすると、整備をいろいろ進めていただきたいと思います。第3に、先ほどちょっと申しましたが、日本は数年前に装備品の国産化の方針を放棄しました。同時に競争政策の原理を防衛装備品の調達に適用しております。この結果、何が起こっているか。実はWTOでもOECDでも、安全保障というのはルールの例外なんです。そういうわけで、欧米諸国はこの例外を最大限に活用していますが、日本はその数制に逆をしているということなんです。技術、日本の企業は防衛産業を輸出ができない、そういう意味で市場が狭い、よってコストが高い。外国企業は海外への移転は自由、そういう意味で市場は広い、コストがだから下げられる。その2つを日本の装備品の市場で自由競争させると結果は明らかで、これを続けていくと、日本の防衛産業は必ず開発機会を失って技術的蓄積ができなくなって、最後には自ら産業基盤を弱体化させてしまう。この問題があります。これが3つ。4つ目、官民の協力体制が重要 だということは、先ほど申しました。ところが、この16ページの②のところに書きましたが、原価観察期契約というのがあってですね、これは実際に作って、企業が作られて、コストがどんどん下げられて、企業努力で、要は収入が増えた場合には、増えた部分は、もともと決められている利益率から超えた部分を国に返還しなさい、ということになっているのに、逆にコストが増加して損が出た場合は、それは企業で勝手に負担しろと。こういう制度がある。それは、責任の企業、民間企業の不満を誘発して、官民協力の意欲を著しく沿いでいるというふうに思います。こういったものに加えてですね、一般競争入札が広まると、ガバナンスが強化されて、民間の技術者さんは、官の技術者さんに会えない。民間の技術者さんはどんな防衛装備を作ってもらいたいのか、官から聞きたいんですけど、これは聞けない。官の人たちは、民間企業にどんな装備があるのかわからないから、お互いに手探り状態になって、どんどん縮小していくという、こういう問題があります。あと2つ、3つなので、ちょっとやらせてください。はい、じゃあここで終わりにしましょうか。はい、はい。いいですか。どうぞおまとめください。あと3つ。日本の企業自体が実質的に少なくなっている。第4に、アメリカからの完 成品ユニ、FMSですけど、これが多くて予算を圧迫している。第7に、装備品の輸出がなかなかできない。以上でございます。どうもありがとうございました。ありがとうございました。
28:39
それでは次に森本参考人にお願いいたします。森本参考人。
28:46
本日、参考人として、所見を述べる機会が与えられたことについて、お礼を申し上げたいと思います。宮川大使の方から非常にフォーカス的なご説明をいただいて、だいたい私が申し上げようとしていたことをほとんどカバーしていただいたので、私は問題を絞って大きく分けると、つまり今、今日、通常国会に提出されている、いわゆる防衛産業基盤育成のための法律、それからこれを何のためにこの法律を挙げているかというと、その後に控えた、いわゆる防衛装備移転の原則ではなくて、実は運用方針なのですが、運用方針をどのように実効性のあるものにするかという政策的な問題がこの後に控えていて、双方は非常に深く関連しているわけで、この2つの問題をどのように考えればよいのかということについてお話 をしたいわけです。その前に、それでは一体、今時どうしてこういう問題が起きてきたのかということですが、私は明らかに背景が2つあると思います。1つは経済安全保障推進法というのが出て、この推進法の中に防衛分野が含まれていない。したがって、ここから降りてくる研究開発その他の予算を防衛産業は十分に活用することができないので、したがって防衛の分野に所属する防衛産業、ここが抱えている現実の問題を解決していくために、別途防衛産業を助けるわけではありませんが、どのようにすれば基盤を強くすることができるのかということを別の側面から法案を作って、これを実行し、防衛産業という、いわば日本の防衛力の基盤的な力、これをもう一度作り直す。このためにどういう法案を作り、どういうふうに国民に説明できるのか、これがこの法案を挙げた第一の理由です。したがって、防衛、いわゆる戦略三文書から出てきたという、必ずしもそういうことではなくて、経済安全保障の中から入っていなかった、つまり排除されたわけではないんですけれども、含まれていなかった防衛産業そのものを別途の法律で救うためにどうしたらいいかという、こういう発想がこの法案の背後にあると、これが第一です。第二は、ウクライナ戦争ももちろんそうですが、それ以外に日本がイギリス、イタリアと共に共同開発をしている直戦闘機、こういうものを念頭に置くと、これからウクライナでは必ずしもリーサルな防衛装備をウクライナ軍に提供することができなかったわけですが、新しいコンセプトを採用して、それ以上のことが何かできないのか、できるとすればどのような運用方針を触り、改正し、そしてどこまで国民の皆さんにこれが納得していただけるのか、この二つの問題、実は絡んでいるわけですが、この二つの問題を速やかにできれば、このG7のサミットの前に完結したいという考え方があって、法案が上がり、政策の見直しが行われるということになったわけで、どのような環境条件の中からこの問題が出てきたかということは、まずしっかり我々として認識した上で、この議論をしたいといけないということなのではないかと思います。私は今、たくさんの資料を作っていないんですが、私が申し上げたいと思うポイントだけは、お配りしてあるレジュメの中に書いてあるんですが、結論は1のところに書いてあるんですが、国にとって防衛産業というのは防衛力そのものでありますので、特にその中で非常にクリティカルな問題であるサプライチェーン、今宮田大臣のお話のように、やっぱりサプライチェーンというのは非常に大事で、これをどのようにして維持・確保していくかということを法律を通じて実効性のあるものにしないといけない。同時に今申し上げたように装備移転、これを法律を通すことによって、よりもっと進めることができるのかできないのか。それからもう一つは、やはり日本の防衛産業というのはその根が非常に広いわけで、艦船・航空機などに関わっている産業は1千何百社、場合によっては2千社に近いわけでありますが、しかしほとんどこの防衛産業を中心になってもかなっているのはプライムであります。プライムの下にベンダーが、つまり下請けの小さな、本当に町工場というような小さな企業がついていて、このベンダーはその装備品の主体、本体の開発・設計にはかかることができないわけです。しかしながら、そのことは何を意味するかというと、自分たちがどういう防衛産業でなければならないのかということを、プライムを通じてしか申し述べたり、あるいは意見を述べたり、あるいはその政策として考える余地がないと。はっきり申し上げると、ベンダーはプライムから来たオーダーをできるだけ安価に、 速やかに解決していくかということに、その営業のほとんど、営業努力のほとんどを費やしているという状況にありますので、例えば先月幕張で3日間、ちょうど1ヶ月前にありますが、防衛装備の展示をやりました。宮川大使と私も準備のための委員で、前期間そこにいましたが、日本の企業でそこに展示しようとして、実際にお店を開いて展示をした会社というのは、前回2年前のが60社プラス。今回はやっと80社になりましたが、何千という会社の中で、たったそれぐらいしか、自分たちの作っているものを諸外国に売れそうにないということなので、これはどういう意味かというと、相変わらず日本は非常に細かい小さなベンダーで全体が成り立っていて、プライムが実際の防衛産業の運営をうまくなっていて、そしてアメリカやイギリスのように防衛産業が再編統合を図って大きな、例えばロッキードマーチンのように、会社の8割ぐらいが軍事産業だというような会社になるということが、現実の問題としてできないわけです。どうしてかというと、プライムでさえ自分の会社で防衛産業のところは会社の全体の本当に10%以下というか、全体の会社の機能でその10%が動いているわけで、その10%を引き抜いてどこかと合併したらどうにかなるのかというと、ならないのです。ならないなら作れないのです。したがってはっきり申し上げると、日本の防衛産業の再編統合併合というのはちょっと現実的でない。そういう現実的でない現象の中で、どのようにして防衛産業を力強い、力のあるものにしていくのか。これが今回の法案の最も大切な目標であり目的であったのではないかと思います。かかる観点から、まずこの法案がどういう考え方に立ってできていて、どこに問題があるのかということを冒頭に申し述べて、そして私が本論として一番述べたい防衛装備移転の問題について、残りの時間を使ってお話してみたいと思います。最初に言うまでもなく、日本の防衛産業というのは、安倍政権が始まるまでの間、それまでの間、防衛費がずっと下がってきて、結局は発注がない。その主たる理由も、今宮本さんがおっしゃったように、FMSでほとんど、感染予防メーカーから買うと。カットの用語に、裸国というんですか、ライセンス国産で日本の企業を使って生産ができるというような状態ではなく、かなり高額な武器をいい値で買ってきて、それでは日本の防衛産業にオーダーが下りない わけですから、当然利益にもならないと。その結果として、利益率というのが非常に低いレベルに抑えられている。こういう問題に対して、どのように問題を解決していけばよいのかという、これが第一の課題だと思います。さっき申し上げたように、プライムに依存してきたベンダーが、自分たちで長期ビジョンを作ることができずに、結局は企業倒産、あるいは防衛産業から撤退していくという傾向が、この数年の間続いてきました。さらに装備移転が低調で、この1年間で海外に出せた装備品はフィリピンにレーダーが出せただけということです。韓国はこの1年間に円でいうと2兆4千億円という膨大な軍事品を海外に移転する。これはちょっと制度が違うからもあるんですが、しかし、その何分の1でも日本ができるようにするのにはどうしたらよいのかということは考えないといけないので、この問題については後にお話しするとして、こういうことがあって結局日本の防衛産業に利益が落ちない。そしてその結果として新規の投資もできない、サプライチェーンも低下していく、技術の猶予が失われていく、レプテーションのリスクもある。これでは日本の防衛産業は強くならないのは理の当然ということであると思います。