19:45
これより会議を開きます。内閣提出、特定電気通信駅務提供者の損害賠償責任の制限及び、発信者情報の開示に関する法律の一部を開設する法律案及び、第212回国会岩谷良平さんほか、1名提出、特定電気通信駅務提供者の損害賠償責任の制限及び、発信者情報の開示に関する法律の一部を開設する法律案の両案を一括して議題といたします。
20:17
これより質疑に入ります。本日は、両案審査のため参考人として、都名の門・南法律事務所弁護士植沼篠さん、留国大学法学部教授金三巡さん及び、国際大学グローバルコミュニケーションセンター準教授山口真一さん、以上3名の方々にご出席をいただいております。
20:43
この際、参考人各位に一言ご挨拶を申し上げます。本日は、ご対応中のところ、当委員会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から、忌憚のないご意見をお述べいただきたいと 存じます。次に、議事の順序について申し上げます。まず、各参考人からそれぞれ15分程度でご意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。なお、念のため申し上げますが、ご発言の際には、その都度、委員長の許可を得て、ご発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は、委員に対して、質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめご承知をおき、願いたいと存じます。それでは、まず、上沼参考人、お願いいたします。
21:42
ただいまご紹介に預かりました、弁護士の上沼と申します。本日は貴重な機会を頂戴いたしまして、ありがとうございます。私は、誹謗中傷等違法有害情報対策に関するワーキンググループの副主査として、本改正の前提となる検討会に携わってまいりました。その立場から、本件に関し、少しご意見を述べさせていただきたいと思います。お手元の資料に沿って、お話をさせていただこうと思います。まず、本検討の前提としてのSNS利用の現状について、お話をさせていただきます。もう皆様、ご承知のところだとは思いますが、インターネット以前については、意見表明の機会というものがマスメディアにしかなく、各人はそれぞれの小さな規模のグループの中でお話をするだけということになっていました。ところが、インターネット時代により、各ユーザーがそれぞれ意見を表明する機会を世界に対して持てるようになったということが、一番のインターネット時代の特徴かと思っております。おめくりいただいて、次のSNS利用の現状のソーシャルメディア利用者数の推移を呼ぶ予測のところをご覧ください。これを見ていただければわかるとおり、ソーシャルメディアの利用者数というのは増加の傾向を示しており、これが減少するということはおそらくないというふうに思われます。それを前提に、その6ページをご覧いただくと、要するにインターネット上の世界というものが、相鄰関係と持つことができるのではないかというふうに思われるわけです。法的紛争の典型例に、相鄰関係というお隣同士の紛争というものがあるわけですけれども、これは人同士が接触があると一定の摩擦が生じ得るということを表しているものです。人が多くなり、接触の機会が増えると、どうしても摩擦が避けられないということになります。おめくりください。7ページが、インターネット空間における人と の関係を示した模式図になります。このように、インターネット上では、人と人とが常にお隣同士という関係になっており、これはどうしても摩擦が避けられない状況かというふうに思います。ここで、白い丸で示されている部分というのが、いわゆるプラットフォームということを、私としては示したものということになります。ここのプラットフォームごとに、街というかコミュニティを形成しており、そのプラットフォーム事業者がそれぞれの街をつくっているというようなのが、インターネット上の社会というふうになると思います。これを前提に、本改正の背景についてご説明いたします。8ページ目ですね。これは、私がリーガルアドバイザーを務めている総務省の受託事業である、インターネットの違法有害情報相談センターの相談件数です。このとおり、増加の傾向を示しており、これが減少するということは基本的にはございません。若干、減少部分が見えるのは、コロナの対応により、人との接触が若干増えたことによるものかと思っております。おめくりいただければと思います。このように、インターネット上の相談が増えているということに対し、被害者の救済手段として何があるのかということを示した図が9ページにあります。被害者の救済手段としては、過去の権利侵害に対する損害賠償と、現在、権利侵害の情報がネット上に載っていることについて、現在進行形で進行する権利侵害に対する削除という2つの救済手段がございます。このうちの過去の部分に関しては、2022年10月施行のプロバイダー責任制限法の発信者情報開示請求の手続きの簡易化によって、ある程度の手当てがなされているところです。これに対し、削除については、今のままではプロバイダー責任制限法が制定されたときから、特に手当てはされていなかったというものでございます。ところが、被害者にしてみれば、削除がされない限り、現在進行形で侵害が継続するので、削除が極めて重要な手段であるということになります。それを前提に、その10ページのお話になりますが、先ほどインターネットの社会についてお話ししたときに、それぞれのコミュニティというか、街をプラットフォーム事業者が作っていると考えることができるのではないかというふうに申し上げました。プラットフォーム事業者がインターネット上の権利侵害情報に関して、どのような関わりがあるかと申し上げますと、まず、権利侵害情報に関し、条理上の削除義務を負うということが裁判例で言われております。また、自ら管理する場所の利用ルール、自ら作った街のルールを自らが決定できるということもあります。さらに、今のインターネットの世界では、ネット上、プラットフォーム上に発言ができるかできないかということで、意見表明の機会の場があるかどうかということが重要ですので、事実上のパブリックフォーラムとしての側面、そして街ですので、いわゆる被害者と加害者の双方が混在するというのが、プラットフォーム事業者の特性でございます。このような前提に基づき、今回の改正のポイントをおめくりいただいた11ページからお話をさせていただきます。改正のポイントを3つお話しさせていただきますが、まず1つ目が、被害者救済のための事業者による削除対応の迅速化というところです。先ほど申し上げたとおり、削除がされない限り被害が続くということですので、被害者から見てわかりやすく、迅速な削除のための体制整備というのが非常に重要です。具体的には、そもそも削除のための窓口がわからない、あるいは日本語で削除請求ができない、などいうことがないように、わかりやすい窓口と手続きを整備していただきたい。そして、一旦削除請求をした後に、削除の対応がされているのかされていないのか不明であるということがないように、一定期間内での対応を要請したいというふうに思っています。この場合の期間の目安に関しては、過去の楽天チュッパチャプス事件などの裁判例及びアンケート結果などにより、1週間程度が妥当ではないかとは考えておりますが、これは法律では14日以内というような規定になっていると承知しております。そして2つ目のポイントが、事業者による削除等の運用状況の透明化です。事業者が策定するルールは、まちづくりの基本であります。まちに適応するルールは、ユーザーである住民にとって重要な関心事です。あらかじめ何が削除の対象になるかということは、明らかになっているべきだというふうに考えます。そしてこの部分に関して、14ページですけれども、違法有害情報に関しては、この4つの分類で検討することが多いわけですけれども、左半分は違法情報ですので、もともと法律で禁止されている、あるいは権利侵害という情報です。そのうち右の部分は、法律で決められていない情報ですので、どのような情報を削除するかしないかということは、事業者自体が決定する必要があるということです。決定したものは、あらかじめルールとして明示しておいてくださいということをお願いしたものが、この透明化ということになります。さらにおめくりいただいて15ページです。事業者による削除等の運用状況についても、透明化を徹底していただきたいというふうに考えております。ユーザーが町の住民であることからすれば、事前にルールが明らかになっているだけではなく、一旦自分が削除の対象、あるいはアカウントバン、そもそもサービスの提供が受けられないというような措置を受けた場合に、何が削除対象になったのか、あるいはならなかったのかということを知らせていただきたいと思うわけです。そうでなければ、何が起こったのかもわからず、安心して町には進めませんし、仮に対象、行われた措置が不服であった場合であっても、それに対する不服も仕立てもできないということになります。そういう意味で、運用状況についての透明化というのも非常に重要なものだというふうに理解しております。最後に、これも重要な点ですが、一番最初に申し上げたとおり、インターネットにより意見表明の場というのが、各個人に対して機会が与えられるようになりました。これは非常にメリットだというふうに思っております。その一方で、それが表現の自 由として尊重されるべきことではありますが、その一方で被害者の救済というのも非常に重要なことであります。そのバランスをどういうふうにとっていくのかということを重要だというふうに考えておりますので、このバランスをどういうふうに検討するかという結果が、今回の改正というふうになっており、基本的にはあらかじめ、透明化していただく、そして迅速に行うべきことは対応していただくということを、マチをつくったプラットフォーム事業者の方に自主的に取り組んでいただくということで、このバランスをとっていきたいなというふうに考えている次第です。私の方からは以上となります。
33:34
おはようございます。金三郎君と申します。それでは私の意見を述べさせていただきます。資料にございます1ページ目の1-5、これが概要ですが、私の意見でございます。では、それに基づきまして、以下説明させていただきます。この現状のプロバイダー責任法では、いわゆる権利侵害者、被害者が、いわゆる発信者、利用情報を投稿した者が誰であるのかということを特定し、それに基づいて損害賠償について定める、そういったようなことを主に規定してきました。他方で、プロバイダーの責任を制限するというふうな立て向けになっております。そこでは、いわゆるデジタルプラットフォーム、いわゆるSNS事業者に対して、いわゆる内部浮上処理の制度と、制度並びにその透明性については、何ら法的には定められてこなかった、というふうなことでございます。しかし、この間、ヘイトスピーチをはじめとして、さまざまな違法情報が、社会の中で問題になる中、2020年9月、総務省というのは、インターネット上の誹謗中傷への対応に関する政策パッケージということを策定し、プラットフォーム事業者の取組支援と透明性アカウンタビリティ向上を促進してまいりました。ここで、いわゆるソフトロー、いわゆる非規制的な方式でSNS事業者に事業内容開示を求めるというふうなやり方を取ってきたわけでございます。しかし、2020年3月7日、ツイッターの清水氏の発言がございました。そこでは、開示をする流を議論されていないまま、開示することを求められているような気がしますとの、いわゆる法的根拠ないしは規制のないまま、自らの事 業の内容を開示しなければいけないことの流、これについて反論があったわけです。これは非常に、総務省等々でも非常にショックを与えたというふうなことでございます。そこで、2020年8月、総務省の研究会が公表した第二次取りまとめでは、プラットフォーム事業者による運用の透明性やアカウンタビリティの確保が不十分であるというふうなことから、行政からの一定の関与というものが必要であるということが、既に具体化されたわけでございます。そういった中、今回の法案につきましては、いわゆるSN上の違法情報による被害の深刻化を前にして、情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律として、事態の改善のために大きな一歩を踏んだというふうに評価できるかと思います。その上で、本案に言及したいと思います。まず、定義についてでございます。第2条、第2条の6号ですね、2ページ目。侵害情報につきまして、特定電気通信による情報の流通によって事故の権利を侵害されたとするものが、当該権利を侵害したとする情報に由というふうに定義されております。しかし、この日本におきまして、インターネット上の問題が起きた大きな一つの理由というものは、明らかに2010年以降、巻き起こったヘイトスピーチの問題ではなかったのではないでしょうか。いわゆ るヘイトスピーチなどの差別的言動にあったのではないでしょうか。その証拠として、2016年以降に施行された反差別法をごらんください。いわゆるヘイトスピーチ解消法を2016年6月に施行されました。これを皮切りに様々な法律ができたわけです。例えば、ブラック差別解消法の1条によりますと、この法律は現在もなおブラック差別が存在するとともに、ここです。情報化の進展に伴ってブラック差別に関する状況の変化が生じているというふうに、明らかにインターネットの問題を指し示しているわけでございます。米印にきまして、ヘイトスピーチ解消法の、こちら衆議院の附帯決議などを見てみますと、ヘイトスピーチ、この1号で、ヘイトスピーチというのは何も外国人だけに向けられるものではないというふうな注意書きが示され、かつ3号で、ここです。インターネットを通じて行える本邦外出身者に対する不当な差別的言動を助長し、または誘発する行為の解消に膨らんだ取組に関する施策を実施することというふうな附帯決議が示されるように至っております。これを受けて、2019年3月8日、法務省人権擁護局調査局旧作課長の異名通知によりますと、集団等が差別的言動の対象とされている場合であっても、1、その集団等を構成する自然人の存在が認められ、かつ、2、その集団等に即するものが精神的苦痛を受けるなどの具体的被害が生じている、またはその恐れがあると認めるのであれば、特定の者に対する差別的言動があったというふうに評価すべきというふうな異名通知が出されるように至っております。そういったようなことを踏まえまして、3ページ目の真ん中、②に提案をさせていただきたいと思います。2条の定義に、不当な差別的言動という規定を入れるべきだろう、というふうなことでございます。それは、不当な差別的言動、総務省令で定める要件に該当する言動のことを言う、という一文を加えるべきではないか、というふうな提案でございます。この、総務省令で定める要件に該当する言動とは、先ほど示しました2016年以降に施行された反差別法のことを指します。または、以下にあります不当な差別的言動、公然と以下の要件を示すべきではないか。この要件は、昨年出版されました国連高等弁務官事務所、包括的反差別法制定のための実践ガイドライン、これに基づいて作成させていただきました。これにより、第2条ですね。侵害情報というものは、特定電気通信による情報の流通によって事故の権利を侵害されたとするものが、当該権利を侵害したとする情報、または、総務省令で定める要件に該当する不当な差別的言動を言う、というふうにですね、規定す べきではないか、というのがですね、私の提案でございます。はい、それが3ページから4ページに行きます。で、3番目。侮辱罪の重罰化でございます。この間ですね、刑法231条の侮辱罪がですね、改正され重罰化されました。これは、いわゆる被害者のですね、保護というふうな観点で、大きな変化があったというふうに言います。それによって刑事訴追事項がですね、1年から3年に伸びるというふうなですね、変化もございます。しかし、この刑法230条の名誉毀損並びにですね、侮辱罪231条を含めてもですね、日本ではですね、年間の有罪件数が200件足らずです。それに対してですね、ドイツではですね、3万件ある。これをどのようにですね、見るかというふうなことです。同じですね、法文化を持つですね、ドイツと日本においてなぜこれだけ違うのか。いわゆるその精神的な法域、精神的な名誉というふうなものについて、日本とドイツでは価値が違うのかというふうなですね、問題をですね、私たちは直視すべきではないかというふうに思います。そういったようなことから、いわゆる捜査機関における精神的法域の被害に対する認識の改善の必要性がですね、まず何もってなければいけない。被害者により沿ったですね、警察による聴取というふうな手続けがなければいけないというふうにですね、考えます。2番目、侵害情報送信防止措置、いわゆる削除の問題であります。なぜ削除が必要なのかというふうなことでございます。これはですね、削除の目的で情報の拡散を防ぎ、被害を最小限にですね、とどめるというものなんです。先生方ご存じのようにですね、インターネットの情報はコピペされ、そしてシェアされるわけです。そうすることによって発信者でももう手がつけられない状況になる。そしてそれによってどうなるか。例えば、今私の話をですね、先生方はですね、お弁当を食べたらして忘れてしまうわけです。何話してたか、忘れるわけです。インターネットの情報は忘れられないです。ここが問題です。で、こういったようなですね、点に考えまして、インターネット上に訂正された情報は速報性、広域性、拡散性に特徴があり、その情報がコピーされ、シェアされ、インターネット上に残る限りですね、被害者の侵害は継続されるわけです。終わらないんです。ここがいわゆるオフラインのですね、名誉毀損とは違うところでございます。また脅迫とは違うところでございます。その意味でこの間のですね、この26条の申出からですね、16日というですね、期間が、果たして妥当かというふうなことにですね、着目をすべきだろうというふうに思います。で、そこで4ページ目の下からですね、ヨーロッパの動向ということで、2015年からですね、一連のですね、動きがございます。で、えー、例えば2016年にはですね、欧州議会でオンライン上の違法なヘイトスピースの戦いに対するプラットフォーム行動を規範するというものが立てられて、そこではですね、24時間以内にですね、迅速に削除しなさい。なぜ24時間というと、そのインターネット上の違法情報がですね、拡散し、そして差別が助長されること、ないしは先頭されることを最小限にですね、するというふうな目的がございます。そういったことで、それを具体化したのが、ドイツのですね、ネットワーク執行法3条2項でございます。ここでは、えー、24時間のですね、削除審査をですね、しなさいということがですね、明文化されるに至りました。で、そうでなくてもですね、24時間でわからなければ7日以内、そしてそれでもわからなければ、独立した規制機関に、判断機関に委ねなさいという3本柱で判断枠組みができております。で、そういったことが、そういうこと、すいません、そういったことを受けてですね、えー、ヨーロッパではですね、デジタルサービス法というものがですね、規則としてEU県内にですね、あのー、施行されるに至りました。そこでもですね、意識されているものは、まさにヘイトスピーチの問題であったわけでございます。で、それが5ページから6ページにあります。とりわけ、全文パラの80を見てください。いわゆるシステムリスクに対するですね、あのー、言及がございます。いわゆるヘイトスピーチやですね、自動性的虐待のですね、描写というものがですね、インターネット上掲載される。それによってですね、いわゆる社会からの排除、そして民主主義から、民主主義のですね、我解というですね、いわゆる二次被害、三次被害が起きる。これがまさにシステム、システミックリスクなわけです。で、そういったようなものについて、慎重にですね、あのー、検討しなさい。また、えー、プラットフォームに対しですね、対応しなさいというふうなことが迫っているわけです。そういったようなことからですね、ここでも最後にありますように、24時間以内の削除の手続きをですね、事業者に求めなさいというふうなことが示されています。で、現在ドイツでもですね、このデジタルプラットフォーム、デジタルサービスを施行されていますけれども、同じくですね、いわゆるヘイトスピーチ等々に対しては、24時間以内の削除の実務が行われているわけでございます。で、最後に、本立法はですね、いわゆる民事法、そして行政法からですね、いわゆる刑事法にですね、移行したわけでございます。なぜなら、本法のですね、罰則として、公勤刑、そして罰金刑が示されております。で、そういったような検知からして、35条、37条、38条に罰則があるわけですけれども、本法にですね、至る所にですね、総務省令で定めるというふうなですね、文言があります。これは、いわゆる市民にですね、事前予測可能性をですね、失わせるというふうな観点で大きな問題をはらんでいます。すなわち、いわゆる白字立法の問題でございます。で、これはまさに在刑法廷主義からですね、非常にですね、懸念すべき問題であるというふうに考えておりますので、その是正が求められると思います。私の意見は以上です。ありがとうございました。
47:15
皆さん、おはようございます。ただいまご紹介いただきました国際大学の山口と申します。この度は大変貴重な機会をいただきまして誠にありがとうございます。では、お手元の資料ですね、こちらをご覧いただければ幸いです。まず2ページ目、簡単に自己紹介をさせていただきます。私は経済学博士でして、特に専門は計量経済学というデータ分析手法の一種です。私はその手法を使って、SNS上のフェイクニュース、誹謗中傷、ネット炎上といった諸課題について実証研究を主にしております。今日の関連するところで申しますと、 総務省のデジタル空間における情報流通の健全性確保のあり方に関する検討会などで構成員を務めさせていただいております。私は法律が専門ではございませんが、そういった実証研究を専門としている立場からお話しさせていただければ幸いです。では、ページをめくっていただきまして、3ページ目。まずは、現在のインターネット上の誹謗中傷の現状についてお話ししたいと思います。以前、下のほうに参考文献が載っておりますが、2023年に誹謗中傷に関する大規模調査結果というものを公表しております。そのときは、脅迫、強括や侮辱、攻撃などの9つの誹謗中傷に関しまして、それぞれどれくらいの人がSNSなどのネットサービスで過去1年以内にダイレクトメッセージやリプライという直接わかる形でされたことがあるかといったことを調査いたしました。その結果が左側の図1ですね。一番下のオレンジの部分が、いずれか1つ以上経験したことのある人の割合なんですけれども、4.7%ということで、だいたい21人に1人ぐらいはすでに過去1年間で経験があるということが言えます。しかもそれを青年代別に見たものが図2です。真ん中の図2となります。こちらをご覧いただければわかるとおり 、若い世代ほど誹謗中傷被害にあっているんですね。ですからこれはもちろんインターネット上の問題なわけですけれども、同時に青少年のインターネット利用における課題ということも言えるかなと思います。さらに総務省のプラットフォームサービスに関する研究会の第三次取りまとめでは、図3のようなグラフが引用されていると思います。他人を傷つけるような投稿ですね。誹謗中傷されたことがある人というものが18.3%というふうになっております。結構違いが出ておりますが、もちろん対象としたサンプルの違い、あるいは直接の攻撃に絞っているかどうかなどが影響していると思いますが、いずれにせよ少なくない方がインターネットを利用して誹謗中傷の被害に遭ってしまっているということは否定できない事実としてあるかなというふうに思います。では次のページに参ります。4ページ目ですね。こういった被害が出ている誹謗中傷に関しまして、どのような社会的影響があるでしょうか。まずあるケースでは、図4で示しているんですけれども、ある方がネット上で誹謗中傷を大量に受けたと。それこそ開示請求して裁判を起こした結果、わかったのが、被告の男性が200以上のSNSアカウントを使ってこの方に攻撃していたということなんですね。このように大量のアカウントを使って大量に攻撃する、こういったこともインターネット上では起こっております。また皆さんもご存知のとおり、インターネット上で誹謗中傷を受けて、それを一員として自ら命を絶ってしまうような事例というものも国内外で発生しております。こういった誹謗中傷の恐ろしいところは、一つ一つももちろんつらいメッセージなわけですが、それが大量に来るということ、これが非常に大きな特徴かなというふうに思います。このように精神的な負荷とか、あるいは命を絶つということだけではございません。誹謗中傷が原因で表現の萎縮が起こっているということも明らかになっております。例えば図5、こちらは同じく私が2023年に発表したジャーナリストへの誹謗中傷の調査結果です。こちらをご覧いただければわかるとおり、過去1年以内にそのジャーナリストのSNSアカウントで誹謗中傷を受けた経験というもの、こちらはなんと20%を超えていて21.5%なんですね。先ほど比較できる同じ調査の4.7%という生活者調査がございました。これと比較しても非常に高い割合であるということが言えます。その上で、では誹謗中傷を受けた後にどのような業務への影響があったかといったものを調査したのが図6です。すみません、文字が小さくて申し訳ございませんが、この中では動揺のコンテンツや、近しいコンテンツに関しての記事を書くのをやめた20.9%、記事の方法や書く記事の内容を変化させた11.6%、新しい仕事を探し始めた2.3%など、極めて表現の萎縮が起こってしまっているということが言えます。こういったことはおそらく生活者でも起こっているというふうに考えられます。つまり、誹謗中傷が怖くてSNS上でメッセージの話題がしにくいとか、ジェンダーの話がしにくいとか、そういったさまざまな社会的なイシューについて、重要なイシューほどネット上では投稿しにくい。なぜかというと、どこからともなく誰かに攻撃されるかもしれない。こういった表現の萎縮がおそらく起こってしまっている。つまり、誰もが自由に発信できる時代が来ています。SNSが普及して誰もが自由に世界に情報を発信できる。これを私は人類総メディア時代というように呼んでおりますが、この人類総 メディア時代が来たことによって、その発信が逆に表現の萎縮を引き起こしてしまっているわけですね。これはつまり、議論を前提とした民主主義というもの、そのものに対しても悪影響を与えているのではないかということが言えるわけです。では次のページに参りまして、5ページ目となります。こういった中で、では現在の課題として何があるかというところです。まず前提として、多くのSNSサービスにおいては、ブロックとかミュートといったような身を守る手段というものは、ほとんど用意されております。しかしながら、いざ、例えば投稿内容を削除したい、あるいは法的手段をとりたい、こういったときに加害者の手間に比較して、被害者が対応するコスト、これがあまりにも高いわけですよね。加害者は非常に気楽に誹謗中傷します。しかしながら、被害者はなかなか申し出とか、情報開示請求ということができていないということなわけです。図7は調査結果なんですけれども、誹謗中傷された後にどのよう な対応をしたかという結果です。ブロックやミュートで身を守っている人もそこそこいるんですけれども、一方で下の枠ですね、警察に通報した5.7%、利用サービスの通報、報告機能を用いて通報した9.2%ということで、警察に通報はおろか、サービス内での通報とか報告ということもほとんどなされていないという現実があるわけです。さらにですね、これですね、右側、違法有害情報相談センターの件数の対応手段別の内訳というところを見ますとですね、削除方法を知りたいというものが圧倒的に多いわけですよね。やはりこのようにですね、対応をどうすればいいのか、私は一体どうやってこれに対して行動を起こせばいいのか、ここに対して疑問を持っている人が非常に多いということが言えるわけです。さらにですね、多くの場合、シェアをとっているものがグローバルプラットフォームであることが多いです。そのために日本での対応とか対策とか透明性レベルというものに非常にばらつきがあります。特にですね、要請ベースで対応をお願いしているときにはですね、この日本の拠点がやりたいというふうに思ったとしてもですね、本社の許可を得られるかどうかはまだわからないわけですよね。なのでそういったことがですね、対応のばらつきの一因となってしまっているのではないかということが言えるわけです。他方でこういった誹謗中傷問題、非常に大きな問題をはらんでいるわけですが、強い法規制を強いてしまいますと、表現の自由に悪影響を及ぼす懸念もあると。そういった法律を悪用してですね、例えば自分に批判的な人をお前が誹謗中傷を言っているというふうに言って、捜査の対象とする、そういったようなリスクも世界中で懸念されているわけですね。ですからバランスをとるということが極めて重要になるのかなというふうに考えております。以上の現状を踏まえまして、次のページ、6ページ目まいります。今回提出されております両法案に関しまして、ポイントと評価ということを書かせていただいております。まず一つ目、大規模プラットフォーム事業者の選定を行い、その事業者のみに義務を課すというところですね。こういった法律、義務を新たに課すということによってですね、プラットフォーム事業者の 運営コストは増大するでしょうと。それが懸念される中でですね、大きな言論の場となっている大規模プラットフォーム事業者のみを対象としております。これによって中小事業者の負荷が増大して、むしろ健全な市場競争が阻害されるといったような現象を防ぐ工夫がなされているというふうに評価しております。また2点目、国内における迅速化規律と透明化規律をセットで導入しております。迅速化というところで申しますと、被害者の申し出窓口を設定し公表するとともに、被害者から申し出を受けた場合には迅速に必要な調査を行って、結果に基づいて措置を講じると。また透明化というところで申しますと、削除の実施基準を定め公表し、削除した場合に発信者に通知したり、削除の申出方法や開示請求方法を公表すると。そしてさらに実施状況を公表するということが義務化されております。こういったことで、まず、申出方法などをユーザーに分かりやすく伝えることで、被害者はより簡便に申出や発信者情報開示を行うことができるようになると考えております。また現在、先ほど申し上げたとおり、被害者負担は非常に大きいです。そういった意味でも、迅速化ということは欠か せないわけです。ただし、プラットフォーム事業者のコンテンツモデレーションのプロセスは複雑です。今回の迅速化規律が、どのようにプラットフォーム事業者のこういった対応、あるいはその言論の空間、こういったものに作用するかということを検証すること、これ極めて重要です。プラットフォーム事業者が恣意的に何かやっていないかということですね。その点において、このプラットフォーム事業者の恣意性を排除するという意味でも、透明化と迅速化、これが両輪であることに意義があるというふうに考えております。ですので、そうして、権利侵害問題への対応を強化し、より高い透明性と責任を求める点で肯定的に評価できると言えます。3番目です。侵害情報調査専門員を配置するということで、日本語対応ということだけではなくて、特に差別的表現とか風刺とかいろいろあるわけですけれども、そういったものは日本の文化を知るということ、これ極めて重要なわけですね。文化を踏まえた上で対応する。ですから、この専門員の配置及びその状況の公表というものは、大変意義があるというふうに評価しております。最後となりますが、次のページ、7ページ目です。今後の課題について述べさせていただきます。まず1つ目、オーバーブロッキングの可能性及び委員会による定期的な審査の重要性ということで、そもそも本法案は迅速化と透明化に焦点を絞っておりまして、表現の自由と被害者保護、救済のバランスを非常によくとっているというふうに考えておりますが、迅速化規律とか罰則の規定などによってオーバーブロッキング、つまりプラットフォーム事業者が罰則を避けるために、そして迅速に対応しなければというふうに焦って過剰に削除してしまう。こういったことが世界中でそういった問題が起こらないのかということが、さまざまな法律に対して指摘されているわけなんですけれども、そういった可能性が本法案でもゼロではないのかなというふうに考えております。また、スラップ訴訟という問題がございますが、同じように手当たり次第に申出をしてアカウントを停止させようとか、そういったような動きが活発になる懸念もゼロではないのかなというふうに考えております。こういったことを踏まえまして、客観的で公情的な委員会による定期的な審査などで法律の効果を継続的に確認していくことが重要であるというふうに考えております。その審査結果を受けてエビデンスベースで随時改正を検討していくことが望ましいです。二つ目、誹謗中傷被害の実態調査の継続ということで、誹謗中傷の被害の経験とか、実際にこの法案の導入前後で、開示請求や申し出を行った経験がどのように変化したかとか、そういったような継続的な調査を実施して、実態を把握し続けるということが重要であるというふうに考えておりますし、これは法律の効果の計測ということにもつながると思います。三番目、具体的な透明性項目の定義ということで、大枠の定められた透明性ということを今回本案に入っております。しかしながら、より具体的な項目とか公開の方法の定義をどんどん進めていく必要があるかなというふうに思います。事業者に負担をかけるということになりますので、どういった社会を目指して、そして透明化された情報をもとに、どのような分析や施策を行うかということを具体的に提示し、それをもとに各事業者が真摯にやっていくべきだろうというふうに考えております。四番目、プラットフォーム事業者の責任の範囲はどの程度かというところでして、本案を読ませていただいておりますと、発信者情報開示請求に関する手順というところの公表という話がありました。この手順の認知度は極めて低いです。ですから、被害者が開示請求をするハードルの一つになっていること、これはもう間違いございません。私も危機的な意識を持っております。他方で、開示請求を円滑に行うための必要な情報の公表までをプラットフォーム事業者がするべきかどうか、これには議論の余地があるかなというふうに考えております。例えば、わかりやすく開示請求をする方法をまとめたページをどこかに用意して、そこにリンクを誘導してくださいみたいな、そういった解釈も可能になっているといいのかなと。つまり、例えば、新型コロナウイルスに関しましては、例えば、プラットフォーム事業者、厚生労働者のウェブサイトとかにリンクを飛ばしてくれたわけですね。こういったように、何か別のウェブサイトに飛ばす、そういった方式もあり得るのかなというふうに考えている次第です。私からは以上となります。ありがとうございました。
1:03:49
ありがとうございました。以上で参考人の意見の改陳は終わりました。これより参考人に対する質疑を行います。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
1:04:07
おはようございます。自民党の根本幸典です。本日は質疑のお聞かえをいただいたことに感謝を申し上げます。そして、ただいまは、参考人の皆様方におかれまして は、大変忙しい中、総務委員会にご出席をいただいて、そして、ただいま大変貴重なご意見を賜ったことに、まず心から感謝を申し上げたいと思います。その上で、まず、本改正案に関する個別の論点について、いくつかお伺いをさせていただきたいと思います。本改正法案を措置する以上、その実効性を伴うように制度設計することが、何よりも大事だと考えております。特に、プラットフォーム事業者の多くが、外国事業者であります。その観点から、本改正法案による義務の実効性を確保する上で、有識者会議ではどのような点に留意して議論されたのか、先ほどご説明の中でも、総務省のワーキンググループの副主査をされています、上沼参考人にお伺いをしたいと思います。
1:05:26
お質問ありがとうございます。外国事業者に関する検討に関しては、そもそも先ほど申し上げたとおり、削除窓口が日本語じゃないとかというようなお話がありまして、その中で、日本の手続に則した調査員を置くというような形をするという形で検討されています。あと今回、総達等の手続回りのところも手当てされているというふうに承知しております。
1:06:02
ありがとうございます。続けて、同じように個別の論点なんですが、削除の迅速化として、一定期間内の判断、応答義務を課すことにしているわけでありますが、被害者の救済の観点から迅速な対応が求まられている一方、事業者の実務で考えると、申し出のあった対象情報にもよりますけれども、一定程度時間を要することとなるというふうに考えられるわけであります。この点、同様に有識者会議では 、どのような考え方により、どれくらいの期間が適当と、こういった検討がされたのか、上沼参考人にご質問したいと思います。
1:06:47
ありがとうございます。事業者が一定の期間が必要だというのは、当然有識者会議の方でも承知しておりまして、それなので、もし時間がかかる場合には、時間がかかる旨を通知しなさいという形で、その部分についても手当をいたしました。一定程度の期間は、先ほど申し上げたとおり、アンケートや過去の裁判例等を参考に検討しております。以上です。