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これより会議を開きます。内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき、日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する、法律案を議題といたします。本日は、本案審査のため、参考人として、慶応義塾大学名誉教授弁護士安冨清君、東洋英和女学院大学名誉教授滝沢三郎君、一橋大学院社会科学研究科純教授ロンドン大学難民法イニシアティブリサーチアフェリシア大学の社会科学研究科純教授ロンドン大学難民法イニシアティブリサーチアフェリエイト橋本直子君及び元東京出入国在留管理局長福山博志君、以上4名の方々にご出席をいただいております。この際、参考人各位に委員会を代表して一言ご挨拶を申し上げます。本日はご対応の中、ご出席を賜りまして誠にありがとうございます。それぞれのお立場から、ぜひ忌憚のないご意見を賜れれば幸いと存じます。それでは議事の順序について申し上げま す。まず安冨参考人、滝沢参考人、橋本参考人、福山参考人の順に、それぞれ15分程度ご意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。なお、ご発言の際は、その都度委員長の許可を得てご発言をいただきますようによろしくお願いいたします。また参考人から委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、ご了承を願います。それではまず安冨参考人にお願いをいたします。ご紹介をいただきました安冨でございます。どうぞよろしくお願いいたします。この度は参考人として意見を述べる機会を頂戴いたしましたことを誠に光栄に存じる次第でございます。私は慶応義塾大学名誉教授でございますが、法務大臣の私的懇談会である第7次出入国政策懇談会の座長代理を務めていました時に、相関規避長期就業問題の解決策を検討するために、令和元年10月に政策懇談会のもとに設置されました就業相関に関する専門部会の部会長を務めておりました。今回の入管法等改正法案は、現行入管法下で生じている相関規避長期就業問題の解決などを目的として、就業相関に関する専門部会の提言を受けて立案されたものと承知しております。専門部会では、私のほかに様々な分野から選ばれた有識者である9名の委員に加え、当時のUNHCR中日事務所副大臣票にもオブザーバーとしてご参加いただき、幅広い観点から御議論をいただいた上で、令和2年6月に相関規避長期就業問題の解決に向けた提言を取りまとめました。専門部会では、基本的な考え方として、相関すべきものと在留を認め、または、被護すべきものを適切に判別すべきであること、相関すべきものについては相関を促進すべきであること、長期就業を解消するための方策を講ずるべきであること、そして被就業者の処遇は人権に配慮して適正に行うこと、この4点について、委員の間で認識が共有されました。本日は、時間の関係もありまして、専門部会における議論のすべてを御紹介することはかなえません。主に相関すべきものについての相関の促進と長期就業を解消するための方策に係る議論を中心に御紹介させていただきます。専門部会では、相関すべきものの相関促進のため、現行法下で問題となっている相関回避を目的とする難民認定申請に対処するための措置について議論がなされました。現行法上、難民認定申請を行った場合、申請の理由や回数を問わず一律に相関が停止されることから、相関起死者の中にはその手段として繰り返し難民認定申請を行う者が相当数存在しており、速やかな相関を実現するにあたって重大な支障となっております。そこで、専門部会では、このいわゆる相関停止法に一定の例外を設けることを提言するとともに、難民条約上相関が禁止されている国への相関を行わないことに十分配慮すべきことを併せて提言しました。改正法案では、専門部会の提言を踏まえ、難民認定申請中の相関停止法に例外を設けることとしています。具体的には、3回目以降の難民等認定申請者、無期もしくは3年以上の実刑に処せられた者、外国人、テロリスト等は難民等の認定申請中であっても相関することを可能としています。他方で、立法論としては、2回目の申請者についても相関停止法の例外をとし、あるいは再申請自体を制限することもあり得るところではありますが、法案では2回目の申請者については相関停止法を認めています。そして、3回目以降の申請者についても難民等の認定を行うべき、相当の理由がある資料を提出した場合には、相関を提出するということとしています。このような相関停止法の例外は、相関すべきものを速やかに相関する必要性と、難民等認定申請者などの法的地位の安定を図る必要性のバランスをとる制度となっており、妥当なものと考えます。専門部会では、相関すべきものの相関促進のため、我が国から退去しない行為に対する罰則の創設についても議論いたしました。相関を規避する者の相関を実施するには、相関先国の協力が必要でありますが、限られた国ではありますが、相関規避者の受入れを拒否する国があり、また相関規避者が相関に使用す る民間航空機の中で大声を出すなどの相関妨害行為をすることにより、登場を拒否され、相関の実現に至らない事例というものも存在いたします。現行法下では、そのような相関を規避する者については、相関を遂げることが不可能または著しく困難であります。そこで専門部会では、こうした現行法下の課題を踏まえて、正当な理由なく相関を拒むことに対し、一定の期日までに我が国から退去することを義務づける命令を発し、この命令違反に対する罰則を設けることが相当である旨の意見が述べられ、多くの意見がこれを指示いたしました。他方で、退去が困難な事情には様々であります。命令や罰則の対象範囲を適切に定めることが困難であるなどと反対する意見や、退去しない者に一律に罰則が適用される制度は好ましくないなどとする指摘もございました。そこで専門部会としては、この反対意見があったことを明記した上で、多数の委員が指示した内容として、退去の命令制度やその違反に対する罰則の創設を検討することを提言するとともに、命令や罰則の対象者を適切に限定することも提言いたしました。これを踏まえて改正法案では、退去強制を受ける者を送還先に送還することが困難である場合に、その者の意見を聞いた上で相当と認めるときは、その者に対し我が国からの退去の命令を発して、退去を義務づけることを可能とし、この命令に違反した場合の罰則が設けられています。加えて改正法案では、命令や罰則の対象者を適切に限定するという提言における指摘を踏まえまして、退去の命令を発することができるのは、退去の意思がない自国民の送還に協力しない国を送還先とするもの、送還を妨害したことがあり、再び同様の行為に及ぶ恐れがあるものの、いずれかにより送還が困難な場合に限られており、命令の対象者が適切に限定されております。また、難民等の認定申請により送還が停止される場合や、退去強制の処分の効力に関する訴訟が継続し、かつ当該訴訟で執行停止決定が裁判に処理なされた場合などには、命令の効力が停止するということとされています。このように、退去の命令制度は、専門部会の提言を踏まえ、命令や罰則の対象者が厳格に限定され、適切な制度となっていると考えます。なお、この退去命令違反の罪は、送還記被罪などと、あたかも送還記者であれば、およそ処罰されるかのような誤解を生じさせかねない形で、批判が展開されているようですが、実際の命令や罰則の対象範囲は、今申し上げたとおり、限定されたものとなっていますので、正しい前提に基づいて、御議論をいただくことが重要であるというふうに考えます。次に、収容の長期化を解決するための施策について申し上げます。現行法では、退去強制令書の発布を受けた者は、原則として、送還可能のときまで収容することとされており、 送還を起使する者について、収容が長期化しかねないということが問題となっております。収容の長期化は、被収容者の健康上に問題を生じさせたり、仮法免許化を求め集団で居職するなどの収容施設内において生ずる様々な問題の原因となるだけでなく、現場の職員が処遇業務を行う上でも大きな負担となっています。そこで、専門部会では、こうした収容をめぐる実情を踏まえて、新たな収容代替措置、例えば第三者の支援などにより、当該外国人が違法な就労に及ぶことなく生活手段を確保することが可能となることを前提に、逃亡防止や出逃確保を図りつつ、収容施設外で生活することを認める措置の導入を検討すべきことを提言いたしました。会社法案では、この提言を踏まえまして、収容に代わる管理措置制度を創設するとしております。具体的には、逃亡等の恐れや、本人が収容により受ける不利益の程度等を考慮して、管理人の管理の下で収容せずに、待機を強制手続きを進めるという措置になっております。管理措置制度では、管理措置に付される者が管理措置条件に違反して、逃亡等をした場合の罰則の整備や、管理人に必要な場合に限り、主任審査官の求めに応じて報告することなどとしていますが、これらは管理措置の目的に照らして必要不可欠であると考えます。管理法措置に付される者は、強制退去自由に該当しており、基本的に我が国から退去しなければならないものであり ます。管理措置により収容しないで手続きを進めた結果、その者が逃亡するなどし、送還ができなくなるということは、公正な出入国在留管理という入管法の目的に照らし、許容できるものではありません。収容の長期化を解消しつつ、収容施設外における外国人について適切な在留管理を行い、逃亡等を防止するため、改正法案により創設される管理措置制度は必要な仕組みであると考えます。以上のほか、専門部会では収容制度の在り方についても議論いたしました。一部の委員からは、外国の立法令などを踏まえ、退去強制令書による収容について、収容期間の上限を定めることを提案する意見が示されました。しかし、これに対しましては、長期収容を可能な限り解消するという問題意識自体は色もありませんでしたが、上限を定めると、逃亡の恐れが否定できないものであっても収容を解かれることになり、確実な総管の実現が困難になる。必ずしも諸外国の立法令が一致を見ているわけではなく、国際標準と言える状況にはないことなどから、その提案に従って制度を導入することは困難であるという意見が多数となりました。また、一部の委員からは、収容の開始前または継続中に司法審査を経ることを提案するという意見も示されました。しかし、これについても、現行法上退去強制令 書は、行政手続として慎重な事前の手続を経て発布されるものであり、事後的にも行政訴訟制度による司法審査の機会が確保されており、事前の司法審査の導入が必要と考えることは困難であること。退去強制令書による収容は、円滑な総管の確保及び在留活動の禁止を目的としてなされるものであり、刑事手続における被疑者被告人の身柄拘束に求められる要件がそのまま妥当するものではないこと。必ずしも諸外国の立法令が一致を見ているわけではなく、事前の司法審査などを導入することが国際標準といえる状況にはないことなどを理由に、提案に従って制度を導入することは困難であるとする意見が多数となりました。そこで、専門部会では、収容機関の上限や事前の司法審査の導入を提案する意見が一部の委員から示されたことを明記しつつ、多数の委員の指示があった内容として、一定期間を超えて収容を継続する場合に、その要費を吟味する仕組みを設けることなど、行政手続の一層の適正確保を図るための方策を検討することを提言いたしました。一定期間を超えて収容を継続する場合に、その要費を吟味するという仕組みは、令和3年の法案では特段規定が設けられていませんでした。しかし、今回の改正法案では、新たに退去のための計画として 、3ヶ月ごとにその進捗状況を確認して、収容の要費を必要的に見直し、管理措置に移行する仕組みが導入されており、この点は提言を一歩前に進めていただいたものと評価しております。このほか、改正法案では、第6次出入国在留管理政策懇談会のもとに置かれた難民認定制度に関する専門部会の提言を踏まえ、保管的保護対象者の認定制度を創設することとしています。保管的保護対象者の認定制度は、昨年来続くロシアによる衰えな進行を受けて、いわゆる紛争避難民を保護する制度として、社会的にも注目されるようになっておりますが、その紛争避難民は保管的保護対象者ではなく、そもそも難民条約上の難民として保護すべき、という御主張もございます。この点につきましては、私は確かに事情によっては、難民条約上の難民の定義を満たす場合があること自体は指定いたしませんが、紛争避難民は直ちに難民条約上の難民の定義を満たすとは言えないと考えており、そのため、保管的保護対象者の認定制度を創設し、この制度により紛争避難民を保護することの意義は大きいと考えております。改正草案は、相関停止法の例外規定や罰則付きの退去命令制度など、相関を促進するための施策が注目を集めがちですが、