1:10
ただいまから、資源・エネルギー・持続可能社会に関する調査会を開会いたします。委員の異動についてご報告いたします。昨日までに、小野田紀美君及び久保田哲也君が委員を辞任され、その補欠として有村春子君及び杉久武君が占任されました。原子力とエネルギー・資源・持続可能社会に関する調査会調査を議題といたします。本日は、資源・エネルギーの安定供給確保と持続可能社会の調和のうち、資源・エネルギーの安定供給確保と持続可能社会の調和に向けた論点整理に関し、資源・エネルギー分野のイノベーションについて、3名の参考人からご意見をお伺いした後、質疑を行います。ご指摘いただいております参考人は、国立研究開発法人産業技術総合研究所理事長兼最高執行責任者石村和彦君、東京工業大学化学技術創生研究院 特命教授・全固体電池研究センター長官野良二君及び山梨県公営企業管理者村松実君でございます。この際、参考人の皆様に一言ご挨拶を申し上げます。本日はご多忙のところご指摘いただき誠にありがとうございます。皆様から悲惨のないご意見を賜りまして、今後の調査の参考に致したいと存じますので、よろしくお願いいたします。次に、比事の進め方について申し上げます。まず、石村参考人、官野参考人、村松参考人の順にお一人20分程度でご意見を述べいただき、その後午後4時頃までを目途に質疑を行いますので、ご協力をよろしくお願いいたします。また、ご発言の際は、助手をしていただき、その都度会長の許可を得ることとなっておりますので、ご承知おきください。なお、ご発言は着席のままで結構でございます。それでは、まず、石村参考人からお願いいたします。ご紹介ありがとうございます。三藻県の石村です。どうぞよろしくお願いいたします。今回、このような場で発言させていただく機会をいただきまして、本当にありがとうございます。僕が初めて国会で喋らせてもらいます。どうもありがとうございます。今回は、資源エネルギー分野のイノベーションということで、三藻県で 今、カーボンニュートラルに向けて取組をしていることを中心に、今日はお話をさせていただきます。最初に少しだけ経歴を紹介しておきます。僕は1954年に兵庫県に生まれまして、大学卒業した後、1979年に僕は機械工学だったんですけれども、当時はアサヒガラス、今はAGCと言っていますけれども、関西工場に入っています。結局、42年間アサヒガラスにいて、2020年、21年までアサヒガラスにいたんです。20年の時点ではまだ会長だったんですけれども、その時点で三藻県の理事長になれと言われて、会長を辞めろと言われて辞めて、取締役も発表していたので、1年だけ取締役をやりましたけれども、21年にはアサヒガラスを完全退社して、2020年から三藻県の理事長を拝命しています。経済同友会で今も代表副幹事をやっていますけれども、その中で皆さんが関係しておられる環境資源エネルギー委員会の委員長を3、4年やっていました。そこでは当時政府の再生可能エネルギーの目標値が22%だった時に、同意会としては40%の提言を出したと同時に、カーボンプライシングの導入というのも提言をさせていただいたのを覚えています。あと、科学技術イノベーション委員会の委員長をちょうどやっていた時に、三藻県の理事長になれと言われたのですけれども、そこではオープンイノベーションがいかに日本の中で少ないのかということで、オープン イノベーションの重要性ということを同意会で提言させていただいたという記憶がございます。まず、三藻県の概略について簡単にご紹介させてもらいます。三藻県は、御存じのように経済産業省所管の特定国立研究開発法人です。我々のミッションは、単に研究をしているだけということではなく、研究成果で社会課題解決と産業機能をする強化をせよと。ミッションで主に実用化に近い研究を実施している研究機関だと認識いただければと思います。現在、約2200名の研究職員と700名の事務職員、総合職がいます。それ以外に、企業からの研究員の方、また大学からの研究員の方、総勢で約1万名ほどが活動している機関になっています。2022年の総収入額は、補正予算も含めますと、1,800億円程度になっています。活動拠点は、筑波を中心にして、全国12箇所で活動しています。活動領域は、7分野ということで非常に広い領域で、後ほどまた説明しますが、原子力以外はほぼカバーしているという研究機関になっています。我々の大きな目標は、産総研が中核となって、企業や大学、また交代機関とも連携しながら、日本の中に次々にイノベーションが生み出されるようなエコなシステムを作っていこうと、我々はナショナルイノベーションエコシステムと呼んでいますが、これを日本の中に実現することを目標として活動しています。このエコシステムの実現のためには、研究成果を速やかに社会へ実装していくことが不可欠です。そういう意味では、社会のニーズから研究をしていく必要があり、それをやる機関として、昨年、株式会社ISOソリューションズを設立しました。ここでは、社会課題に貢献する事業を提案して、それに必要な研究開発を産総研がしていくということを今実施しているところです。今、マーケティング人材を中心に160名の体制で活動をしています。これが、先ほど言いました7つの領域ですが、本日のテーマであるカーボンニュートラルの実現に向けた研究開発は、この7領域のうち、エネルギー環境領域で主に行っています。ただ、当然のことながら、ここにはデジタル技術も含めて、バイオンの技術、材料の技術、いろいろな技術が必要になってくるので、他の領域も関与して、産総研全体として総力を挙げて、カーボンニュートラルの問題には取り組んでいるところです。また、政府のエネルギー政策と密接に連動しながら研究開発を行っている機関です。本日は、カーボンニュートラルの実現に向けた産総研の取組として4つご紹介します。まずは、国家戦略に基づく技術開発の代表例を5つほどご紹介します。また、企業と共同研究をして、この中から清水建設と日立造船との共同研究の事例をご紹介します。さらに、共通基盤データの整備提供としてIDEAをご紹介します。また、国際連携についても、RD20という国際会議についてご紹介します。これは、日本の国家プロジェクト、カーボンニュートラル、CO2排出削減に向けた国家プロジェクトの全体像です。電力分野、非電力分野、小電力、小エネルギー、ネガティブエビッションと、幅広い分野でいろいろな研究をしていく必要があるというのが国家の戦略です。革新的環境イノベーション戦略ということで、カーボンニュートラルの革新技術として、国として39のテーマが挙げられています。このうち、黄色で示した34のテーマについては、3層圏が関与しながら取り組んでいるところです。このうち、今日いくつかのテーマをご紹介します。電池は当然入っているのですけれども、カノン先生が今日いらっしゃいますので、電池のところはほぼしゃべらないようにしようと思っています。例えば、このような技術開発に取り組んでいます。風力発電では、風車を制御して発電電力を高める研究であったり、地熱発電では、持続的効果的に発電するための地熱のモニタリングなどを実施しているところです。また、次世代太陽電池、水素、アンモニアの利用、またCCUSについては、後ほど少しだけ詳しくお話をします。3層圏、このような研究を主には、GZR、ゼロミッション国際共同センターということで、G20各国が集まりながら、こういうのをやろうということで作った研究機関です。主に基礎的な研究を中心にやっている。もう1つは、フレアというのが、これが福島再生可能エネルギー研究所ということで、ここはまさに再生可能エネルギーを中心に福島の郡山で実施しています。この東日本大震災からの復興支援の一環として、このフレアというのが2014年に立ち上がって、そこで研究をしているという機関になっています。この国家戦略に基づく技術開発の例として、1つ太陽電池の例として、ペルボスカイトの太陽電池についてご説明します。これは日本初の技術であるペルボスカイト太陽電池というのは、既存の、今一般的に使われているシリコン太陽電池の10分の1以下の重さになるということが言われています。かつフレクシブリであるということで、どこにでもつけられる。軽くてどこにでもつくということから、自動車であったり 、大火事の低い工場、倉庫の屋根であったり、ビル、住宅の壁面などへも設置できる太陽電池として期待されているところです。三藻県では、独自材料の開発を実施していて、今、発電効率24%以上という世界最高レベルの発電効率、返還効率を達成しているところです。三藻県では、この2030年の本格的な社会導入を目指して、耐久性の向上、また量産化、大面積化に関する研究開発を進めているところです。次に、アンモニアについてです。アンモニアは、直接燃料として使用できる水素エネルギーキャリアであります。三藻県では、東北大学と共同で、100%アンモニアを燃料としたガスタービン発電に、世界で初めて成功しています。現在、この技術の実証研究を関係企業と共同で進めており、2025年の実用化を目指しているところです。次は、EFUELです。これも国家戦略に基づく研究開発の例です。三藻県では、合成燃料、EFUELを製造する技術の開発も進めています。EFUELというのは、CO2と再エネ由来の水素を反応させて得られるガソリンなどの液体燃料のことです。欧州を中心に実証授業が始まっていますが、コスト低減が最大の課題です。三藻県では、低コスト化に向けたCO2と水の強電解システムによって得られ た一酸化炭素COと水素の反応を組み合わせたEFUELの一貫製造プロセスの開発を行っています。世界的に見ても新しい効率的なプロセスです。現在、EFUEL製造プロセスのベンチプラントを三藻県内に整備しており、2024年中の運転開始を目指しているところです。次に、CO2を空気から大気から分離回収していく必要があるわけです。そのために、大気からCO2を直接回収するDACという技術が必須になってきます。この得られたCO2を先ほどのCO2と水素を使ってEFUELを作る、このような仕組みに回していきたいと考えています。DACの実証は、欧米を中心に進められていますが、現行の技術は多量の熱エネルギーを所有するシステムになっています。三藻県では、原理的に熱を必要としない膜分離法に注目して、高い洗濯率で大気中のCO2を濃縮できるイオン液体を用いた膜分離法を開発しているところです。現在は、このモジュールの開発を進めています。2026年から2027年頃には実証装置を設置し、2030年頃には膜分模充を常視したいと考えています。もう一つ、国家戦略に基づく技術開発の例です。太陽光発電などの変動するエネルギーを有効利用するには、電気エネルギーによって水を水性と分解して、化学エネルギーとして貯蔵する技術が重要になってきま す。三藻県では、現在、再エネが大量に導入されている状況を想定して、大型の水電解装置の性能を評価できる、世界的にもユニークな拠点を構築しました。これを活用して、関係企業とともに、さらなる効率の改善など、実用化に向けた実証研究を進めていくところです。次に、企業との共同研究の例を2つ紹介します。一つ目は、水水建設との共同研究です。水素を活用してビルのゼロエミッション化を可能にする技術の開発です。三藻県の水素急増合金の技術と、清水建設のエネルギーマネジメント技術を組み合わせて、ハイドルキュービックと名付けた水素エネルギー利用システムを開発しました。現在、低コスト化への取組を加速しているところです。また、この水素急増合金を活用して、山梨県で生産したグリーン水素、東京都が利用する社会実装事業を臨海副都心の青海地区で開始しているところです。次の例は、日田地蔵船さんと共同研究している例です。三藻県と日田地蔵船は、国内で毎年約230万トン発生している下水汚泥を水素などに転換する独自の装置やプロセスの開発に成功しました。この技術によって、下水処理上の省エネや低炭素化が可能になります。現在、その実証化に向けてスケールアップとして、フィールド試験を計画中です。続いて、共通基盤データの整備・提供に対する取組をご紹介します。カーボンニュートラルに向けては、各製品に起因するCO2排出量、いわゆるカーボンフットプリントを可視化して、低酸素の製品が選ばれるようにすることが重要です。カーボンフットプリントを算出するには、サプライチェーン全体のCO2排出量を見積もる必要があり、信頼できるデータベースが必要です。産総研は、ほぼ全ての種類の製品や原材料の排出源単位を網羅したデータベース「IDEA」というデータベースを提供しています。世界3大データベースの1つです。カーボンニュートラルへの国際的な流れの中で、日本の製品が競争力を持つには、その優位性が適正に評価されることが必要です。そのためにも、フェアな正しい計算方法と実態を正確に表したデータベースが世界で使われるようにしていくことが重要であり、IDEAが世界表示になるように頑張っていこうと考えています。産総研は、これ以外にも海外の研究機関との国際連携も進めているところです。2019年に当時の安倍総理の提案によって、G20各国の地域の主要な研究機関が、カーボンニュートラルの実現に向けて研究開発の国際連携を進める枠組み「RD20」が設立されました。この「RD20」の国際会議を産総研が主催して毎年開催しているところです。この国際会議では、太陽光発電や水素などの分野で標準化などに向けた議論を進めています。また、各国の若手研究者育成のためのサマースクールも実施しているところです。最後に、カーボンニュートラルに向けたイノベーションについて、私なりに考えていることを述べさせていただきます。この分野では、海外企業もカーボンニュートラルの動きを積極的に捉えて、市場獲得に向けて技術開発を精力的に実施している状況があります。また、各国政府もそうした企業に対して多額の支援を行っています。そのような中で、日本もスピードをもって研究開発を進めていくことが重要です。例えば、水素やアンモニアの製造利用などについては、まだまだ日本にはチャンスがあると考えています。一方で、水素やアンモニアなど低炭素のプロセスは、技術開発によって実用化できても、当面は現状よりコストアップになるということが考えられます。開発した技術によって海外市場を獲得できるかどうかは、国際的なルールに依存するところが大きいです。したがって、日本がルールづくりをリードしていくことが重要です。例えば、カーボンプライシ ング、国境調整付きのカーボンプライシングは、一つの合理的な手法だと考えています。カーボンプライシングは、低炭素製品への転換促進に有効な方法だと考えられます。しかし、海外から炭素排出量の多い安い商品が入ってきては意味がありません。輸出競争力への悪影響も出ると思います。したがって、国境調整付きのカーボンプライシングにより、産業競争力を維持しつつ、日本が先行してカーボンニュートラルを推進して、世界に広げていくべきだと考えています。併せて、先ほど紹介した、イデアのような合理的なカーボンフットプリントの産出方法を国際的なルールとすることによって、国際的にフェアな課金を実現していくことが重要だと考えています。以上で私からの発言とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
23:37
ありがとうございました。次に、関野参考人にお願いいたします。
24:01
私からは蓄電池、電池の開発について意見を述 べさせていただきます。電池、エネルギーを貯める役割を担っています。エネルギーを効率よく利用するための重要なデバイスで、現在、EV、電力貯蔵などの利用を目標として開発競争が激化しているデバイスの分野です。今日の私の意見の内容は、その電池を個体にしようという基礎研究の取り組みをご紹介させていただきます。電池、池と書きますが、電気を池に貯めると書きますが、通常電池には電解液を用いています。その液の部分を個体にしてしまうという試みです。個体電池は古くから知られていましたが、この電池がエネルギーを蓄える電源の主力となることはとても考えられていなかった。まさに夢物語だったのですが、幸いに2011年、我々が液体電解質の特性とほぼ同じ、もしくはそれより上の材料を個体で見つけることができ、それをきっかけに個体電池が次世代の電池のトップバッターとして踊り出たという経緯があります。今日はその詳しい内容をかいつまんでご紹介させていただきたいのですが、基礎研究である物質開発、材料研究、それからスタートして研究室レベルの電池開発、その次に産業に引き継いだ実デバイス開発、そのあらすじというものを雰囲気を感じ取っていただければと思います。今日の内容ですけれども、蓄電池の役割、歴史、ロードマップを最初に少しお話しさせていただいて、我々の研究の内容、少し細かいスライドを準備しましたけれども、かいつまんでご紹介させていただきたいと思います。さらに今後の課題、将来と話をさせていただきたいと思います。まず電池の歴史です。電池は1800年にボルトが発明して、その後、鉛蓄電池、万願乾電池が相次いで開発され、1990年、91年にニッケル水素リチウム4電池が開発されました。このリチウム4電池というのは画期的な電池です。しかし鉛蓄電池は今も産業を支える重要なデバイスですし、リチウム4電池も開発から30年を経てようやくEVに搭載されようと。電池というのは、かくも開発に時間がかかり、かつ一旦社会に受け入れられた際には長く使い続けられるというデバイスであるということをまず述べたいと思います。リチウム4電池の素晴らしいところ。それまで水溶液の電解液を使っていたんですけれども、有機溶媒系、水の分解電圧である1.2Vを打ち破ったという点が画期的な電池です。この電池、ノーベル賞の吉野先生、はじめ皆さんもご存知のことと思います。この電池がようやく車の主力電源として現在使われようとしている。この電池を、次の電池があるのかというのが基礎研究の大きな目標です。電池というのは、単位体積、単位重量あたり、エネルギーをどれくらいたくさん詰め込むか。エネルギーのいわば缶詰です。したがって、エネルギーをたくさん詰め込むほど良い電池ということになり、この左上のグラフにありますように、鉛蓄電池からリチウム4電池、さらに様々な次世代の電池が提案され、それに向かって各国、各地域、プログラムを組んで電池の開発が行われています。そこで固体電池というのが、このリチウム4電池の次のデバイスであろうというように現在期待されているわけです。ただ、このロードマップに、20年前、15年前は固体電池はなかったので、いかに新しいデバイスを見つけ出すかということは、このロードマップを描くことにも重要であることが認識していただけると思います。では、固体電池にしたときにどういうメリットがあるのかというのが次のグラフです。