法律案で振り返る第203回国会
2020年10月26日から12月5日まで41日間にわたって開催された第203回臨時国会。
国の唯一の立法機関である国会において、どんな法律案が提出され、どの法律案が成立したのか、振り返ってみましょう。
閣法(成立: 9/9件)
まず、内閣が提出した法律案である閣法から見ていきます。閣法は各省庁の官僚が作成し内閣の承認を受けて提出されたもので、既に与党の賛同を得ていることから多くの場合成立します。
今国会で審議対象だったのは計9本で、全て成立しました。
閣法 | 自民 | 立民 | 公明 | 共産 | 維新 | 国民 |
---|---|---|---|---|---|---|
種苗法の一部を改正する法律案 | ◯ | × | ◯ | × | ◯ | ◯ |
平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法等の一部を改正する法律案 | ◯ | ◯ | ◯ | × | ◯ | ◯ |
予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
被災者生活再建支援法の一部を改正する法律案 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律案 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律案 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案 | ◯ | ◯ | ◯ | × | ◯ | ◯ |
特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案 | ◯ | ◯ | ◯ | × | × | ◯ |
( ◯=賛成、×=反対、◎=提出。会派は衆議院に準ずる)
新型コロナワクチンの接種に関する法律案(予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案)や 普通郵便の土曜配達を廃止する法律案(郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律案)など、 今国会で新たに提出された7本も全て成立し、予定通り会期を終えることとなりました。
野党の最大会派である立憲民主党が反対したのは種苗法の一部を改正する法律案の1本です。
国内で開発されたブランド品種を海外へ不正に持ち出すことを規制する法律案ですが、国内の農家の自家増殖も制限してしまう懸念から反対の立場を取りました。
衆法(成立: 4/10件)
次に、衆議院議員が提出した法律案である衆法を見ていきます。衆議院では20名以上の議員の賛成を受ければ法律案を提出することができます。
今国会で提出もしくは実質的な審議対象となったのは計10本で、そのうち4本が成立しました。
衆法 | 自民 | 立民 | 公明 | 共産 | 維新 | 国民 |
---|---|---|---|---|---|---|
日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案 | ◎ | - | - | - | - | - |
新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案 | - | ◎ | - | ◎ | - | ◎ |
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律等の一部を改正する法律案 | - | ◎ | - | ◎ | - | ◎ |
低所得であるひとり親世帯に対する緊急の支援に関する法律案 | - | ◎ | - | ◎ | - | ◎ |
特定非営利活動促進法の一部を改正する法律案 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
交通政策基本法及び強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法の一部を改正する法律案 | ◯ | ◯ | ◯ | × | ◯ | ◯ |
スポーツ振興投票の実施等に関する法律及び独立行政法人日本スポーツ振興センター法の一部を改正する法律案 | ◯ | ◯ | ◯ | × | ◯ | ◯ |
令和二年七月豪雨災害関連義援金に係る差押禁止等に関する法律案 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
新型インフルエンザ等対策特別措置法及び感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部を改正する法律案 | - | ◎ | - | ◎ | - | ◎ |
出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案 | - | ◎ | - | ◎ | - | ◎ |
( ◯=賛成、×=反対、◎=提出。会派は衆議院に準ずる)
成立した4本は全て文部科学委員会など各委員会が起草したものです。 例えばスポーツくじ(toto)にサッカーだけでなくバスケを追加する法律案(スポーツ振興投票の実施等に関する法律及び独立行政法人日本スポーツ振興センター法の一部を改正する法律案)などが成立しています。
成立はしませんでしたが、日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案が衆議院憲法審査会にて審議されたことも話題となりました。 2018年の提出以降初めてとなる実質的な審議が行われ、与党は来年1月から始まる通常国会での成立を目指しています。
一方で野党は合同で計5つの法律案を提出しました。野党提出法案は優先度が低く成立する見込みは高くありませんが、政府に対し批判だけでなく提案型の議論をしていくという価値を持ちます。
新型コロナ対策に関する4本のほか、非正規労働者の待遇格差を是正する同一価値労働同一賃金法案(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律等の一部を改正する法律案)を提出しています。
参法(成立: 1/23件)
最後に、参議院議員が提出した法律案である参法を見ていきます。参議院では10名以上の議員の賛成を受ければ法律案を提出することができます。
今国会で提出もしくは実質的な審議対象となったのは計23本で、そのうち1本が成立しました。
参法 | 自民 | 立民 | 公明 | 共産 | 維新 | 国民 |
---|---|---|---|---|---|---|
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
裁判官弾劾法の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
政治資金規正法の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
租税特別措置法の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
政治資金規正法の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
公職選挙法の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
大規模災害からの復興に関する法律の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
地方自治法の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案 | ◎ | ◎ | ◎ | × | ◎ | ◎ |
公職選挙法の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | ◎ |
独立行政法人都市再生機構の完全民営化の推進に関する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
日本たばこ産業株式会社の完全民営化等に関する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
公文書等の管理に関する法律の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
公文書院の設置等による公文書等の管理の適正化の推進に関する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
新型コロナウイルス感染症等による経済活動への影響に対する当面の対策として消費税の税率を引き下げる等のために講ずべき措置に関する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
森林法の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | ◎ | - |
新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案 | - | - | - | - | - | ◎ |
( ◯=賛成、×=反対、◎=提出。会派は衆議院に準ずる)
成立したのは与野党が共同提出した生殖補助医療法案(生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案)です。 現行の民法では定められていない、第三者から卵子や精子の提供を受けて子どもを授かった際の親子関係を明文化しています。
また日本維新の会は議員数の条件を満たしている参議院において、活発に法律案を提出していることが分かります。
以前の国会で提出していた法律案を再提出したものも含まれていますが、今国会では新型コロナ対策(新型コロナウイルス感染症等による経済活動への影響に対する当面の対策として消費税の税率を引き下げる等のために講ずべき措置に関する法律案)や公文書の管理に関する法律案(公文書院の設置等による公文書等の管理の適正化の推進に関する法律案)を新たに提出しました。