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おはようございます。ただいまから予算委員会、公聴会を開会いたします。本日は、令和5年度一般会計予算、令和5年度特別会計予算及び、令和5年度政府関係基幹予算につきまして、6名の公述人の方々から順次、項目別にご意見を伺いしたいと存じます。この際、公述人の方々に一言、ご挨拶を申し上げます。本日はご多忙のところ、本委員会にご出席いただきまして誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。本日は、令和5年度総予算3案につきまして、皆様から忌憚のないご意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。次に、会議の進め方について申し上げます。まず、お一人15分程度でご意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。それでは、経済財政雇用について、公述人、PWCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト片岡剛史君及び昭和女子大学特命教授矢代直弘君が順次からご意見を伺います。まず、片岡公述人にお願いいたします。皆さん、おはようございます。PWCコンサルティングの片岡と申します。本日は、このような機会をいただきまして誠にありがとうございます。私の方からは、主に4点、経済、雇用、財政に関連する話題についてお話をさせていただければと思います。お手元の方に資料がございますので、そちらに沿って順次お話をしたいと思います。まず1枚おめくりをいただきまして、2ページ目のところをご覧いただければと思いますけれども、最初に物価の動向についてであります。図表の1のとおり、日米ユーロ圏の消費者物価上昇率の推移を見ますと、2021年に入ったあたりから、じわじわと物価が上昇しております。その中で、日本も2023年の1月になりますと、すべての財を含むベースで4.3%、それから食料、エネルギーを除いた、いわゆる欧米型コアと呼ばれている物価上昇率でも1.9%と、こういう形でですね、欧米の物価上昇に引きずられるような形で上昇していると、こういう形になっております。図表の2の方をご覧いただければと思うんですけれども、この物価上昇というのがどういう形で起こっているのかというものを、消費者物価を構成している財別に見たものであります。日本のケースは一番下の方に書いてございますけれども、4.3%の物価上昇率のうちですね、日本が輸入品等から影響を受けています食料、エネルギーといったものが2.4%分ございまして、あ る意味半分ちょっとぐらいでしょうか、いわゆる国内の受給関係というよりかは、輸入品価格の上昇によってインフレが起こっていると、こういうことでございます。ただですね、1.9%食料エネルギーに除く物価上昇率というのは、これは1993年以来でございまして、いわゆる需要要因で物価が高まっているといった話もですね、かなり強くなってきているということが言えるかと思います。先ほど申し上げましたように、物価上昇につきましては、全ての品目で4%を超えるという状況でございますので、日本銀行として、例えば2%の物価安定目標、これで達成できるのかどうかというところが焦点になってくるわけでございますけれども、図表の3のようにですね、消費者物価の基調的な変動というものをいろんな指標で見ていきますと、こちらはですね、借込み平均値というものにつきましては、既に3.1%という状況でして、2%上回っている。それから、果汁中央値、再品値といったところもですね、1%台というところで、かなり2%に近接しているという状況であります。私自身は、この3つの指標がですね、2%に近づく、ないしは2%を超えるというような状況になりますと、2%の物価安定目標というのが達成されると、こういうふうに判断してもいいんじゃないかなというふうに考えている次第であります。図表の4の方をご覧いただければと思うんですが、これはですね、消費者物価を構成しております500品目以上の品目を取り上げまして、 それぞれのですね、価格上昇率というものを横軸にとり、その価格上昇率というのが全体の中で何%ぐらいの割合を占めているかというものを見たものであります。1992年12月といいますのは、これは食料、エネルギーを除く総合ベースの指数で、2%超のですね、物価上昇率を記録したときの品目別の価格変動分布であると。で、これに近いような状況であれば、2%食料、エネルギー除いてもですね、物価上昇しているということなので、まあ大丈夫だという話になるわけですね。で、オレンジの棒グラフといいますのが、2023年の1月というところでありますけれども、7%以上の価格上昇率を示している品目の割合というのは、実は1992年12月と比較してもですね、割合としては大きくなっているわけですね。ですから、こういった高くなっている品目が3%以上の物価上昇まで落ち着く、価格上昇まで落ち着くということになれば、おおむね2%の安定目標が達成できるということになります。ですので、今後は持続性が焦点ということになろうかと思います。次のページをご覧いただければと思いますけれども、ではこうした物価上昇を支える経済動向はどうであったのかというところであります。図表5、図表6、図表7といいますのは、物価マネー、それから企業利益賃金、そして図表7が価格判断、受給判断と、こういったようなものを見ておりますけれども、コロナ禍以 降ですね、日銀は政府と協力しつつ、コロナ対策という形でマネーを供給しました。このマネーの供給というのが、1つは物価上昇の力になっているということであります。それから企業利益もですね、コロナ禍以降落ち込んだところから改善をしておりまして、足元でもですね、前年比で現状利益というのは高まっていると、こういう状況であります。それから価格判断なんですけれども、図表の7の方をご覧いただければと思いますが、販売価格判断、それから仕入れ価格判断といいますのは、これは価格上昇しているというふうに見ている企業さんというのが非常に増えている状況です。従来であればですね、こういった中で人々の所得が価格上昇に追いつかないという状況になりますと、そうしますと相番、需要が持たなくなりますので、価格が下がっていくと、こういうふうになるわけですけれども、今回がですね、これまでとはちょっと違うのが、この国内受給判断の氷というものがですね、これが需要長という格好になっている部分というのが違いであります。もちろん全品目では需要長化という形にはなっておりませんけれども、氷に限っていますと需要長化の状況になってきていると、こういうことになります。ただ、こちらの指標をそれぞれご覧いただいてもお分かりのとおりですね、足元でちょっとですね、上昇度合いが緩やかに垂れてきていると、こういう形になります。で、図表の8の方をご覧いただければと思いますが、これは先行きの景気を示したですね、CI先行指数というものを見ておりますけれども、2018年の10月といいますのが直近の景気交代期の始まりの時期でありました。この指標の数字と比べますと、足元、2022年の12月の数字というのは、いずれもですね、景気交代が始まりました2018年の10月の水準を下回っております。そしてトレンドとしてみますと、ややこう下がっていくようなですね、そういった動きになっております。こうしたような動きというのがですね、広がっていくということになりますと、景気交代というのが現実的に起こるかもしれないと、そういう情勢であるということで、先行きの景気には不安材料もあるということであります。続きまして、雇用状況についてお話をしたいと思います。4つ図表を挙げさせていただいておりますけれども、アベノミクス前後の経済動向ということで、図表の9に掲げさせていただいておりますが、名目GDP、企業収益、就業者数、完全失業者数、倒産件数、国地方の税収、いずれも改善したということが言えると思います。特にですね、大きく改善したのが雇用であります。図表の10の方をご覧いただければと思いますが、こちらは15歳以上人口に占めるですね、就業者の割合、つまり働ける可能性のある方の中で、実際職に就いた方の割合、それから実際の就業者数と いうものをグラフにしたものであります。1998年以降のデフ歴、2012年あたりまで続きましたが、こちらの時期といいますのは、就業率でいいますと60.7%、当時あったものが2012年には56.5%まで低下し、就業者数は6,514万人であったものが6,280万人まで減少する、こういうことになりました。2013年以降のアベノミクスを通じてですね、雇用は大きく改善し、就業率は60.9%、それから就業者数は6,723万人という形でですね、ようやくデフ歴前の状態に戻ったということがこの数字から言えるのかと思います。そして図表の11の方ですけれども、正規雇用、非正規雇用の動きということで、ちょうど今年アベノミクス10年みたいな話が言われるわけですが、2002年から2012年の10年間、それから2012年から2022年の10年間で正規雇用、非正規雇用の形立ちというのがどれぐらい増減したのかというのを、まず図表の11の左では見ております。正規雇用を見ていきますと、2002年から2012年の10年間で正規雇用は144万人減りました。そして非正規雇用は365万人増えたと、こういう状況になっております。一方で2012年から2022年の間を見ますと、正規雇用は243万人、そして非正規雇用は285万人という格好になっていまして、共に増えると、こういう格好になっています。それから非正規雇用についてなんですけれども、理由別の非正規雇用者数というものを見ますと、自分の都合のよい時間に働きたいと答える方の割合というのが、2013年以降ずっと高まっているということがわかります。他方で非正規の職業がないからと、こういう理由で非正規職業を選んでいる方の度合いというのは逆に少なくなっていると、こういう形になっています。ですので、理由が変わってきていると、こういうことになります。そして、昨今、名目賃金どれぐらい上がれば2%の物価安定目標の達成できるんだろうか、そういう議論がございますけれども、図表の12はその参考ということで、横軸に所定内給与の前年比をとりまして、縦軸に物価上昇率を見たというものであります。過去のデータを通じてみますと、所定内給与の伸びが前年比で3%以上になりますと、大体物価上昇率が2%ぐらいになる、こういうことがなっております。今足元で2022年の12月時点の所定内給与の伸びが2.3%ということでありますから、もう少し伸びれば2%に近づいてくる、こういうことが言えると思います。ですので、そうした意味では、強固かつ持続的な名目賃金の上昇を通じた所得課題、所得拡大というものをやっていくというのが必要になる、こういうことになるわけです。次のページをご覧いただければと思いますけれども、財政の話なんですが、図表の13、こちらは2012年の第4四半期、つまり、アベノミク スが始まる直前の消費、それから設備投資、輸出といったものにつきまして、そこを100として足元までずっと推移を見たものであります。輸出と、それから設備投資、もちろん上下はありますけれども、輸出の場合は2012年の第4四半期と比べますと、4割超増加した、それから設備投資は15.6%伸びたということでございますけれども、民間最終消費を見ますと、これは99.8%というふうになっていまして、2012年の第4四半期の水準よりもやや低い、こういう状況になっております。やや細かくこの指標を見ていただきますと、2014年の第1四半期あたりまでは、緩やかに拡大していることがわかります。2014年の第2四半期に落ち込んで、そこからずっと横ばいになり、さらに2019年の第4四半期に落ちて、2020年コロナ禍の下でさらに落ち、今回復過程になると、こういう流れになりますけれども、落ち込んでいる2つの時期といいますのは、これはまさに消費税を増税した時期なんですよね。ですから、ある意味これは何を示しているかといいますと、消費税を増税したということが、民間消費の落ち込みの背景にあるということであります。こういう状況になりますと、経済成長、なかなか進められないということになるわけですよね。昨今話題になっております防衛費なんですが、図表の14といいますのは、赤い線で当初予算 ベースの防衛関係費、これは実績の値を上げておりますけれども、黄色い線ですね、こちらは名目GDPの成長率で毎年3%成長したら、足元の防衛関係費、実はどれぐらいになっているのかというものを示したものになります。現状5.4兆円の防衛費なんですけれども、1997年、デフレに日本が陥った以降ですね、仮に名目GDPが3%成長をずっと続けていたら、GDP費1%ぐらいの防衛費でも、実は11.0兆円になると、こういうことになります。つまり経済成長をしていれば、GDP費2%という形で防衛費を積まなくても、実は防衛費は増えているんだということです。これは何を意味しているかといいますと、我々の暮らしを支えるためには経済成長が必要であるということです。経済成長と両立する形での財政を考えていく必要があるという話になります。図表の15、16は、そうした意味で財政政策の在り方という話について書いております。デフレ期、なかなか貯金利は上がらない、こういう時期においては、経済学の世界では積極的な財政支出を行っても問題ないということが言われます。それから図表の16に、これからの財政の在り方ということで少し書かせていただいておりますけれども、私は3点必要なことがあるんじゃないかというふうに見ています。1つは正しい情報ということであります。例えば60年召喚ルール、債務召喚費の扱い、こういったものは日本としては正しいというふうに使っておられるのかもしれませんけれども、グローバルスタンダードの視点で見ますと、こうしたものを使っている国というのはほとんどない。それからグロスとネットの違いというものを財政においては抑える必要がありますし、予算と決算額というものの違いというのもしっかり抑えていく必要があるというふうに思います。それから正しい認識と書きましたけれども、デフレ化とインフレ化で財政政策の在り方は異なります。デフレ化の中では貯金なかなか上がりませんので、むしろデフレ化は早期に脱却するために積極的な財政が必要になります。他方でインフレ率が高まってきて、日本銀行が仮にですけれども2%の物価安定目標を達成したと、こういう話になりますと貯金率は緩やかに上がってきますので、こうなったときに初めて財政健全化、こういう議論を開始していけばいいんじゃないかと、こういう話になります。それから正しい戦略ということで書かせていただいておりますけれども、本予算と補正予算の位置づけを明確にすべきだというふうに思います。補正予算は例えば景気の下押しを回避するための使途に限定するとか、そういうような話が必要で、本予算は中長期的な観点に立ってしっかりお金を支出していくと、こういうことが求められるのかなというふうに思います。すみません、私からは以上です。
22:52
ありがとうございました。以上で公実院の御意見の陳述は終わりました。
23:05
ありがとうございました。次に、八代公実院にお願いいたします。八代公実院。おはようございます。障害女子大学の八代と申します。本日はこのような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。私は2006年から、第一次安倍内閣のときの経済財政諮問会議の民間議員として、特に規制改革、労働市場改革等の分野で、安倍総理の指示の下で参加しておりました。そのときと比べて、今の日 本経済の状況は、さらに悪化しているわけでありまして、そういう意味でも、安倍総理がやり残された、この三本の矢のうちの成長戦略というものを、どんどんやっていく必要があろうかと思っております。一枚めくっていただきまして、日本経済の現状ですけれども、私は実は、また80年代末まで、パリにあるOECDという国際間で、日本担当の経済分析の責任をやっておりましたが、その当時、諸外国は、ずいぶん議論をしておりまして、なぜこんなに日本経済が強いのかというようなことが、重要な要素になってきたわけです。しかし現在は、逆に、なんで日本がこんなに弱いのか、全く正反対の議論が行われているわけですね。ですから、なぜこんなに大きく変わったのか、誰か悪者がいるんじゃないかと、誰か悪い人が日本をこんなに苦しめているんじゃないかというようなことが、よく言われるわけですが、私はそれは間違っている。日本は何も変わっていない。日本の企業も日本の労働者も、80年代前も現在も一生懸命働いているわけですが、それでなぜこんなに日本経済がうまくいかなくなっているのかということが、大きなポイントかと思います。かつて日本は、GDPで見ますと、アメリカとほぼ同じペースで成長しており、一人当たりGDPで見ましても、一時はアメリカを上回った時期があるわけですね。それがGDPでは、2010年に中国に追い抜かれ、どんどん差は広がっている。一人当たりGDPで見ますと、もう韓国とほとんど同じレベルで、また追い抜かれる危険性が高いわけですね。ですから、この違いはなぜかというと、私は日本は何も変わっていない。問題は世界が変わったんだということですね。90年代に、ベルリンの壁が壊れて、社会主義経済が市場経済化した、旧ソ連や東欧、それから中国が経済発展をして、特に製造業の分野で日本を急速にキャッチアップしてきた。こういうような大きな海外の変化、それから国内では少子高齢化、デジタル化、そういう大きな変化になかなか対応できなかった。ですから、日本の企業も政府も、過去の成功体験があまりにも素晴らしかったが、家に変えようとしなかった。こういう問題は一時的なもので、いずれ台風が去ったら青空が広がるというような感じで、その場しのぎの対応でやってきたわけですが、もうそれはやめるべきであって、基本的には構造改革を進める必要があるんじゃないかということです。次のページを見ていただきますと、ですから大事なのは不作為ということですね。企業の不作為、政府の不作為、それがやっぱり今の大きな問題ではないか。日本の産業構造はもともと二重構造と言われていまして、製造業は市場経済に基づいて世界で 戦ってきたわけですが、農業やサービス業は都各政府の保護を求めるという、社会主義に近い仕組みになっていた。いわば昔のドイツがですね、西ドイツと東ドイツに分かれていた状況が日本の現状ではないか。そうした中で効率的な製造業がどんどん海外に出ていってしまうことで、その穴を埋めるべき農業やサービス業の生産性が低さというのが大きな問題になっているんじゃないか。しかしこれは逆に言うと、それだけある意味で含み試算があるわけでして、農業やサービス業の制度や規制の改革をすることによって製造業並みの生産性を実現すればですね、日本は立派に立ち直ることができるんじゃないかということであります。もう一枚めくっていただきまして、アベノミクスの評価。アベノミクスから10年ということなんですが、アベノミクスが失敗したという意見が一部にあるわけですが、私はそうは思っておりません。アベノミクスの1本の矢、金融政策、2本目の矢、財政政策、3本目の矢の成長戦略で、1、2本はそれなりにうまくいったと思いますが、3本目の肝心の成長戦略がコシクラケになってしまった。これをぜひ継承していくのが、現在の政府の役割ではないかと思っております。ですから、せっかく労働需給が逼迫しているのになぜ賃金が上がらないかという問題が大きいわけですが、やはりこれは生産性の低さが足を引っ張っている。ですから、制度規制の改革を通じて、特に農業とサービス業を中心としてやる余地は大きいんじゃないかと思っております。それから次のペースで、少子高齢化への対応。これが一番大きなポイントだと思われます。少子化の方は、最近すでに岸田総理が異次元の少子化対策というのを打ち出されたわけですが、実は少子化よりも重要なのが、私は高齢化だと思います。日本の人口は、2060年ぐらいに1億人を下回るという予測があるわけですが、しかしまだ1億人いるわけです。この1億人というのは、1960年ぐらいの水準と変わらないわけで、問題は1960年は高齢化率が6%につきなかった。それが今度の1億人を切る2060年には、もう38%まで上がるという予測があるわけで、この違いが極めて大きいわけです。ですから、この膨大な高齢者に、高齢化問題にどう対応するか、基本的な考え方をやっぱり検討していただく必要があるんじゃないか。右のグラフがありますが、これは一概に高齢者といっても、2つに分かれるわけですね。74歳までの前期高齢者と75歳以上の後期高齢者、それが赤線で示してありますが、今起こっていることは、単に高齢者が増えるだけじゃなくて、後期高齢者が今後急速に増えていく。今は高齢者の高齢化という現象が起こっているわけです。これに対してどう考えるかといいますと、なぜ高齢者が増えるかというと、それは一つは、最大の要因は寿命が延びるわけですね。寿命が延びるということは、いいことなんです。個人にとっても家族にとっても。なぜそれが社会にとって悪いことになるのか。それは社会の仕組みが間違っているからであって、寿命が延びた分だけ高齢者が活躍できるようにする。具体的に言いますと、前期高齢者、65から74歳は、支えられる側じゃなくて、支える側に回っていただくということですね。そうしますと、75歳以上の高齢者というのは、実は高齢化のピークでも25%に過ぎない、4人に1人なんですね。これは十分支えられるわけです。ですから、具体的に言えば、今の労働慣行とか、あるいは社会保障制度を、75歳以上の高齢者をきちっと守るという方向に持っていく。もちろん高齢者は対応でありますから、60歳で働けなくなる人もいる。しかし80歳になっても元気で働ける人もいるわけで、そういう高齢者を一括に扱うんじゃなくて、エイジフリーという言葉が英語にあるわけですが、年齢を問わない社会に変えていくというのが、大きなポイントではないかと思います。それから次を見ていただきますと、こ の異次元の少子化対策ということで、記者総理がいろいろご苦労されているわけですが、これに対してはやっぱり抜本的な制度改革が必要である。具体的に言えば少子化のための固有財源が必要だと思っております。今、政府の一部には、残念ながらそういう抜本的な財源は難しいから、年金とか医療とか既存の保険から少しずつお金を出してもらってやりくりしようという、非常に古俗な考え方が張りこっているわけで、これは間違っていると思います。本当の少子化対策をするためには、やっぱりそれのための固有の財源が必要であります。これは日本ではすでにあったことで、介護保険がそうなんですね。2000年にできました介護保険というのは、当時の厚生省で、私も審議会に入れていただきましたが、これから増える高齢者に対して家族では対応できないと。だから高齢者の介護を社会全体で負担するために、医療保険のような介護保険が必要だという大英談をしたわけですよね。同じことが子育てにも必要だと思います。これからの社会を支える大事な子どもを家族だけに任せるんじゃなくて、介護保険と同じように社会全体でシェアするという考え方が大事で、そのためには子ども保険というようなものが必要になるんじゃないか。これを新たに作る必要はないわけです。具体的に言いますと今の介護保険は、高か不高か40歳以上が被保険者という非常に変な形になっていろんな経緯があるわけですけれども、幸いにして20から39歳の被保険者が空いてますので、ここにすっぽり子ども保険という形で介護保険に曲がりすると。全体を合わせて家族保険という形にしていくと。これを負担増だという批判する方もおられますが、将来の宝である子どもを育てるためには、子どもがいる人ない人も合わせてきちっとした負担をしていくということについて、国民がそんなに大きな反対をするかというと私は疑問に思うわけです。介護保険にすることによって、家族が働くか働くないかに無関係に介護サービスを活用できたわけですが、今の保育というのは保育認定が必要なんですね。これはですから働いてないと保育所を使えないという非常に歪んだ形になっているわけで、こういう過去の福祉としての保育という考え方をやめて、サービスとしての保育で、どのような家族でも使えるという方向に持っていく必要があろうかと思います。もう一つめくっていただきまして、ですから少子化対策というのは、そういう意味で女性の社会真実と並行してやるということに考えないといけないと思います。それから時間もしておりますので、一番大きな改革の一つの柱としてはやはり日本的雇用慣行の改革というのがあります。今の日本の働き方というのは、過去の高い行動成長期を支えた非常に貴重なものであります。未熟練の大卒や高卒の人を企業が喜んで採用してくれる国はほとんどないわけで、それによって若年失業率をずいぶん低く下げているというメリットはあります。しかし今の低成長、少子高齢化の中で、これをいつまでも続けていくことはできないわけです。高齢化が進む中で高齢者に年功賃金を払い続けていたら企業も持たない。それによって正社員の数も相対的に小さくなっているわけですね。ですから正規非正規の格差をなくすためにも、やはり今の日本的雇用慣行を部分的に修正していくと。具体的に言うと、同一労働同一賃金ですね。これは元安倍総理が強く言われた同一労働同一賃金の法律なんですが、法律自体はよくできています。ただ問題はですね、ガイドラインというものがありまして、このガイドラインに問題が潜んで いるわけです。規制の弊害は細部に宿ると昔から言われておりますが、このガイドラインに何が書いてあるかというと、正規社員と同じ勤続年数の非正規社員で同じ仕事をしている人には同い賃金でなきゃいけないと書いてあるわけで、しかしそんな非正社員はほとんどいないわけですね。正社員と非正社員の大きな違いは勤続年数の違いなわけで、こういうことをやめて勤続年数にかかわらず、同じ労働をしていれば同じ賃金だという欧米のやり方をやっぱり導入する必要がある。それによって本当の正規非正規の格差の是正にもつながるわけです。それからもう一つは、高齢者になっても働き続けるためにはやっぱりリスキリングというのが必要になってくるわけです。これも今重視されておりますが、リスキリングというのはオン・ザ・ジョブ・トレーニングではできないわけであって、あくまでもやっぱり仕事を離れて少なくとも1年、大学とか大学院に来て勉強していただく。そのためにはやっぱり雇用保険から補助が必要なわけです。現在も学費等については補助はありますけれども、休んでいる間の所得補償はないわけですね。ですからこれを育児休 業と同じような形の教育休業制度にしていくと。それによって安心して勉強することができるという仕組みですね。これができれば育児休業の男性による取得もさらに高まることになろうと思います。こういうふうにやっぱりリスキリングの重要性を考えるなら、それに伴う財源ということも同時に考えていかなければいけないわけです。今後の社会保障制度を支えるためにも高齢者が長く働く。それによって年金財政を守るためにも平均寿命の伸びに応じた年金の支給監視年齢の引上げというのが絶対不可欠なわけですが、残念ながら今始まった年金の審議会でも支給監視年齢の引上げについては全く触れていないわけですよね。だけどこれはやっぱり高齢化社会を乗り切るときには国民にきちっと説明した上で、エイジフリーの社会にして働ける高齢者はいつまでも働いてもらえるような制度的な仕組みをぜひ御審議いただければと思います。御清聴ありがとうございました。ありがとうございました。以上で公実人の御意見の陳述は終わりました。それではこれより公実人に対する質疑に入ります。質疑のある方は順次 御発言願います。
38:58
自由民主党の足立俊幸でございます。お二人の先生方には大変著名な先生方で大変お忙しい中、予算の審議のために御出席をいただきましてありがとうございます。心から感謝を申し上げたいと思います。私は長年建設省国土交通省で勤務をしたインフラ整備や災害対策を専門とする技術者でございます。その辺をベースにして今日は御質問をさせていただきたいと思います。日本のGDP、先ほど矢島先生の資料の中にもありましたけれども、アメリカなどが、中国などが持続的に上げてきているのに対しまして、日本はここのところほとんど横ばいということになっています。現在世界第3位ですけれども、間もなくドイツに抜かれるという話もあります。一時は世界第2位を誇っていたわけですので、とても残念なことだというふうに思いますが、特にアメリカ、イギリスがこの20年ぐらい見て いますと、2.5倍ぐらいですかね、伸びているの。それから韓国なんか4倍ぐらい伸びているんですけれども、そういう状況を見ると何とかしなくちゃいけない。そんなふうに思います。さらに国全体のGDPではなくて、先ほどの資料にもありましたけれども、人口1人当たりのGDPとなると、日本の順位はもう20何位というようなことで、大変低迷しております。一方、日本の賃金レベルにつきましても、OECD加盟国の中で見ますと平均の8割ぐらいという非常に低いレベルで、24位ということになっています。韓国が20位ですので、それにも遅れをとっている状況でございますけれども、GDPが先ほど1人当たりのGDPが20何位と言っているのと同じ傾向で賃金レベルも低い。これはまだ相関しているんだと思いますけれども、そんな状況になっています。賃金レベルが低いと、日本の優秀な人材が海外に流れ出していったり、あるいは海外の人たちが日本でなかなか働いてくれない。そんなことになってしまいますので、賃金レベルはしっかり上げていかなくちゃいけない。そのためには日本のGDPをしっかり上げていく、経済成長をしていくことが大事だというふうに思っています。お二人にお聞きしたいんですけれ ども、先ほども申しましたけれども、私は原子力省国土交通省で長年勤務をしまして、やっぱりインフラ整備だとか、防災のためのインフラ投資、こういったものが非常に重要だというふうに思っている立場なんですけれども、これから日本の経済を再び立て直して、日本が光り輝く活力のある国に戻っていくためには、どのように、特にインフラ整備なんかにつきまして、どういうような考え方で進めていくべきなのか、ご教示いただければありがたいと思います。よろしくお願いします。片岡光実に、ご質問にお答えしたいと思います。先ほどお話しいただきましたように、日本の、特に名目GDPでしょうか、こちらは過去20年、30年間、ほとんど横ばいの状況でして、特に諸外国と比べますと、その差は歴然としているわけです。これは様々な理由があると思いますけれども、一つ大きなポイントとしては、デフレがずっと続いていたというところが大きなポイントなんだと思うんですね。ですから、デフレが続いたことで賃金が上がらない、その結果国民の所得が全体として伸びない、こういう状況が長らく続いていたわけであります。ただ、2013年以降は、やや成長率については、名目成長率も2%弱ぐらい伸びている、こういう状況でありますので、ですから、その辺りは少しずつ改善が図られてきているのかなというふうにも私は見ております。ただ、そうした改善の中で、今後製造業、サービス業、特にサービス業だと思いますが、そちらの方々で働いている賃金が上がっていくということが重要であるということです。お尋ねの点なんですが、インフラ投資、これはちょうどご承知だと思いますけれども、高度経済成長期の頃にかなりインフラ整備をしまして、それが今、対応年数を迎えていると、もう超過したものもかなりあると思うんですが、そういう状況であります。こうした中では、防災絡みだけに関わらず、広く国民の生産性を高めるためのインフラ整備というのは必要だと思います。その中で、どのような形でインフラ整備を進めていくのかということなんですが、これは、単年度の決算、ないしは予算で毎年毎年計上していくというよりかは、中長期的な観点に立って、しっかり毎年インフラ整備の投資を支出していくと、これが大事だと思います。これがなければ、例えば建設業者の方たちから見ても、来年も再来年も安定的な仕事があるという前提に立たないと人が雇いません。それから、現状ですと、例えばブルドーザー等の工事用の機械を扱う方というのも非常に少なくなっていますし、スキルも非常に必要であります。こういったようなところを考えると、中長期的な公共投資の計画というものをしっかり立て、それを明示していくということが必要なんじゃないかと、このように考えています。矢城厚実人御質問ありがとうございました。まさにこれからの社会資本投資というのは、更新投資が重要になってくるわけで、そのときに今ある社会資本を全部更新しようとしたら、とても財源は足らないわけで、集中と選択が必要になってくるわけですね。ですからそこがやっぱり政治的にすごく難しいところだと思いますが、それはぜひやらなければいけない。それから都市と地方との格差ということが言われてきて、これまではどっちかというと、生産性の低い地方に重点的に公共投資をすることで、格差を是正しようという。公共投資を所得再分配の手段のように使ってきた面があって、これはやはり間違っているんじゃないか。公共投資はあくまでもそれが民間投資をどういうふうに刺激するかという補完的な役割で進めないといけないと思います。その意味でぜひ先生方に御議論いただいたいのは、今の東京一極集中是正というのがあたかも当然のように議論されている。東京一極集中に人が集まりすぎるから問題だ。昔の工場統理一規制法のように、今回は大学の二次所産区の規制ということが行われたわけですけれども、こういう規制によって日本経済を発展させるというのは不可能なわけです。ですから地方は地方で知恵を絞って頑張る。それも全体的に頑張るというのは無理ですから、地方の中核都市に集中して、福岡とか札幌とか仙台とかそういう元気のいいところに人口とお金を集中して発展させるというようなことで、東京はやはりこれからもっと世界の主要都市と競争するために発展しなきゃいけない面もあるわけですので、国内と国際の両面を見て適切な社会資本投資の配分をするということが必要ではないかと思います。以上です。
46:51
お二人の先生から貴重な御意見ありがとうございました。八代先生の御指摘の、おそらく地方を切り捨てるという意味ではないんだと思いますけれども、東京を強くして国際競争力を高める。そして私は併せてやはり地方もしっかりインフラ 基盤を整備をして、経済的にもある程度自立していくような、そういう地方にしていかなくちゃいけない。そんなふうに思っています。そんな中で公共投資の話を引き続きお聞きしたいと思いますけれども、予算110兆円を超える予算の中で、公共投資というのは先ほど片岡先生からお話がありました、当初予算において6兆円ぐらいの規模でございますので、規模的には本当に6%切るような、そんな予算になってしまっています。もう少し今言われたようなインフラ投資というのは、改めてしっかり日本も再構築していって、老朽化対策のみならず、やはり世界にもう既に負けてしまっている、例えば高速道路ネットワークだとか鉄道だとか港湾だとか空港だとか、こういった交通物流ネットワークをしっかり整える、再構築していくというようなインフラ整備をしっかりやっぱりやり直さなくちゃいけないというふうに思います。いろんな国に行って、日本のインフラ投資、工業事業、これじゃ駄目だなって、多分先生方も皆さん思っていらっしゃると思うんです。私もこの間シンガポールに行きまして、もう日本は全然ついていけないぐらいひどい状態になってしまっているなって痛感したんですけれども、そういったところをやっぱりしっかり将来のことを考えて立て直していく必要があるというふうに思います。残り時間限られていますので、申し訳ありませんが、片岡先生の方からお話を聞かせていただければというふうに思います。片岡光術人どうもありがとうございます。私自身も日本国内のインフラというのがやはり他国と比べて見劣りするんじゃないかという思いは海外に行くと非常に強く持っております。特にインフラ整備ということについて、ぜひ先生方に考えていただきたいのは、足元の予算の手当、例えば6兆円という話がございましたけれども、これが財政上非常にこれ以上出すのは厳しいなというふうにお考えの部分はあるかもしれませんけれども、公共投資というのは将来的に国民のメリットにもなるということですよね。生産性を高めたりとか、ないしは事業をするために必要な道路とかですね、そういったものというのは今の支出であるんだけれども、将来はそれが経済成長という形でおつりとして戻ってくると。そこの部分をやはりよく考えていただいて判断していただくことが大事なんだと思います。
50:11
大変貴重なご意見ありがとうございま した。以上で終わります。
50:28
はい。おはようございます。立憲民主社民の村田京子です。今日は両先生方貴重なお話どうもありがとうございます。まず片岡公術人にお聞きをいたします。先生の5ページ目の資料の中にも、経済成長なしの財政健全化、そして防衛費拡大は某国への道である、そういった記述がございました。この防衛費につきましては、今岸田総理の方からは、このGDP2%にする財源、これを1兆円を増税で賄うということで、法人税、たばこ税、復興特別所得税の流用といった話が出ております。またこの増税について、今国民が納得している状況とは言えませんし、また先ほどの先生の資料の中にも、消費税の増税が、やはり消費が落ち込んだ要因であったといった御指摘もございました。また私、もともとものづくり製造業の労働組合の出身でございまして、今まさに春党が行われているわけなんですけれども、やはりその中でも法人税の増税というのは、やはり労使交渉に影響を与えているというふうにお聞きをしております。やはり今回の防 衛費についての増税についてですね、片岡公衆議院の御見解と、やはりこれから所得拡大が課題だという意味で、今回の春党をどのように受け止めていらっしゃるか、この2点について教えてください。片岡公衆議院御質問ありがとうございます。防衛費の件についてお答えしたいと思います。名目GDP費で2%にするというのは、これは私自身ですね、その諸外国と比べてもですね、やはり1%というのは少ない水準だったわけですから、諸外国並みの水準にするということは望ましいんだというふうに理解しています。ただ、名目GDPが伸びない状態で2%をしてもですね、一旦は1%から倍に増えるかもしれませんが、それ以降は全く増えない状況になります。そうなりますと、今台湾情勢等々でですね、非常に諸外国からのプレッシャーというものが意識されている中、結果的に支出が伸びないという話になりますと、さらに名目GDP費3%、4%という形で、国民に過大な負担を貸すということにもつながるわけですよね。ですから、何が言いたいかと言いますと、成長なくしてですね、こういった防衛費の拡大という話もですね、持続不可能であると、こういうことが重要なのだと思います。ですから、成長と財政的な負担というものを両立させていくということが大事だというふうに思っています。それから2点目のご質問なんですが、すみません、もう一度お願いします。村田さんどうぞ。はい、先生、もう一度お尋ねします。今、春冬が行われている時期ということで、今の春冬への受け止めをお願いします。分かりました。ありがとうございます。春冬の件なんですが、インフルエンスが高まる中でですね、かつてないほど、賃上げの力というか、圧力というものが加わってきているように思います。例えば、皆様方も報道等でよくご案内かもしれませんけれども、大企業の一部ではですね、5%、6%、ないしは10%というような賃上げをですね、行う会社さんも出ていています。こうした話というのは、これまでなかった動きですし、その中で中小企業もですね、大企業の動きに引きずられるような形で賃上げをしていくという流れが出てきています。こうしたものは、私自身、先ほど八代先生の方から、アベノミクスは効果がなかったという議論があるという話がありましたが、私自身はアベノミクス効果があると思っているんですけれども、じわじわと、特に雇用の面を中心にですね、労働需要を刺激し続けることで、賃上げの圧力、コストプッシュの圧力というものが企業にかかっていると、こういったものが今、限界を迎えてきているんだと思うんですね。売上げを立てるためには、売り値を 上げないといけない。そのために、いい人を雇うためには、当然ながら賃金を上げなければいけない。こういう流れというのが、だんだん本格化してきているというふうに見えますので、この流れが続いていくということを非常に期待しているという次第であります。ありがとうございます。
55:00
片岡先生、どうもありがとうございました。続きまして、八代工術人にお聞きをいたします。先ほどの片岡工術人の方からも、いい人を雇うためには、賃上げをしないといけないということで、ここについては岸田総理、新しい資本主義というのを掲げて、リスキリング、日本型職務級の確立、そして成長分野への労働移動といったことで、構造的な賃上げを実現しようとしておりますけれども、ずっと制度規制改革、労働市場改革に携われてこられた八代先生から見られて、この新しい資本主義であったり、この構造的な賃上げで本当に日本の賃金が持続的に上がっていくのか、これについての先生の御見解をお聞かせください。