8:50
ただいまから憲法審査会を開会いたします。日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査を議題といたします。本日は、憲法に対する考え方についてのうち、参議院の緊急集会について、委員間の意見交換を所要1時 間30分を目途に行います。発言を希望される方は、氏名表を立ていただき、会長の氏名を受けた後、ご発言願います。発言が終わりましたら氏名表を横にお戻しください。1回の発言時間は、各5分以内でお述べいただき、法制局に答弁を求める場合は、答弁を含め5分以内といたします。発言時間につきましては、経過状況をメモで通知し、時間が長過した際はベルを鳴らしますので、あらかじめご了承を願います。なお、ご発言は着席のままで結構でございます。それでは発言を希望される方は氏名表をお立てください。自民党の牧野孝夫です。参議院の緊急集会について、私の見解を申し上げます。参議院の法制局からの説明や審査会での議論を通じまして、私は国会招集ができない場合に緊急事態が発生したとき、できる限り民主政治を徹底するための暫定的な対応として、参議院による緊急集会への規定を設けたという趣旨があるというふうに受け止めました。参議院の緊急集会をめぐる4つの大きな論点についても、その趣旨を踏まえて考えるべきだと思います。第一に、条文上明示されている衆議院が解散されたときというのは、それほど長くない期間の一時的な衆議院議員の不存在の例示でもあると考えます。したがって、任期満了後の衆議院議員の不存在も解釈により緊急集会に含まれると考えます。第二に、緊急集会を開く期間については、解散が衆議院議員の不存在の例示ということであれば、特別国会に開催されるまでの最長70日間であると考えます。第三に、参議院の緊急集会を求めることができるのは、内閣だけであり、参議院が自発的に集会を行うことができないと考えます。ただし、昭和30年改正による国会法101条の規定では、参議院議員は当該案件に関連のあるものに限り議案を発言することができるとされており、国の最高機関の一翼を占める参議院の位置づけを踏まえるならば、議員が発言できる議案の範囲については、事実上広いものであると捉えることができると思います。第四に、緊急集会の検納の範囲については、それほど長くない期間の衆議院議員の不存在を念頭に、民主政治を徹底させるという趣旨を踏まえれば、国会の検納のすべてに及ぶとの考えのもと、特別会の招集を待つことができない程度の即時に対応すべきものに限り、広く認められると考えます。一方、参議院の緊急集会を超えた事態が発生したときに、憲法に条文がない、エマージェンシーパワーをパワーにいざれることには、民主政治の視点からの議論が必要だと考えます。早急に結論を得るべき論点の一つは、解散後70日間を超えて国会を招集できない程の緊急事態が発生しているときでも、参議院の緊急集会で対応するのか、あるいは議員任期の特例を設けるかということだと思い ます。憲法学者の中には、70日間に縛られず衆議院総選挙及び国会の招集が、こうした事態の収束まで延長できるという考えもありますが、その一方で憲法54条の解釈については、条文の文言通りに解釈すべきという学者の意見もあります。いざというときに議論をしているということができませんので、国会議員がこの場に集まることができるかどうかもわかりません。世界で起きている今の厳しい現実を踏まえ、起こり得る最悪の事態に備えて、憲法に対する考えを発揮させることが今求められていると思います。今こそ参議院としてしっかり議論を深め、憲法にこの緊急集会をどう位置づけるかという結論を得るべきと考えます。以上です。
14:20
立憲民主社民の杉尾秀哉です。前回の本審査会では、参議院法制局が提示する緊急集会の4つの論点について、私たちの会派の見解を申し上げました。また与党をはじめとした各会派からも、私たちと同じ問題意識や考え方が近い憲法解釈も示されていまして、大変有意義な意見交換だったと考えます。中でも特筆すべきは、緊急集会に関する論点整理、検討は急務という意見で、今後、参考人質疑も含めて議論をさらに深めていく必要があると思います。なお、前回私が触れました憲法制定時の金森大臣の答弁、戦前の反省から民主政治を徹底させ、国民の権利を十分に擁護するため、万年議会である参議院に国会代替機能を定めたという緊急集会の根本趣旨は、衆議院ではほとんど議論されておりません。こうした、いわゆる70日間限定施設のような、会見ありきの意図的かつ便宜的な解釈論とは、私たち参議院は一線を隔すべきことを申し添えてさせていただきます。その上で、先週の議論を踏まえて、私からは衆議院議員の任期満了後の緊急集会の可否について、さらに申し上げたいと思います。先週、私たちの会派の内子審議員から、高見常治大名誉教授の文字論解釈、それから土井兄弟教授、田田の一つ橋西教授の類推解釈、これらを紹介しながら、任制の下での参議院の存在理由でもある緊急集会の重大な機能及び参議院の権威にかけて、任期満了後も緊急集会は開催できる旨の説明がありました。これについて、先週、自民党の山本人幹事から、衆議院の解散というのは、衆議院議員の不在の例であり、政府提携の第三回交渉で、衆議院の解散等の事情によりの等が日本政府側から示されていること、あるいはまた、貴族院での質疑で金森大臣が「改選期云々」という答弁をされたことからしますと、任期満了による衆議院の不在を含めていると解釈することも可能だという、こうした注目すべき発言もございました。ここで山本人が述べられたとおり、緊急集会制度の立法経緯に照らせば、当時、日本政府が衆議院の解散以外の国会を招集できない場合についても想定し、検討していたことは明白であります。そうしますと、任期満了後にも緊急集会が可能だという持論解釈や累推解釈の法的正当性が一層明らかであること、また、任期満了の場合であっても54条3項の衆議院の事後同意が担保されていること、さらに同意表示が指摘するように、議員が存在しない状況で緊急集会を認めなければ、内閣が独断で必要な措置を講ずる事態を招かせないこと、こうしたことを考えますと、憲法54条2項を「衆議院の任期満了後の緊急集会も可能」と解することは、立憲主義とも符合するというふうに考えております。これについて、公明党佐々木紗彦委員は前回、「現実問題として緊急集会で対応するほかないのではないか。緊急の場合、参議院の緊急集会は全国民の代表として、行政権に対する民主的コントロールに及ぼす重要な役割を担うもので、国民の基本的人権を保障し、行政権の乱用を防ぐためにも緊急集会が果たすべき役割は極めて重い」と、こういう発言をされました。これらの見解には、私たちも深く賛同するものであります。そこで最後に、法的問題について参議院法制局長に伺います。仮に衆議院議員の任期満了後も緊急集会を開催できるという憲法解釈に至った場合、現行の国会法の条文改正は必要になるのでしょうか。どうでしょうか。川崎法制局長、お答えいたします。衆議院議員の任期満了後の総選挙の場合の参議院の緊急集会の可否につきましては、様々な議論のあるところであり、先生方において御議論の上御判断される問題であると思っております。その上で、仮に任期満了後の衆議院総選挙の場合の緊急集会について、憲法上可能であるとの見解をとるのであれば、現行の国会法では文言上緊急集会を開くことができる場合を、衆議院開催時に限定するような規定は設けられていないことから、国会法を改正する必要はないとの理解が可能ではないかと考えているところでございます。
18:48
今お聞きいただきますように、国会法の解釈で対応可能ということであります。私たちの会派は、憲法54条2項の解釈により、衆議院の任期満了後も緊急集会が可能というふうに考えますけれども、その解釈と両立するものとして、国会法や公選法の改正により、任期満了前に必ず総選挙を実施するという制度改革案があることを、これまでの本審査会でも何度も指摘させていただいております。どうか皆様も御検討をよろしくお願いいたします。以上です。ありがとうございました。
19:21
公明党の安江信夫です。現在、衆議院の憲法審査会において、緊急事態に関する論点整理が進み、とりわけ議員の任期延長に関する議論が詰められている状況にあります。我々参議院としては、こうした衆議院の議論を踏まえつつも、それに過度に引きずられることなく、一つ一つの議論を整理していくことが重要と考えます。すなわち、緊急事態における現行憲法下での課題は何か、問題への対応として議員の任期延長等の憲法改正まで要するのか、といった事柄について、丁寧な議論が必要なことは今でもありません。仮に、我々が衆議院の論議を追随するようなことがあっては、それこそ参議院は不要との議論にもつながるものであり、まさにこの憲法審査会での審議を通じて、良識の負としての享受を示し、責任を果たすべきものと考えます。さて、参議院法制局から緊急集会をめぐる論点が説明されているところです。まずは、これらの論点の一部についての意見を述べます。第一に、任期満了による総選挙の場合の緊急集会の可否についてですが、肯定的に捉えることに利があるものと考えます。確かに、分離上は、衆議院が解散されたときと明記してあります。しかし、かといって、任期満了に伴って衆議院が不存在となり、かつ、何らかの事情で選挙を行うことができない場合において、その必要性があるのに緊急集会を行わないとすれば、国会の機能が停止してしまいます。もし仮にそうだとすれば、長谷部康生先生が指摘されるように、内閣が緊急事態の法令に異議するなどして、単独で必要な措置を講じる事態を招きかないという懸念も生じ、それこそ憲法が想定しない時代とも言うべきではないでしょうか。緊急集会は、まさに衆議院の不存在の状況において、緊急の必要があるときに国会の機能を維持して、民主的な統制を維持するために設けられたものであり、任期満了の際も開会できると解するべきではないでしょうか。第2に、緊急集会が開くことができる機会についても、期間についても議論があります。分離上、衆議院解散、総選挙経て特別会が招集されるまでの最長70日間とも読めますが、第1の論点でも言及したように、緊急集会が衆議院の不存在という緊急事態において、国会の機能を維持することに異議があると理解する立場からは、緊急の必要が継続する限り開催できると理解することが妥当ではないでしょうか。もっとも、緊急集会が任意制の例外中の例外であることから、あくまでもその機能は暫定的なものであり、過急的速やかに総選挙を実施し、原則の状態に復帰させることが憲法上の要請であることは言うまでもありません。第3に、これは問題提起にとどまりますが、参議院の緊急集会の権限の範囲を憲法論としてどのように捉えるべきでしょうか。議員の任期延長の議論も、これをどう捉えるかによって、結論が異なってくるものと考えております。すなわち、分離上は、緊急集会の開会は内閣が求めることになっていることに加えて、臨時会と異なって議員による聴取の要求もできません。また、緊急集会があくまで任意制の例外として暫定的な機能であることにも考えれば、国会と同等の権限を認めることは困難ではないかとの議論があるところです。この点、現行の国会法99条1項が、緊急集会は総理が案件を示して請求することとし、党法101条や102条は、緊急集会で議員が発議できる案件や請願は、総理が示した案件に関連あるものに限るとしています。